第55話 辿り着いた帝城
「カイト君たちはどこを目指してたの?」
「俺たちは一旦帝城の様子を見に行きたい。ある人の安否を確かめたいんだ」
「そうだったのね、ちょうど良かった。私たちも帝城が一番被害がひどいと聞いていたからそこに行くつもりだったのよ。一緒に急ぎましょ」
帝都を守る壁の近くまで来ると門が開いたままだった。やはりこんな異常事態だ。住民や兵士達も早々に逃げたか戦いに参加したのだろう。
ありがたく通らせてもらう。帝城は帝都の奥にあるが、帝都自体がとてつもなく大きいわけではないためここからでも帝城の様子を確認できる。
「...ひどい。ここからでもわかるくらいすでに崩れてる」
「...急ごう。今からでも力になれるかもしれない」
戦いの余波なのか帝城の最上階の外壁が少し崩れていた。それをみたあ俺はもう自然と全力で駆け出してしまう。
勇者たち4人も超越していたようだが、まだ俺の全力にはついてこれないようだ。ついてこれるのは、俺より強いキノや俺とそこまで変わらないテミス、そして俺とずっと一緒にいる上にスピードに特化しているサニアだけだった。
未だ、そこかしこで爆音が聞こえる。まばらなため激しくはなさそうだが、彼らはまだ戦っているのだ。
さらに家も倒壊などと生易しいものではなく、原型をとどめていないものも沢山ある。そしておそらくそれに潰されたのであろうナニカが大量に転がっていた。
俺はなるべく考えすぎないようにただライドたち、そしてラミーの安否をひたすら祈っていた。
「誰かっ?!誰かいないか?!」
ようやく帝城に着いた俺たちはまだ誰か生きている人がいないか確認しながら上へと登っていく。
だが、見つかるものは初めて見る大量の魔物の死骸と上半身が破裂していたり、全身に噛まれたような傷を負った死体だけだった。そしてそれは上へと行けば行くほどほど増えていった。
その光景は俺の中で嫌な予感をどんどんと膨らませていく。
「どうか無事でいてくれっ...」
そしてついに俺たちは、初めてこの帝城に来た時に皇様に会った謁見の間に入る扉の前へとたどり着いた。
中からは何かを嗤う女の声と共に、大勢の荒々しい息遣いや水っぽい音、また想像したくもない忌々しく肉と肉がぶつかる音が扉の外まで響いている。
俺は最悪の想像を無理やりかき消し、とてつもなく重い扉を両手でこじ開ける。
ーーそして、視界に入ったものはある意味予想通りで、1番外れて欲しかった光景そのものだった。
あのとても広く、荘厳で奢侈な品の良さを保っていた謁見の間の壁は、下手くそな絵描きが描いたかのようにほとんど黒に近い赤やねっとりとした透明な液体が塗られている。
また風格を漂わせていた玉座には、気味の悪い美術品のように何本もの人間の腕が取り付けられ、とても悪趣味な代物に変化していた。
そしてそこには黒い羽根を携え、2本の青いツノを生やした女が楽しそうに甲高い声で何かを叫びながら我が物顔で座っている。
さらに当の謁見の間には、等間隔で黒く細い槍がニンゲンと共に突き立ててあり、その1本1本が丁寧に股間から口を貫通して並べられている。
そして、それらは中心を囲い、崇めるかのように円状に並べられており、そこには大量のオークやゴブリンなどの魔物たちが激しい息遣いと共に狂ったようにナニカに向けて腰を振っていた。
「な、んだよ、これ...。なんだよこれはぁぁぁっっっ!!!」
俺は衝動と怒りのまま、刀を抜き未だに忌々しい動きをしている魔物どもを叩き斬る。だが、魔物が大量に折り重なっているせいでなかなかその中心に向かえない。
また魔物も何かに取り憑かれているかのようで、仲間が殺されているにもかかわらず、こちらに反応も示さずに同じ動きをひたすら繰り返していた。
俺に少し遅れてサニア、キノ、テミスも魔物に攻撃をし始める。
さらにそこへ俺たちに遅れてやってきた勇者たちもこの惨劇に口を押さえながら戦闘に参加する。
一切魔物の抵抗がなかったからか、8人で一斉にやったからかはわからないがすぐに魔物は掃討できた。
だが、魔物の群れを切り開いて目の当たりにした真実は俺の求めていた光景ではなく、むしろ俺の心を抉る結果でしかなかった。
「...そんな、ラミー...」
俺は言葉も出なかった。ラミーは裸に剥かれながらも、嫌味なほどに白濁した液体が局部だけでなく、全身を覆う。
だが、左手と右足は肘と膝から捻られて逆を向き、右手には錆びた鋸のような刃物が手首を切り落とす直前で止まっている。
また、左足は太ももの付け根の部分が焼き切られたかのように焦げており、その先は存在していなかった。
そして首には、くっきりと赤く手型があり対称的に顔は真っ青を通り越して白くになっており、苦しそうな顔で瞼を見開いている。
ラミーは皇女だったからか顔に一切の傷はなかったが、それが余計に痛々しさを助長していた。
他にも周りにはこの帝城に勤めていたと思われるメイドやおそらく貴族の娘であろう綺麗な服の残骸を纏った女性が多数いたが、どれも顔が判別できないほどに潰されており、そのどれもがラミーの体と同じく白く染まっていた。
「...ねぇ、カイト君、まさか君達が安否を心配してた人って...」
聞きながらも俺の顔を見て分かったのだろう。視界の端に映るミユの顔からは血の気が引いて青ざめている。
「そんな、ことって...ひどい...」
自然と握る手に力が入る。サニアがラミーを抱えようとしているところでようやく俺も体が動いた。
俺はまずその汚らしい液体を魔法で出したお湯で洗い流す。
そして初めて帝都に来た時にンヌビタス領で買った石鹸でサニアと一緒に洗い流し、タオルを出して拭こうとするとミユ達も手伝ってくれた。
そしてテミスも手伝いに来てくれたため、女性の扱いは女性の方が分かるだろうと俺はこの場を女性陣に任せた。
「なぁっ!サアラっ!彼女をなんとか出来ないのかっ?!」
「流石に“時魔法”でも死者を復活させるのは無理だ...。ごめん、アサヒ...、カイト...」
「いや、僕こそごめん。...くっ」
俺は顔見知りでもないラミーのために一生懸命になってくれている彼らに内心感謝しながら、やはり勇者なんだなとふとそんなことを思った。
「キノ、ありがとう」
「いいのよ、あいつを誰かが見とかないと」
俺はずっと目の前の女の動向を監視してくれていたキノにお礼を言うと、その女に視線を向けた。
俺の隣には同じく男であるアサヒと彼のパーティメンバーであるサアラが来てくれた。
「僕も男だからあまりいないほうがいいかなって」
「うちも苦手であっちで出来ることねぇしな。それにあいつなんかムカつくし!」
そこでようやく玉座に座る女が動き出した。
「クハハッ!久しいのぉ【嫉妬】よ」
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