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幕間 弐

二章エピローグ的な話



 気が付くと、私は先ほどの洞窟に立っていました。

 目の前には師範がいますし、私の手のうちには変わらず青い石があります。

 ……あれ?



「電流が流れて来ませんね……」


「お、契約できたみたいだね。お疲れ~」



 そういえば、契約すると電流が流れなくなるんでしたっけ。

 まあ、とりあえず契約はできたということでよさそうですね。

 雷神の石も戻してしまいましょう。

 そう思って、手に持った石を台座に置こうとし――パキっと音がして、雷神の石の一部が砕けました。



「え、ちょっ、ええ? な、なんか一部壊れちゃったんですけど……」


「ふむ……君は雷神に好かれたみたいだね」


「好かれた……ですか?」


『勝手なこと言うなよ……』


「えっ?」



 突如響いた声に辺りを見渡しますが、私と師範以外には誰もいません。

 ……と思っていたら、手元の石の欠片が震えて青い光が放たれ、空中にホログラムのように像を形作りました。



『べつに好いとらんわ、こんな奴。戦い方に興味があるだけだ』



 映し出された雷神は、不機嫌そうに腕を組みながらそう言いました。



「ツンデレですか?」


『ぶっとばすぞ……。いいか、その石を常に身に着けておけ。そしたらまあ、たまには力を貸してやる。一緒に戦うわけじゃないけどな』


「なんだ、戦ってくれるわけじゃないんですね」


『至近距離から加護を授けてもらえるだけありがたいと思え』



 こんな少女でも神様ですからね。どういう風に力を貸してくれるのかはわかりませんが、戦力増強という点でこれほど心強いものもありません。

 そう考えていると、シキが少女の姿で実体化しました。



『ん? ああ、刀霊か』


『ふふっ。新たに仲間に加わるということは、私の後輩になるのかしら?』


『いや、私神だからな? さすがに霊の後輩にはならんわ……というか仲間に加わるわけでもないし』


『あらあら、よろしくお願いするわね』


『…………なんかこいつもヤバい気配がするな……刀霊は所有者に似るのか?』


「仲良くなれそうで良かったですね」



 どこがだよとでも言わんばかりの表情でこちらを見る雷神から眼をそらし、雷神の石の効果を見てみます。



――――

[雷神石の欠片]

雷神石から剥がれ落ちた欠片。

現世をのぞき見るために、雷神が気に入った相手に持たせる。

雷響状態の強化倍率が高くなるほか、視認していないプレイヤーが自身を対象とした戦闘状態になったとき、相手の隠密レベルに応じて確率で警告する効果を持つ。

――――



 雷響状態というのはよくわかりませんが、そのあとの文章はつまり不意打ちを知覚できるようになるということですよね。

 このゲーム、道を歩いていたら急に斬りかかられることとかありますし、この効果はとても役に立つと思います。

 まあ隠密レベルというのが関係してくるようなので、すべての場面で有効に働くというわけでもなさそうですけど。

 これも何かアクセサリー的な形に加工してもらいたいですね。すっかりデスドレインの常連になってしまっている私です。



「さて、一先ず教えられる技はこれが全てだ。当然、神楽識天流の技は他にもあるけどね。また強くなったら来てほしい。その時は奥義を教えてあげよう」


「はい、ありがとうございます」


「……あ、そうそう。うちの代表的な門下生として君を登録したいんだけどいいかな?」



 代表的な門下生?



「えっと、一応門下生って他にもいますよね? その人たちじゃダメなんですか?」


「みんな嫌がってるんだよねえ……雷花ちゃんは飛柳院家の関係上無理だし、君しかいないんだ」


「はあ。それなら別にかまいませんけど」



 別にこれでなにかデメリットを被るということもないでしょうし。


 さて、何はともあれ無事に流派技を習得することができました。

 これで以前よりも戦えるようになったでしょうし、どんどん戦っていきたいですね。


 新たに増えた仲間とともに、私は意気揚々と一歩を踏み出したのでした。




「あ、雷神さんのことライって呼んでもいいですか?」


『しばくぞ』






□◇□◇□◇□






――――――――


[総合雑談スレ Part.643]


61:ロブ

速報 神織でトーナメント開催決定


 61-1:ガレイ

 マジか!


 62-2:前年度覇王伝

 この状況でやって大丈夫なのかwww


 62-3:羽連かいな

 何とかなる……なる?

 華王はマジで何も考えてなさそうだよね


 62-4:HALO

 神織華王御前試合?

 何回目だっけ


 62ー5:ケビンス

 第四回だったはず


 62-6:ロブ

 やっぱ今まで通り他国からも人来るよな。ヤバくね?


 62-7:MEG

 神織が今一番危険なのにな。もうそろそろ戦争イベントかなあ


 62-7:滝沢

 玄壌民の俺は高みの見物だぜ!


――――――――



「トーナメントか……」



 詠清(えいせい)の茶店の中、加速するゲーム内掲示板を横目に、銀髪の男が呟いた。

 その様子を見て、隣に座っている、ベールで顔を覆った怪しい男が聞く。



「おや。ナツ……じゃなかった。リーダーはこう言う催しにも興味あるのかい?」


「別に名前で呼んだって良いけど。……いや、別にこのイベントに興味があるわけじゃない。ただ人は集まるからな。もしかしたら『匣』に関する手がかりを得られるかもしれないだろ」


「そんなに上手くいくかなあ?」


「可能性はあるだろ。お前が働けばな」


「えー、やっぱり僕も強制参加?」


「当たり前だろ。アレを直接的に探すのはお前にしか無理なんだ」



 ベールの男はため息をついて、その場にいたもう一人――ストローでオレンジジュースを飲む黒い和服の少女に声をかけた。



「ねえ、君はどうするんだい? 有名人だし、あまり人の集まるところには行かないほうがいいんじゃないかな」


「……私は付いていくだけ。助っ人だから」

 

「はぁ~、やっぱそういうよねぇ……。未練がましいというかなんというか――ちょっ、ナイフ投げないで!」


「……次適当なこと言ったら殺すから」


「分かったって。おっかないなあ」



 店内で騒ぐ二人を見ながら、銀髪の男は「仲良くしろとは言わないけど、普通に目立つからやめてほしいんだが……」とつぶやいて、深くため息を吐いたのだった。






◇□◇□◇□◇






「はぁ……いったいこれで何体目だ」



 巨大な石の怪物を斬り伏せ、銀の鎧を着た女性――ヱヰラはつぶやいた。



「最早、嫌がらせというレベルではないな……ましてや特定個人を狙っているわけでもなし。初心者の狩場に集中しているところから察するに、戦争の下準備と考えるべきか……だがそれでは時間がかかりすぎるようにも思えるが……」



 そんなヱヰラの思考は、不意に空から現れた赤い少女によって中断された。

 敵襲かと身構えるヱヰラだったが、すぐに土ぼこりの中に立つ彼女の正体に気付き、刀を納める。



「なんだ、龍子か。そっちの方は問題なかったか?」


「異常個体が大量に湧いてんのを問題ないって言うならな」


「それでも全部倒したんだろう?」


「まあそうだけど……ただこれ、どう考えても緋岸の連中の仕業だろ。マズいんじゃねーか?」


「そうだな……」



 苦い表情でそう言って、ヱヰラは地面に転がった魔獣のドロップアイテムに目をやる。



「これ自体は御前試合の発表前から発生していることだから、人が中央に集中するタイミングで何か事を起こす準備はないだろうが……警戒する必要はありそうだ」


「だな。一応ウチの同盟にも初心者が二人いるし、この事態もとっとと解決したいんだ。協力するぜ」


「助かる。……と、そういえば新しく同盟に入ったんだったか」


「まあな」


「また前のようにならないことを願っているよ。無論、今の龍子の表情を見ていれば、一先ずその危険がないことはわかるが」



 ヱヰラはここ数か月、龍子が精神的に疲弊していることを気に病んでいた。

 その原因が彼女の所属する同盟にあることはわかっていたし、それ故に自分がでしゃばることはできないと考えていた。

 だからこそ、龍子が同盟を抜けたということを聞いたときは、自分のことのように喜んでいたのだった。


 そのうえ、龍子が新たに所属することになった同盟は神織を本拠地とする同盟だ。

 ようやく国家間のしがらみの無い状態で共に戦うことができる。

 そう意気込んでいた矢先に発生したのがこの異常個体の騒動だった。



「一応共に戦うことは出来ているのだが……複雑だな」


「? どうかしたか?」


「いや、何でもない。……さて、私はまだ見回っていない地域があるからそちらに向かうことにするよ。龍子は?」


「アタシも今は暇だし、適当に見回ろうかな」


「そうか、分かった。では何か連絡があったらよろしく頼む」



 背中に連なる剣翼を広げ、一直線に空へ飛びあがっていくヱヰラ。

 その姿が見えなくなるまで空を眺めて、それから龍子も、呼び出した刀霊に掴まって空へと飛び立っていったのだった。

 

これにて二章終了です!

二章ではあまり対人戦がありませんでしたが、三章からは増えるかなあと思います。


もし面白いと感じたら評価してくださるとありがたいです! 割とモチベーションに繋がります

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