【書籍発売記念SS】ソフィアと猫(2/2)
本日7月2日に書籍発売を記念して、SSを投稿します!
2話目です。
(……もしかして、ついて来いってことかしら?)
ソフィアがそっと後を追うと、猫はスタスタと歩き始めた。
時々立ち止まってはソフィアを振り返り、「にゃーん」と鳴いては、また歩き出す。
(いったいどこへ連れて行くつもりなのかしら?)
不思議に思いながらついて行くと、猫は大聖堂の裏手へ向かった。
裏手にある木々に囲まれた小さな広場に入っていく。
猫に続いて広場に入り、ソフィアは思わず目を見開いた。
「まあ……!」
そこには、たくさんの猫がいた。
黒猫に白猫、茶色い猫。
十匹はくだらない。
みな思い思いに寝転がったり、のんびりくつろいだりしている。
ソフィアは目を輝かせた。
(もしかして……これが噂に聞く猫の集会?)
茶色の猫は、その猫たちの端に腰を下ろすと、ソフィアを見た。
「にゃーん」と呼ぶように鳴く。
「……失礼するわね」
ソフィアはそう言って広場の中に足を踏み入れた。
茶色の猫の横にそっとしゃがみ込んで、挨拶をするように
「にゃーん」
と鳴いてみる。
猫たちはちらりとソフィアを見たものの、特に怖がる様子も警戒する様子もない。
ソフィアは胸を躍らせた。
(まあ、わたし、もしかして仲間だと思われているのかしら)
そして、しばらく猫になったつもりで「にゃーん」と鳴いていた――その時。
バタン!
突然、大聖堂の裏口の扉が開いた。
驚いて顔を上げると、そこには皿を二枚持ったアウグストが立っていた。
驚いたような顔でソフィアを見る。
「ア、アウグスト様!」
ソフィアが慌てて立ち上がると同時に、猫たちも一斉に立ち上がった。
「にゃーん!」
「にゃー!」
一斉に鳴きながらアウグストの方へ向かっていく。
アウグストは、皿を地面に置いた。
その中には猫たちが好きそうな餌が入っており、
猫たちは夢中で餌を食べ始めた。
ソフィアを連れて来た茶色の猫が、ソフィアを見上げて「にゃーん」と鳴くと、自分も餌を食べに行く。
(もしかして、餌場に連れて来てくれたってことなのかしら……?)
そんなことを考えているソフィアを、アウグストが面白そうな顔で見た。
「ソフィアさん、どうしたんだい? もしかしてお腹が空いているのかい?」
「ち、違います!」
ソフィアは必死に言い訳をした。
「猫に連れて来てもらったら、ここに来ただけです……!」
「そうかい。なるほどね」
アウグストは笑い出しそうな顔でうなずいた。
「ちょっと待っていてくれるかい」
そう言うと、大聖堂の中へ入っていき、大きめの箱を持ってくる。
「実は昨日、王都から帰って来てね。これを修道院に持って行っておくれ」
差し出されたのは、修道院のシスターたちが大好きな王都のお菓子の箱だった。
「まあ、よろしいんですか?」
「ああ。せっかく来たんだから持って行っておくれ」
「ありがとうございます」
ソフィアは嬉しそうに箱を受け取った。
みんな喜ぶわ、と嬉しい気持ちになる。
すると、茶色の猫がソフィアを振り返った。
「にゃーん」と、どこか満足そうに鳴くと、再び餌を食べ始める。
(恥ずかしい思いはしたけど、ちょっと楽しかったわ)
そんなことを思いながら、ソフィアはアウグストにお礼を言うと、猫たちに手を振って修道院に帰っていった。
*
ちなみに、この様子を物陰から見ていた子供たちがいた。
彼らは興奮したように言い合った。
「なあ、今見たか?」
「見た見た!」
「懺悔室の聖女様、猫と喋ってた!」
「もしかして動物と話せるんじゃないか?」
「すげー! さすが聖女様だな!」
そして、この話は、
『懺悔室の聖女様は動物と会話ができる』
という話としてオルテシアの街に広がり、"ソフィア聖女説"がますます強固なものとなるのだが、そんなことになろうとは、この時のソフィアは知る由もなかった。
7月2日、講談社様より書籍が発売しました!
約2倍に加筆しておりまして、主に懺悔室でソフィアが活躍する話や、ロイドとのあれこれ、修道院の話などを追加しております。
ぜひお手に取って頂けると嬉しいです(,,ᴗ ᴗ,,)ペコリ
書影はこちらです↓




