第81話 ジーンVSミユ&サニア『前編』
ややこしくなってきちゃったので、ここでミユの一人称を変えました。過去投稿分もサクサク変更していくので、お願いいたしますm(_ _)m
うちは銃口を目の前にして意識が切り替わった。今まで何度も行ってきたように素早く“万眼神技”を発動する。
一瞬で世界が白黒の世界へと移り変わる。この時のうちの瞳は黒から金色になっているらしい。
世界がうちを取り残してスローモーションになった瞬間、目の前の銃口が赤白く爆ぜる。それとともに先が鋭利に丸まった鉄の塊がうちの眉間に向けて放たれた。
うちはゆっくりと迫る弾丸を避け、掻い潜るようにジーンへと肉迫する。その間サニアちゃんは回り込むようにジーンの左側へと向かっていた。
「いいねー!弾丸避けるなんてニホンのニンジャらしいじゃん!次は刀で弾丸切ったりしてくれるかな?僕燃えてきたよぅ!」
「そんなことできるわけないでしょ?!」
うちはそれから断続的に撃たれる銃を都度、“万眼神技”を発動させて躱していく。このスキルは眼に見えるものの軌道や未来などが断片的に分かるが、魔力消費が激しいためずっと使い続けることができない。
さらにーー
(やっぱり“予知”がちゃんと働いていない...)
そう、通常であれば自身に危険が及ぶ前にその事象をうちに教えてくれるようなスキル。そのため、本来であれば銃が放たれる直前にはデジャブのように弾丸が来る場所が分かっているはずだった。
しかし今もなのだが、弾丸がすでに放たれてからうちの脳裏に銃が撃たれる場面が浮かび上がる。
ここから導き出されるのは単純に、うちの“予知”よりもジーンが銃を放つ方が早いということなのだ。
そのため、直接見れば確実に未来が分かるが魔力消費が激しい“万眼神技”を使わなければならない状態になっているのだった。
(あんまりゆっくりもしてられないか...)
様子見も兼ねてしばらくはジーンの行動を見つつ攻撃の隙を探そうと思ったが、うちは刀に対してジーンは銃だ。そして銃は弓よりも攻撃速度が速いため潜り込むのもなかなか難しい。
ここは覚悟を決める時だ。
「『轢き裂け!アメノーー』?!?!」
「させねぇよ」
うちは早期決着を試みて神創武具を抜くための祝詞を紡ぐ...ことができなかった。今までは“万眼神技”を使いながらもかろうじて躱せていた弾丸がうちの右肩を貫く。
「ぅああぁ!!」
確かに今、“万眼神技”は使っていなかった。これを使っているとまだ神創武具を抜けないからだ。それでもこの世界に来て得た力やステータスのおかげで素の動体視力なども強化されていたため、弾丸が発射される瞬間などは見ることが出来た。
しかし今、そのマズルフラッシュと言われるものすら見ることも出来なかった。そんなに早くトリガーを引くことが出来るのか?いや、もはやそんな類ではない。だとするとあの銃自体に何か仕掛けがあるのか?
「らぁああぁぁ!!」
うちが肩を押さえて蹲ってしまっている時にジーンの後ろから雄叫びを上げながら氷の爪を生やしたサニアが飛びかかる。
「残念、それも知ってるよん」
だがその奇襲は決まらず、ジーンは振り向くこともせずにサニアの鳩尾へ的確に肘を打ち込んだ。
「うぐっ?!」
そのまま攻撃は止まず、ジーンは振り返りざまに肘打ちを浴びせた箇所へ拳を打ち込み、さらにそこへ流れるように回し蹴りを浴びせる。
サニアは呻き声を上げることも出来ずに地へ足をつくこともなく壁に激突する。
「サニアちゃん?!...くっ!『轢き裂け!アメノムラクモ!!』」
うちは一刻も早くサニアちゃんの元へ駆け付けたかったが、サニアちゃんはうちと対角線の場所。要するに間にジーンを挟むのだ。
うちは薄情だと思いつつも、先ほど邪魔された神創武具を胸から引き抜いた。しかし、さっき肩を抜かれたせいか右腕に力があまり入れられない。なので基本的に左手で刀を持ち、右手を添える型にする。
日本でのうちの家は代々武道家の家だった。そのためあらゆる武具の扱い方は一通り学んでいる。もちろん利腕が使えなくなった時の戦い方も。
だからなのか、うちのスキルは武術を全て覚えられても魔法スキルを覚えられないのかもしれない。
そんなことはいいのだ。うちは引き抜いたアメノムラクモを正眼に構えて気持ちを落ち着ける。
「ありゃりゃ抜かれちゃった。まぁでもその方が面白みあるかなぁ?それに君も筋は良いんだけどねー、多分ご主人様と同じようなことをしようとしてたんだろ?もう少し鍛えれば充分強くなれるよん」
(そうか、うちがサニアちゃんのことに気付けなかってのは“隠密”を使ってたからなのね)
けれどその“隠密”も破られてしまった。それにうちたちは2人とも“鑑定”を持っていないため、ジーンのステータスやスキルを覗くこともできない。スキルだけでも知ることができれば、まだ対策なども考えられるのだが。
「ぐっ、かはっ!なめ...るなぁっ!」
サニアは肺に詰まった血を吐き出し跳ね返るように再度ジーンへと飛びかかる。今度はジーンの弾丸を真似たのか氷で弾丸のようなものを作りまばらにではなく、ジーンの急所を狙って打ち出す。
そして自身は爪に氷とさらに足のレッグガードにも氷を貼り付け蹴りを繰り出す。氷で覆われたレッグガードに触れた瞬間、耐性がなければ瞬く間に触れた箇所から凍り付いて行くはずだ。
「はぁぁ!!」
サニアの動きに合わせてうちも逆袈裟の要領でジーンを切り上げる。この刀は全てを裂き、そしてこれによってついた傷は癒すことができないのだ。
「ヤッベヤッベこれ受けられないやつジャーン?!拙者やばくない?まじぱね?」
うちは銃を持つジーンの右腕を、サニアは何も持たない左腕を狙って大上段の蹴りを放つ。もう少しで2人の攻撃が当たる、その瞬間空間が歪んだ...気がした。
「「っっ!!????」」
一瞬意識が飛んだ。そして気がついた時にはうちは壁にもたれこんでいた。反対側にいるサニアも同様に。
「な、何が...?」
うちは何が起こったのか分からなかった。ジーンに攻撃が当たる瞬間まで、ジーンは口以外体のどこも動かしていなかった。しかし、現にうちもサニアも攻撃を当てられず吹き飛ばされている。
さらに屈辱的なことに、これだけ2人とも隙を晒しているのに追撃をかける様子がない。要するに舐められている、手を抜かれているのだ。
ただ、さっきと違う点が一つ。それはジーンの姿だ。うちに向けては拳をサニアに向けては足を向けている。要するに殴り蹴り飛ばされたのだ。全てを切り裂く刀を持つ者と、氷の弾丸を携え凍らせる足を持った者を相手にして。
「な、なんなの、あなた...?うちと同じ勇者なんでしょ?!なんでこんなに手も足も出ないのよ?!」
うちは抑えきれなかった。思えばうちも勇者だなんだともてはやされて浮かれていたのかもしれない。カイトくんに対しては劣等感を持つより先に、彼のことが気になる感情があった。
それでもうちは勇者なんだと、うちより強いカイトくんやキノさん、物腰が丁寧なのに機転も効くお姉さんなテミスさん、カイトくんに迫るスピードで敵を撹乱しながら颯爽と戦うサニアちゃんは特別だから仕方ないとどこかで思っていたのだろう。
でも、その小さな優越感はたった今叩き潰された。もともとすり減ってはいたのだ。帝国で【神創武具】を手に入れたのに帝城では何もできず、【憤怒】の魔王の部下にいいようにやられて。
それでも切り抜けられたと思ったのにカイトくんはうちなんかよりずっと過酷な道を歩んでいて。なんて可哀想な人なんだろう、と。うちが守ってあげなくちゃ、とそう思った。
ーーけどそれは傲慢にも程があった。
正直、サニアちゃんが一人で苦しんでいたことも少し知っていた。でも、手を貸すことはなかった。この子ならきっと切り抜けられるから、と。
今なら分かる。きっとどこかで喜んでいたんだ。うちより優秀な人が苦しんでいるのを見て、ざまぁみろと。うちの好きな人を独り占めするからだ、と。なんて醜い、なんて汚い、なんて傲慢なんだ!
「あなたが出てこなければ!こんな思いをすることも!気づくことも無かったのに!!」
八つ当たりにも程がある。最低という言葉すら生温い。うちがこんな大声をあげているところを見たことが無かったからか、サニアがうちを見て驚いている。
今はそれすら感に触る。
「こっちを見るな!見るなぁぁぁ!!!」
気づけばうちはサニアに向かって叫んでいた。自分の心の冷静な部分が『止めろ』と宣う。けれど気づかぬうちに抑え込み爆発寸前だった鬱憤は最悪の形で姿を表したのだ。
「お前なんか死んじゃえ!!!」
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