第24話 思わぬ邂逅
新キャラ続々登場です!
俺たちは昼前にもかかわらず、結構な人数が並んでいる検問所の列に並んだ。
それから30分ほどして俺たちの番が回って来た。
「次、君は奴隷持ちか。身分証はあるか?それと奴隷は1人につき銀貨1枚だ」
「身分証はあるがそんなに取るのか?」
「いくら奴隷で主人が責任を負うとはいえ、問題を起こされるのは困るからな。これもルールだ、従ってくれ」
「ルールだというなら従うが、何かあったのか?」
「そうか。外から来たなら知らないのも当然だな。ベルズ教のやつらがこの先の森に行ってから帰ってきていない。そいつらは奴隷商人でもあってな。この街にも店を持ってるんだが、その店長が帰ってこないことをいいことに亜人奴隷たちが暴れ出したんだ。それで、仕方なく皆殺しになって、住民たちが亜人に対して少し恐怖心を持ってしまっているんだ」
「...皆殺しか、なるほどな。そんなことがあったのか。それなら俺は少し気をつけておくとするよ。貴重な情報をありがとう」
「ああ、騒ぎなんて起こさないでくれよ?こうして話をしたやつを捕らえるなんて寝覚めの悪いことをさせないでくれ」
「肝に命じておくよ」
あそこでやつらを襲ったのはまずかったかもしれない。だが、そのおかげでレイミアとも会えたのだから後悔はしていないが。
そして、街に入ってみると門番の言っていたようなことがあったからか住民たちの視線が集まる。
それからいくつか宿を回ったのだが、どこも亜人奴隷がいるならと断られてばかりだった。
それに人間以外の種族を全て亜人と纏めているのも少し腹が立ってきていた。
だが、騒ぎを起こすわけにはいかない。と、どうしようか迷っているとこちらに近づいてくる匂いがあった。
「お兄さん方、先程から宿屋を回られているようですがまだお決まりでなければうちで泊まっていきますか?」
「うん?いいのか?こちらには君たちの嫌う奴隷たちがいるが」
「まぁ他のお客さんの手前、少しいただく代金は高くなりますが、門前払いは致しませんよ」
少し怪しいが敵意などに反応する“予知”が働いていないこともあって、俺たちはその申し出を受けることにした。
宿に案内してもらい、念のため3人で同じ部屋を希望すると快く応じてくれた。
また、隣に食堂も付いており、その日はシンプルなステーキだったのだが、シンプルだからこそ肉の旨味がしっかりと際立たせてあり、しかし、ソースも肉に負けず劣らず旨味が強いものでとても美味しかった。
ステーキの肉は数日前出会った虎の肉で、筋肉の多い虎にしては肉が柔らかく出来ていた。
その日、俺たちは今まで外にいたことや宿探しが大変だったこともあってすぐに眠ってしまった。
次の日、俺たちはゆっくり休もうとしていたのだが、外が騒がしく目を覚ましてしまった。先に起きていたサニアに様子を聞くと、どうやらこの世界の勇者がこの街、王都に出て来たらしい。
というよりもともといるという噂は流れていたものの、誰も実物を見たことがなかったので怪しまれていたのだが、その存在がとうとう姿を表すということでお祭り騒ぎとなっているようだ。
俺1人で(サニアたちがいると避けられるため)住人に聞いてみると、勇者は俺がこの世界に来る一ヶ月ほど前に、王家によって召喚されたようだ。
それも4人いるようだ。
彼らは王家の人と共に、この王都の近くにあるダンジョンなどで、魔王を倒すために鍛錬していたらしい。
そして、ある程度育ったことで彼らを冒険の旅に出し、経験を積ませようとしているらしい。
その門出として、今回この王都でパレードをするようだ。
俺はここまでこの世界で生きてきて、もうこの世界をゲームの世界とは思っていないが、勇者も魔王もいるのか。
召喚された人たちも日本人なのだろうか?外国人の可能性がなきにしもあらずだが、まぁ宿から出ない限り会うことはないだろう。
今日はもう出ないつもりだし。
宿へと帰ってきた俺は今日一日休むと決め、入れ替わりで外に出たがるサニアとレイミアにはいくらかお金を渡し、“幻惑”をかけてお使いを頼み自由にさせた。
初めてこの世界に来た時より野宿には慣れたが、やはり気を張らなくていい宿は精神もゆっくり休めることが出来る。
朝起きたばかりだが、瞼が重くなってきた俺はそれに逆らわずまた布団に倒れこんだ。
「っ!!!」
しかし、突然頭に響いたサニアの声に飛び起きた。
(主さま!聞こえる?!主さまっ!!)
(どうしたっ?!何が起きた?!)
(よかった!しばらく呼んでも返事がこなかったから...)
(それはごめん。でも呼んだってことは何かまずいことでも起きたの?!)
(いえ、戦闘になったとか襲われたとかではないわ...。でもレイミアとわたしが勇者のパーティメンバーに誘われた...)
(はぁ...?)
(それだけ?断ればいいじゃん)
(断ったわ...。でも聞いてくれない。運悪くその人の前で“幻惑”が消えて、首輪がバレて...。それで奴隷なのは可哀想だって...。そう言われてレイミアがちょっと揺らいでる...、というかもう付いていきそう...。なんとか止めてるけど...)
(思ったより厄介だな...わかった、すぐそっちに行く)
(待ってるわ...なるべく早くね...)
(ああ)
俺は服を着替え、刀を持ちすぐに飛び出す。そうしてサニアにどこにいるかを聞きながらその場所に向かうと、すでに人だかりになっていた。
「おまたせサニア」
「待ってたわ...主さま...。というわけであなたの要求には答えられないわ...それ以降はこの人に話して...」
「そういうことだ。といっても俺はこの2人を手放すつもりはない。だからお引き取り願おうか」
「君が彼らの主というやつか。恥ずかしくないのか?!女の子に首輪をはめて奴隷ごっこなどと男の風上にも置けない!彼女らはこんなに辛そうな顔をしているのにそれにすら気づかない!」
「こんな調子なのよ...。別に嫌じゃないと言っても聞く耳を持たないのよ...」
「話にならんな。相手の言い分を聞こうともせず自分の言いたいことだけ言う。それが通らなければ子供のように怒り散らす。お前はこの街で他種族がどう扱われているか知らないのか?」
「知っている!だからこれからそれを僕の手で変えていく!そのための一歩として目の前にいる鬼畜な男から彼女たちを救ってみせる!」
「お前の仲間は?4人じゃないのか?」
「彼女たちは今は別行動だ。そんなことは関係ないだろう!」
「とにかく渡すつもりはない。お前にどんな扱いをされるかわかったもんじゃないしな」
俺のこの言葉を聞いて勇者に対して信頼しかけていたレイミアの目に怯えが混ざる。
「そんなことはしない!彼女たちは大切に扱う!」
「扱うなんて人を物みたいに言ってる時点でダメだな。帰れ」
これで完全にレイミアは勇者を信じられなくなった。完全にレイミアの勇者を見る目が怯え一色に染まった。
あとは俺の問題だが、...未だサニアにも手を出していないのだ、大丈夫だろう。
「くっ!言葉の揚げ足を取って満足か!そうやって彼女たちを辱めているに決まって...ぐえっ」
「何やってんのよ!どうせまたあんたの思い込みで喋ってんでしょ?!...ごめんなさいね、こいつが迷惑かけませんでしたか?」
「俺にはかけられていないが、彼女たちが怯えてしまってな。できればもう彼女らに関わって欲しくない」
「こいつっ!わかりました。ちゃんと言い聞かせておきます。この度は本当に申し訳ありませんでした。わたしはミユ・ヤマザキと言います。このバカはアサヒ・シオヤマ、今はいないんですけどユキ・アマノとサアラ・ノノザキが他の私たちのメンバーです。私たちはあと1週間ほど王宮にいるんで、門兵に私の名前を言ってもらえれば口利き出来るように頼んでおきます。本当に申し訳ありませんでした」
「それはありがたいがそんな風に俺を信用していいのか?」
「それは大丈夫です。だってあなた日本人でしょ?」
ミユの後半の言葉は日本語だった。言い忘れていたが、この世界は日本語ではない。
だが、表示されていないスキルなのかこの世界の言葉は分かるし、話せるし、書けるのだ。
だからミユが喋った言葉も日本語だとわかった。横で話を聞いていたアサヒは俺と同郷だと知って驚いている。
名前:アサヒ・シオヤマ(潮山朝陽)
種族:人間
Lv:46
スキル:炎海掌支Lv.- 火魔法Lv.7 水魔法Lv.6 槍術Lv.7
称号:異世界人 炎海の支配者
名前:ミユ・ヤマザキ(山崎美憂)
種族:人間
Lv:41
スキル:武制魔否Lv.- 剣術Lv.2 槍術Lv.3 闘術Lv.8 棒術Lv.7 弓術Lv.4 気配感知Lv.6
称号:異世界人 武の支配者
「っ、まぁ何されても文句は言えないけど、するなら言ってよね。別に拒否したりしないから」
「...へぇ、バレるのか。すまなかった。言うべきだったな」
俺の“鑑定”は“全鑑定”に進化した。
なのに下位スキルである“気配感知”に見つかるのか。だが、その疑問はすぐに解消された。
スキル 炎海掌支 火系統と水系統のスキルを支配することができ、また熟練度が上がりやすい。
称号 炎海の支配者 火と水に対する支配権を得る。
スキル 武制魔否 武系統のスキルを全て覚えられるが、魔系統を覚えられない。だが、魔法をも弾くため魔耐性は高い。
称号 武の支配者 武術系のスキルに対する支配権を得、また敵の武術の練度を下げる。
2人の知らないスキルや称号の中身はこんな感じだ。そしてこの称号。
称号 異世界人 この世界とは別の存在。この世界に適応したことで、全ステータスが飛躍的に向上した。
俺にはないこの称号は普通のスキルも上位スキル並みに補正されるようだ。何というチート。やはり召喚者は優遇されるな。
「まぁいいわ。それよりも左目とか右腕は大丈夫なの?あまり詮索することではないと思うけど...」
「ん?あぁ大丈夫だ。別にそれで不都合があったわけではないしな」
あのゴブリン軍団襲来の時、無我夢中ですぐに頭の端に追いやったが、あの時確かに左目が開いたのだ。おそらく“透破之魔眼”だろうが、だからといって左目の視力が回復したわけではなかった。
依然として左目の視力は失われたままである。
あれから何度か開こうとはしたのだが、以前なら開けることだけは出来た左目が、今はまるで縫い付けられたかのように瞼を開くことすらできなくなっていた。
また、“透破之魔眼”を使おうとしても上手くできず、完全に宝の持ち腐れとなっていた。
「それじゃまたね。左目さん」
「なんだ、そのあだ名は...行ってしまった。............ふぅ、なんだろう。あいつらとは出来るだけ敵対したくはないな...」
俺は宿に帰ろうと2人の方へ向くと、なぜかサニアの頬が膨れていた。
理由が分からず、俺はその膨らんだ頬をつつく。あ、萎んだ。
「主さま、楽しそうだった...」
俺は雷に打たれたような衝撃が走った。あの出会った当初は触れるものみな切り裂いてやる!!みたいな目をしていたサニアが、嫉妬している...だとっ!!
俺はなんだかサニアが愛しくなり、頭を撫でくり回しながら宿へと帰った。
ーーーーーーーーーーーーー
「おいっ!美憂!なんで止めるんだよ!あいつも日本人ならこの世界の奴隷制がおかしいことぐらいわかってもらえるだろ!」
「そうかもしれない、けどそうじゃないかもしれない。少なくとも彼女たちの様子からして不当な扱いは受けてない。あと、一言で奴隷制をなくすと言ってもどうやるの?」
「それは奴隷を全て解放して、奴隷制を勧めている奴らを処罰してやめさせればいい!」
「それは誰か分かってるの?世界最大宗教のトップよ?!それに、そんなのを倒せたとして宗教国家の人たちはどうするの?その人たち全員に奴隷はダメだって説き伏せる?」
「それは...」
「何も考えずに動くのはやめなさいっていつも言ってるわよね?ただでさえ思い込みが激しいんだから。彼は少なくともこの世界のルールに則って彼女たちを大切にしているわ。それは彼女たちの顔を見ればわかる」
「命令されているだけかもしれないだろ?」
「そうかもしれないわね。でもそうは思わなかった。女の勘よ、別に信じなくていいわ。ただ、今彼に戦いを挑めば負けるだけじゃ済まないわね、殺されるわよ」
「同じ日本人なんだし、殺すなんてことないだろ。それにどうして俺が負けるなんて思うんだ?もう近衛兵たちにもほとんど勝てる俺が」
「これも勘よ。でもやめてね。幼馴染が死ぬとこなんて見たくないから」
『スキル:直感を獲得しました』
名前:ミユ・ヤマザキ(山崎美憂)
種族:人間
Lv:41
スキル:武制魔否Lv.- 剣術Lv.2 槍術Lv.3 闘術Lv.8 棒術Lv.7 弓術Lv.4 気配感知Lv.6 New直感Lv.1
称号:異世界人 武の支配者
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