第85話 カイトVSセキアル『後編』
大変お待たせ致しました!ごめんなさい!途中の状態で出しちゃいました!日付感覚狂ってた...。
正しいの出しましたのでお納めくださいm(_ _)m
「それでは本番。行きますよ!」
セキアルは吼えると同時に右腕を限界まで引き絞る。その狙いは先ほどまでと同じく俺の脳天。違いは先程のような速度重視ではなく一撃の重さを極めたもの。
だが、狙いが分かっていれば対処もできる。俺は“極氷魔法”で透明な氷をちょうどセキアルが踏み込むだろう位置に張る。
狙いが分かっているのなら避けるか下がれば良いと思うかもしれないが、そういう動きを見せればすぐさまセキアルは力溜めをやめて、俺を逃す前に槍の一撃を放つだろう。
互いにそれが分かっているからあえて逃げる行動は取らない。そして俺はさらに“罠創造”と“大地魔法”を合わせた罠を作り仕込む。
「フッ!!」
短い呼気と共に槍の突きとは思えないスピードで武技“重突”が迫る。そのためには当然、セキアルは片足を前に出さなければならない。
(かかったっ!)
俺は氷により滑ることを確信して逆袈裟から武技“重斬”を放つ準備をする。だが、目の前で起きた出来事はたやすく俺の想像を超えていった。
バリンッ!という音と共にそれなりに分厚く張った透明な氷が弾け散る。セキアルの震脚にも近い踏み込みは未だ健在だ。
当然、放つ寸前の槍は止まっていない。そしてまるで刺されに行くかのように技を放とうとしていた俺の体も止まらない。
「くそっ!」
俺は止まらぬなら、となんとか“重斬”を槍の一撃を逸らすために軌道修正する。それでも元々想定していなかった体制にタイミング。当然、いきなりの命令に体は悲鳴を上げた。
グリッという嫌な音を聞きながらなんとか槍を逸らすことには成功したが、うまく逸らし切ることが出来ず、今度は俺がタタラを踏んでしまう。
「“絶破”!」
そこへ追い討ちをかけるようにセキアルが左手に持ったハルバードで斧の武技を放つ。地面を打ったそのハルバードから放たれた衝撃波はまるで蛇のようにうねりながら俺へと向かってくる。
「がはっ!?」
俺はそれを受けることすらできず、もろに食らってしまった。そのまま衝撃で吹き飛び壁に激突する。それを追いとどめを差そうと走りよるセキアルに向けて一瞬地面が光った。
「貫けっ!」
セキアルが俺に向け左足を踏み出した途端、隠蔽に隠蔽を重ねた“大地魔法”による鉄の杭が地面から幾本もセキアルに向かって突き出される。
「なんのっ!」
だが、セキアルも“第六感”という“直感”スキルの亜種持ちだ。用心して隠しはしたが、ギリギリで把握され数本を残して破壊された。それでも数本、いや数発がセキアルの体に刺さりそれなりにダメージは与えられた筈だ。
スキル 第六感 スキル保持者に関連する良いこと悪いこと全てを感覚的に把握する。また、未来視ではないが、それ近いことを行うことも可能。現時点では銀抄族にのみ発現。
対直感持ちは本当に厄介だ。こちらが出来る手をうっても単なる勘で回避されてしまうのだから。だが、鉄の杭は当たれば僥倖、破壊されてなんぼの物。
俺はこのセキアルに破壊されて散らばった岩のかけらに向け、“彗燼瀑隕”を発動させる。
(ちっ、一回俺の手から離れて他者が介入すればもう対象には入らないのか)
こんな時に何を呑気に検証しているのかと言われればその通りなのだが、俺は破壊されることを前提で鉄の杭を放った。
そして破壊された鉄のかけらで“彗燼瀑隕”が使えるか試したかったのだ。結果は『できない』。直接俺が作り出したものでしか対象とはならず、一度でも破壊されるなどして他者の手を介入したら対象外になるらしい。
(まぁいいさ)
ならば、と俺は“彗燼瀑隕”をここぞとばかりに使って無から鉄を作り出し、ライフル弾のような形状へと変化させ、高速回転させる。それをさらに左に5発、右に5発、合計10発作り出す。
「くっ?!」
その時、一瞬視界が歪む。久しく忘れていた感覚に俺は驚き反射的にステータスを開くと魔力がゴッソリと減っていた。
元々は12万ほどある魔力だが、ここまでの戦いで残りは4万にまで減っていた。それこそセキアルと戦う前までは10万ほどはあったし、そこまで燃費の悪い魔法は使った覚えはない。
罠や魔法などで使った魔力は大体10000ほど。それでざっと計算してみるとこの“彗燼瀑隕”による無から作り出した鉄の弾丸が魔力を食っているようだ。なんと1発で約5千も魔力を持っていっていた。
「まぁごちゃごちゃ言ってられる状況でもねーか」
セキアルは俺が何をしようとしているのか見極めるつもりなのか、俺の出した銃弾を注視している。あるいは“第六感”スキルがこの銃弾を危険だと告げているのかもしれない。
ならばそこにさらに危険をスパイスしてやろう。
俺は銃弾それぞれの後部に“獄炎魔法”と“雷嵐魔法”でもって着火剤のようなものを作り貼り付ける。風で黒い火の粉の塊を覆ったものだ。中は真空にしてあり風の膜が破れて酸素が流れ込むと爆発し、推進力とするものだ。
「飛べ」
俺の声と共にタイミングをずらして発射される弾丸たち。それは狙い違わずセキアルの頭、肩、心臓、腹、太もも、足首に向けて放たれる。
それを受けてセキアルは手に持つ二槍で10の弾丸を弾き、躱していく。しかし、俺お手製の推進力超アップの弾丸は全てを弾き落とすことができず、数発がセキアルの肉を削って後ろの壁をも穿った。
「グクッ...」
それでも致命傷だけは避けたのか当たった箇所は方と脇腹のみ。足や頭など当たるだけで大ダメージを与えるところはなんとか守ったようだ。
「あなたもその弾を使うのですね...」
「あん?どういう意味だ、それ」
「ここで話さずともいずれ分かりますよ」
(銃弾を知っている?なぜだ?)
俺は思考の海に落ちかけたが、それを目の前のセキアルが許さない。肉を貫通した痛みなど無いかの如く、右手の槍で突き、左のハルバードを振るう。
俺とセキアルでしばしの剣戟が起こる。俺は右下、上、左下、横から連撃を仕掛ける。セキアルは左手のハルバードで巧みに受け流して、右手で正確に俺の心臓と頭を狙いにくる。
そして続けて俺が右上からの打ち下ろしを放とうとするとセキアルが斧刃の内側と柄で俺の刀身を受け、巻き込むように捻る。
「ぐっ?!」
俺はなんとか刀を手放さないようにしていたが、俺は左手で右から打ち下ろしていたのに対し、セキアルも左手で左からの攻撃に対処しているので俺にとって体制が悪い。
結果、このまま握っていると手首を折られかねないと判断した俺はやむなく刀を手放す。そして手放した瞬間、待っていたとばかりに俺の刀をそのまま放り投げその反動を利用してハルバードを振り下ろしてくる。
俺は一歩下がることでそれを回避したが、今度は右から薙ぎ払うような槍の一撃を放たれる。
「おらぁ!!!」
俺はその一撃を避けず、あえて受けることでセキアルの槍を掴み取る。そのせいで多少、腹が抉れたが今は関係ない。そして掴んだまま俺は右足に“雷嵐魔法”で風を纏わせ蹴り上げる。
蹴りの勢いに合わせて真空波が飛び、武技“断脚”に近い効果を発揮する。
「.....ッ!」
セキアルは声を上げはしなかったが、槍を持つ右腕が俺の真空波によって切り裂かれた。俺は宙ぶらりんになった槍とセキアルの腕を投げ捨て後ろに体勢を崩したセキアルへ追い討ちをかける。
「おぁぁぁ!!!」
振り上げた足をそのままセキアルに向かって武技“覇墜”として振り下ろす。とても届く距離ではないが、それでもいい。“地震”...は使えばここが崩れかねないので地割れの要領で“大地魔法”を合わせて放つ。
あと少しで届こうかというところで、セキアルは左手に持つハルバードを地面に叩きつけることで難を逃れる。だが、そこを俺が追い立てる。
「“覇轟”!!」
すぐさま駆け寄りセキアルのガラ空きな腹目掛けて掌底を放つ。そこからはもう泥仕合だった。血を吐きながらもハルバードを振り回して攻撃するセキアル。
殴り殴られ蹴り蹴られ。果ては俺は武器を持っていないのに対し、セキアルは武器を持っているため、加速度的に俺の体へ傷が増えていく。
「ク、クソ...」
それから幾度か殴り合った時、不意にセキアルの手からハルバードがすっぽ抜け、俺の右肩を抉りながら後方へ飛んでいった。どうやら血の滑りで握れなくなったらしい。
「ぁぁぁあああ!!」
俺はこれ幸いと肩の痛みを押し殺してセキアルへと飛びかかりマウントポジションを取る。そして、残り少ない体力をフルに使ってセキアルへと乱打を仕掛けた。
それからどれほど経っただろうか。
俺の体力も尽き、息も絶え絶えでまともに拳も握れない。対するセキアルもまだ息はあるが、何かをする気配も無かった。
「おわ...りだ」
俺は近くに転がっていた鋭利な岩のかけらを掴み、セキアルへと振り下ろした。...いや、振り下ろそうとした。
俺は突然、背中から響いた予想外の衝撃に下を向く。そこには俺とセキアルを貫く、銀の槍が突き刺さっていた。
「て....め...がふっ!」
「あなたに私は...ゴフッ...差し上げられません...よ」
「知って..やがったか」
「あなたをここで...消せるのなら、私が..グプッ...消えるのも本望...です」
それだけ言って、セキアルの目から生気が失われた。俺の“簒奪”は俺自身がとどめを刺さなければ意味がない。この攻撃は俺を介しているとはいえ、俺が放った攻撃とは認識されなかった。
すなわちスキルどころか、経験値さえも手に入らない。
「くそ...死んで..たまるか」
腹に大穴が空いたことで一気に血を失った。ただでさえギリギリの戦いだったのだ。魔力は徐々に回復していくが、軀力自動回復スキルは傷を癒してくれるわけではない。
では、どうするか。それはなんとか意識を手放さずに魔力が回復する端から“自己再生”を使うしかない。
「ぐふ...、最後に...厄介な置き土産を...残しやがって」
俺はなんとか死ぬわけにはいかない、と無い体力を振り絞って槍を引き抜く。案の定、傷からどこにあるのかと思うくらい大量の血が流れ出す。それをなんとかちぎれ飛んだ服で押さえ、“自己再生”を使っていく。
「......」
朦朧とする意識の中、もはや独り言さえ紡げない。俺は壁に寄りかかり“自己再生”をしながらいつのまにか意識を失っていた。
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