第186話 殲滅兵器戦『前編』
「———っ?!……はぁっ!はぁっ!はぁっ!」
「カイトくん?!」
俺は全身から滝のような汗を流しながら膝をつく。周りには傷一つない仲間の姿と、同じく綺麗な躯体のまま、こちらを警戒している兵器がある。
(今のは、いったい……)
あまりにも鮮烈で生々しい光景だった。
目の前にいる兵器は、ボロボロでありながらも仲間を全て抹殺し、俺の全身を針の筵にしたあと刀で防いだ上から喉を貫いた、ようには見えない。
思わず、俺は自身の体と喉を触って確かめるが傷らしい傷は何もなかった。
「カイトさん?いったい何が……」
「あ、あぁ。いや、なんでもない。大丈夫だ……」
俺は頽れそうになる足を叱咤し、立ち上がる。さっきまでの光景が何かは容易に分かる。おそらく“予知”スキルが発動したのだろう。それで、この先に起きる事象の一部を垣間見せてくれた。
だが、あそこまで鮮明に、そして生々しい光景は初めてだった。
確かにこれまで何度も助けられたスキルであるし、一瞬先の未来を任意ではないにせよ、垣間見ることができるというのは、戦闘において非常に大きなアドバンテージとなる。
しかし、今まで見ることができたのは本当に一瞬先のことであるし、あそこまで生々しい感触も無かった。せいぜいが、『この先にこういう攻撃が来るぞ』くらいのメッセージ性が関の山だった。
「カイトくん!!来るよ!!」
「っ!」
俺はミユの声に我に帰る。目の前には、銀の躯体を細く尖らせ、槍のように引き絞り俺を狙う姿が見えた。その瞬間、先程の“予知”スキルの光景がフラッシュバックする。
「サニア!!受けるな!避けろ!」
「・・・!!」
兵器の躯体の反対側では、同じくサニアを狙って銀の槍が引き絞られていた。俺は頭に浮かんだ仮説をもとにサニアに忠告をする。
おそらく“予知”で見えた光景と、兵器の持つスキル。ある程度は予想していたが、アレは思っていた以上に凶悪だ。
俺の警告のすぐ後、俺とサニアの顔があった位置を銀の槍が掠めていく。槍とはいうが、その太さは俺の顔より大きく、あんなもので貫かれた時にはブツすら残らず弾け飛ぶだろう。
「やぁぁぁっ!!!」
銀の槍と入れ替わるように遊撃として俺たちの間にいたミユが攻撃を仕掛ける。ガキィィンッという硬質な音を響かせながら、斬りあげられた躯体は若干位置をずらした。
「かったい!?」
ミユの【天劔】を受けても多少傷が入る程度のダメージ。やはり俺が見たあの光景はただの夢では無かった。
だとするならば、あの兵器も神の創った代物。神創武具に類するものだ。考えてみれば、この先に待つのは神の僕として産み出された竜が待っているのだ。ここに神が創った兵器があってもおかしくはない。
「こなくそ!!」
「援護します!!」
テミスがミユの二撃目に合わせて魔法を繰り出す。テミスの“神聖魔法”は俺の“暗黒魔法”のようにミユの基礎攻撃力を向上させる。しかし、ミユを包むその光は敵を滅ぼす意思を込めた俺のバフより、もっと高貴で純粋さを感じた。
「・・・ふっ!」
「てやぁ!!」
それに追従するようにシルフィが風でミユとサニアの後押しを行う。それによって速力だけでなく、身体能力まで間接的に引き上げられた2人は、速さによって力が増した強力な攻撃を兵器に見舞う。
「ギギギガガガガガガッ!!!!!!」
呻くような機械音を発する兵器は、絶えず躯体を傷つけるミユとサニアへ反撃するように回転しながら銀の針を振り回す。
「サニアっ!ミユ!!」
「くぁぁ!」
「・・・ずっ!!」
2人とも近接がメインのため、突然の反撃に反射的に防御行動を取ってしまった2人は、モロに兵器の攻撃を食らってしまった。
やはりそうだ。
殲滅兵器の持つスキル“対守勢”は読んで字の如く、守りを行う敵に対して、よりダメージを与えるスキル。敵の行う防御を無視して、ダメージを与える凶悪なスキルだ。
だが、間接的にこの世界は発現するスキルが優先される、ということも分かった。
なぜなら天の劔で防いだミユにもダメージが通っているからだ。
“予知”スキルで見た光景が俺たちの辿りつく可能性のある未来ならば、そこではミユの劔は破壊され、心臓を貫かれていた。
『みんな、聞いてくれ』
俺は改めて全員に兵器の持つスキルの凶悪さについて説明する。敵は特定の行動に対して特攻を持ち、さらに神創された躯体にて防御力も高い攻防一体の兵器。まさしくこれまで戦ってきたどの敵よりも強敵であった。




