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黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
第5章

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第69話 ナヤバの町

今日は二本投稿です!前話もよろしくね!

「...はっ!!なんだよ、今の夢...。嫌にはっきりしてたな。けど、あれ?もう思い出せない...。...あれはショウとノゾミと.....カナ?」


 不思議な夢を見たせいか、まだ日も登っていないのに俺は飛び起きてしまった。


 俺は肌に触れる感触が気持ち悪くて服に触れると、端が絞れるほど寝汗を掻いていた。そういや俺日本に居たんだよな元々。


 古いjkとか変なこと思い出したから合わせて日本のことも思い出したのか?


 でも、あんまり夢の内容を思い出せない。ただ、俺が日本で大学に行っていた時つるんでいた奴らは思い出した。


 こちらに来た時、あまりにも日本に思い入れが無かったせいか、今の今まで記憶から消えていた。


 でも、そうか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ははっ」


 俺は不思議な気分に少し困惑しながらも、なんとなく何か救われた気分がして知らぬ間に笑っていた。


「んぅ...カイトくん?何笑ってるの?」

「ん?あぁミユ、起こしちゃったか。ごめんごめん、まだ日はあまり登ってないから寝てていいよ」

「んー...はぁーい」


 甘えたような声を出しながらミユは俺の方へもたれかかりつつ、すぐに寝息を立てて眠ってしまった。






「ミユなんでそんな顔赤いの?」

「まぁまぁキノさん、ミユさんにも色々あるんですよ」

「んーーー!!!」


 朝、目を覚ましたミユは俺の肩に頭を乗せに抱きつきながら豪快によだれを垂らしていることに気づき、その場で見事な土下座を決めたのだった。


「...?」


 サニアは相変わらずのマイペースで先ほど朝の運動がてらに狩った猪の肉を骨ごと焼いたものを咥えつつ首を傾げる。


「なんでもないよ、サニア。行こっか」

「...こくっ」




 それから俺たちは進むたびに出会う魔物を倒し、通りがかる人々と交流しつつ、何事もなく目的の町にたどり着いた。


「ここがこの前キノが言ってた町か?」

「そうだよー!ここがナヤバの町!でもあんまりいいとこじゃないんだよー。結構圧政敷かれてるし、通行料も高いし...」

「まじか...。でも高いのが分かってるなら何でみんなここに来るんだ?」

「あー、それは次の街に行くにはここに来るしかないからねー。それに横を通って森を抜けようとしてもガイロの部下が見回りしてるから無理なんだよね...」


 つくづく嫌らしいやつだな。誰しもがここを通らざるを得ない様にして、金を巻き上げてるわけか。


 確かにナヤバの町に入る門を守っている門兵も心なしかニヤついてる気もする。


「おう、ここに入るなら1人銀貨10枚だ。ただ、女を置いていくなら男1人の金だけでいいゼェ?」

「ま、女は返さねぇけどな!ガハハハハッ!」


 あー、なんというかもう想像通りだった。見た目で損する根はいい奴みたいなのをちょっと期待してたが、ある意味予想を裏切られたよ。


「ほらよ、40枚。きちんと確認しろ」

「チッ、つまんねー。さっさと入れ、クソガキ」


 おお、口は悪いが払ったら入れてくれるんだな。てっきり払った上で喧嘩を売られるもんだと思ってたよ。


 まぁ、キノは俺たち以外には見えていないと判断しての40ドルだ。案の定奴らには見えていなかったみたいだな。


「ねー?高いでしょ?」

「もう高いなんてものじゃないな。ぼったくりなんて言葉すら生易しく感じるよ」


 これまでは人族の街も魔族の街も通行料が大体どこも同じだった。それも1人約銅貨10枚程度。日本円にすれば約百円だ。


 今までの所は高くても銅貨20枚程度だった。ただ、この世界共通かは分からないが、魔族の一般的な月の生活費が銀貨2枚程度らしいので、とてつもなく安いわけでもない。


 そのため通行料としては浮浪者を弾けるちょうどいい金額なのだろう。


 それを銀貨10枚。銀貨1枚が銅貨100枚と同じなので、1人1万円の通行料。呆れて物も言えないだろう。


 日本にいたころから考えれば当たり前だが、この世界に来てからでも街に入るのに1人1万とか考えられなかったが、今はそれなりに懐も温かい。


 今なら数年だったらサニアたちみんなを養いながら、無職で居られるくらいはある。


 なぜかって?まぁここまでの道中で狩ってた魔物の毛皮とか骨とかを道行く商人に買ってもらってたからだな。それにテミスがもともと狩人をしてたこともあって、毛皮のなめし方を知ってたのも大きかったな。


 まぁそんなことは置いといて、終わった事は仕方ない。門兵の悔しがるようなムカついてるかのような視線を背に街に入ると、街のみんなも値段の高さに吹っ切れているのか想像よりも活気があった。


 それに何度も言うがこの街に金があるからか、店の商品もいいものが並んでいる。これは宿も期待できるな。...その分ぼったくられそうだが。


「ねぇ、カイトくん。何日くらいここに滞在する予定なの?」

「うーん、あんまり決めては無いけど、長居すると金もかかるだろうからそんなに長くは居ないかな。長くても一週間は居ないな」

「キノもあんまり居たくな〜い。ガイロいるし〜」

「そういやガイロについて何も知らないな。キノ、どんなやつなんだ?」

「ん〜とねぇ。まぁとにかくうるさい、すぐキレる、すぐ手出す、短気、味方の後ろで威張ってるやつって感じ」

「...これほど分かりやすい説明もないな。なんというか、【憤怒】を思い出す...」


 そんなことを話していると俺たちの横を通り過ぎようとしていた男が血相を変えて俺のとこへ走ってきた。


「おいお前さんら!悪い事は言わん!今は領長様の話はせんほうがええ!領長様の名前を言っただけでーー」

「おいっ!そこの貴様!何を話している?!まさかガイロ様の陰口でも言ってるんじゃないだろうな?!侮辱罪で連行する!」

「ま、待ってくれ!おいらは何も言っとらん!なんならこやつらに注意を促しとったんじゃ!そ、そうじゃ!こやつらが、こやつらがガイロ様の悪口言っとったぞ!」

「何?それは本当か?皆の者、奴らを捕らえよ。念の為、そこのじじいもだ」

「な、なぜじゃ!おいらは何も言っとらん!信じてくれ!頼む!」


 なんかもう言葉も出ないくらい綺麗に裏切られた。いや、というか裏切られたというより巻き込まれたと言った方が正しいか。


 俺たちに注意をしたかと思えば、秒で俺たちを売った男は、うわぁぁー!という叫び声とともに引きずられていった。


「なんか口を挟む間もなかったけど、どうするの、カイトくん?」

「はぁ、ここでごねても変な罪状足されそうだし、ここは素直に従おう。というかミユ、俺たちは“異種伝心”があるから、わざわざ声に出さなくても話せるぞ」

「え?そうなの?!.....『えぇっと、こんな感じ?』」

『そうそう、これの方が楽だろ?』

『でもカイトさん、このまま行くときっとガイロとかいう人に会わされるんじゃないですか?』

『うーん、どうだろうな。たかだか町内で悪口言ってた可能性があるくらいでトップが出てくるかな?まぁもし出てきたとしても、俺にはあまりそいつに対して敵意とか復讐心は無いんだ。

 確かに奴らの勝手な都合で町を襲われたのはムカつく。けど結局は1人も犠牲を出さずに防げた。しかもその顛末を知ったのもつい最近とくれば、逆に敵意を持ってる方が難しい。

 だからどんなやつかは気になるし、会えれば文句の一つでも言ってやろうかと思ってるけど、別段他に何かしようとかは考えてないよ』


 俺が“異種伝心”でテミスやみんなと話していると集まった衛兵に腕を引かれる。それはサニアやミユ、テミスも同じだった。


 流石に門兵とは所属や人柄が違うのか女と見て喜色を浮かべるようなやつは居なかったが、それでも俺の女がどこの誰とも知らない奴に触れられるのは何か納得が行かない。


「そんなに引っ張られなくてもついていく。だからいちいち触るな」

「...なんだと?犯罪者の分際で生意気な」

「もう確定してるのか?これから事情聴取するんじゃなかったのか?随分とザルな取り締まりだな。衛兵が黒といえば黒になる街など衰退する一方だぞ?」

「...貴様、言わせておけば!これ以上罪を増やされたく無かったら黙っていろ!」


 よし、これで俺に注意を向けられたな。と言っても単に俺の女に触れられてるというのにムカついただけなので、これ以上煽るつもりはない。


 ...てか、何というか、俺少し短気になってないか?




 それから数十分ほど衆目に晒されながら衛兵たちと町の奥、というか中心部へと向かう。そこには石で作られたこじんまりとした城と申し訳程度の城壁、その脇にはこれまた石で作られた小さな離れがあった。


「おら、あそこだ、あそこに入れ。しばらくしたら隊長が来る。それまで大人しくしてろよ」

「あいあい」


 手でしっしっと追い払う動作をする。衛兵は思い切り握りこぶしを作って怒りを発散させようとするが、寸前で堪えたようだ。


 その怒りに任せて俺を殴ってくれたらアドバンテージ取れたんだけどな。流石にそこまで馬鹿でもないか。


 言われた通り離れの中に入ると、簡素ながらも椅子と机が置いてあった。衛兵たちもちゃんと考えているようで、俺たちを売ったあの男と同じ部屋ではなかった。


「まぁ仕方ない。ここで時間を潰すか」

「宿で休みたかったよ〜...」

「すまんな、キノ。いざとなったらキノに助けてもらうからさ」

「うん、わかった。まっかせて!」


 ま、当たり前のようにキノには手錠が付けられていない。そこいらの一般兵程度ではやはり見つけることすら出来ないのだろう。


 それからしばらく5人で雑談していると先程俺がいちゃもんをつけた衛兵とその後ろに1人の男を連れて入ってきた。


「口を閉じろ、犯罪者ども。隊長がわざわざ足を運んでくださったのだ。泣いて喜べ」

「へいへい、お疲れさん。あんたもこんな能のない部下を持つと仕事が大変だよなぁ」

「きっさま!口を閉じろと言ったろうが!」

「俺もさっき犯罪者と決めつけるのは愚かだと言わなかったか?」

「ぐっ!言わせておけば...!」

「ユノイ、少し口を閉じなさい。みっともないですよ」

「ちっ!申し訳ありません、隊長」


 何だかんだ、どこの街も上下関係はしっかりしているようだ。セキアルの町も上の指示にはきちんと従っていたし。


「さて、ユノイから聞くにあなた方は我らが領長であるガイロ様への侮辱を申していたとか」

「あ〜、あれは誤解だ。ガイロサマとやらについては何も言っていないよ。普通に彼女たちと雑談してたら、1人の男が何を聞き間違えたのか話に割り込んできたんだ。その誤解を解く前にお前らがやってきて、勝手にここまでしょっぴかれたんだよ」

「なるほど、ユノイ、あなたの話と少し食い違いますが?」

「私もあの男からしかまだ事情聴取をしていません。そして、私が彼らの元に来た時には確かにガイロ様について言い争っていました」

「別に言い争っていたわけじゃない。あの男がまくしたてるように喋っていただけだ。俺たちはただこの町を通り抜けたかっただけだからな。面倒ごとをこの先も起こすつもりはない」

「なら何であんなに俺に突っかかってくる?!」

「ん?そりゃあやってもいない罪でこうして軟禁みたいなことされてるんだ。暴れないだけましだろ」

「ぐっ...」

「なるほど、わかりました。あなたに暴れられてはこちらも止めようがありません。ただ、このままだと水掛け論になってしまう上、事実確認がはっきりしていない今あなた方を解放してしまうともう一方に申し訳が立たない。

 部屋は改めて用意するのでもう一日このままでいてもらえないだろうか?最大限あなた方の要望に応えられるよう努力しよう」

「なっ?!隊長!あまりに甘すぎませんか?!こいつらはこんなところでも上等なくらいなのに!」

「あなたは後できちんと話をしましょう。それで、いかがでしょう?」


 隊長と呼ばれた男はユノイという部下には目もくれず、俺にそう問いかける。


 正直面倒だが、ここで無理を通しても俺たちの立場が悪くなるだけだし、仮に暴れたとして、奴らも正当防衛はしてくるはずで、そうなるとある程度の傷を覚悟しなければならない。



 名前:インセント・ヴィストル

 種族:蚕魔族

 Lv:358

 スキル:剣聖術Lv.6 刹那Lv.3 重斬Lv.5 剛力Lv.7 俊敏Lv.9 軀力自動回復Lv.8 統率Lv.6



 超越しているのはこの隊長だけ見たいだから俺1人だったらここを切り抜けるくらい訳ないが、全員でそれも警備隊全てを相手にとなると今後が動きづらくなる。


 それにこの隊長自身周りに慕われているのが分かるしな。ここは癪だが、従っておいた方が後々のためでもあるだろう。


「あぁ、わかった。その条件を飲もう。だが、明日1日のみだ。それ以降は何を言われても従わない。それと隔離するんだからそれなりのもてなしはしろよ?」

「あぁ、善処しよう。最大限、期待に答えることを誓う」

「それじゃあ交渉成立だ。その部屋とやらは割にいい部屋なんだろうな?」

「あぁ、4人で使っても充分にお釣りが出るほどの部屋だ」

「ならいい」


 それから俺たちは未だ仏頂面のユノイと隊長であるインセントに連れられ、離れのすぐ横にある城の中へと案内された。


 その間にユノイがせめて個別にした方がいいのではないかと提案していたが、なぜか却下されていた。俺も拘束するならその方がいいのではないかと思ったのだが、詳しい理由までは話していなかった。


 そうしてすぐそばの城の中に入り、隊長達について行くとやはり曲がりなりにも城だからか、それなりにいい部屋へと通された。


 客室にしては広く日本で言うと4LDKくらいはあるだろうか。ダブルベッドが2つくっついたくらいの大きさのベッドや5人ならそれなりに詰めれば座れるソファー。


 ただ、性別の違う複数人で使うことをあまり想定していないのか、着替えをする部屋などの小部屋はなかった。


「ここならどうだろうか?我らが主の城の中でも上から数えた方が早いほど良い部屋だ」

「あぁ、ここなら4人でも広々使えるしな。全然いいよ」

「それは良かった。では、少し後ろを向いてくれ」


 そう言われて後ろを向くと後ろ手に親指同士で繋げられていた錠を外してもらえた。と思ったら今度はそのまま全員、両親指に指全体がすっぽりハマる指輪のようなものをはめ込まれた。


 どうやらこの指輪は魔力の活性を抑え、さらに力も半減させるらしい。明らかに体内の魔力を動かしづらくなった。さらに親指が伸びた状態で固まるため、手に力を入れられない。


「おいおい、これでどうやって飯を食えと言うんだ?」

「多少不便ではあるでしょうが、使えないわけではないでしょう?それに1日の拘束は皆様受け入れてくれたではありませんか」


 ちっ、やられた。まぁそこまで甘くはないか。確かに不便なだけで何もできなくなるわけではない。だが、これはやってみたら分かると思うが想像以上に厄介だ。


 試しに無理やり外そうと思ったが、何かロックがかかったように外すことは出来なかった。


「それ専用に外す魔法具が有りますので、無理やり外すことは出来ませんよ。それでは後1時間もすれば料理を運んできますので。それまではゆっくりしていて下さい」


 そう言い残してユノイとともに部屋を出て行った。


「ねぇ、カイト〜。それ壊した方がいい?」

「いや、このままでいいよ。壊せば後から何を言われるか分からんし。にしても、うまいところを突いてくる。あの条件を出された時、この程度ならいいかと思ってしまった段階でおそらく俺は負けていたんだろうな」


 あの時の事を思い返しても非はないし、選択権もこちらにあった。あの口ぶりからすると、俺と真正面から戦っても勝算がないことはすぐわかったのだろう。


 それを踏まえた上での交渉だ。こういった交渉ごとがあまり上手くはない俺は完全に一杯食わされた形となってしまった。


「ま、後1日の辛抱だ。不便なことに変わりはないけどね」

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