幕間〜闇夜の中で蠢く影〜
「くそ!くそっ!くそっ!!」
僕は痛む右肩を押さえながら直走る。信じられなかった。あれだけ長く生き、しぶとさだけが取り柄の【強欲】が一瞬のうちにやられるなんて。
別に死んだことが悲しいわけじゃ無かった。でも、あのしぶとさならいつか僕にとって何か役立つ時が来るだろうと思って協力していた。
それがこんな形で覆されるとは。ただ、暇だったからちょっとつまみ食いをしようとあいつの話に乗っただけだったのに、とんだ貧乏くじを引かされた。
「くっそ、“気纏”まで使ったのに…!」
あの戦いにおいて厄介なのは異界の勇者の武器だけだった。なのでそれを自分の“気纏”スキルで対処する以外に思いつかなかった。
実際うまくいったし、あんなイレギュラーが無ければ、勝てる戦いだったのだ。“気纏”は本来、別の奴に華を咲かせ、そいつから軀力を吸いながら使うスキル。
だから今回のように回復出来ない状態だと非常に危険な賭けだった。現に今僕の軀力はギリギリのところまで減っていた。
「この傷が回復したら思い知らせてやる…!僕たち魔王を舐め腐り敵に回したことを後悔させてやるよ!」
僕はある場所を目指して煌々と満月が照らす暗い森の中へと進んでいった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「キャキャキャキャキャ!!コッチカラムカツクウマソウナニオイガスルッ!!」
それは爛々と紅く滾らせた眼を持つ獣だった。
「キャキャキャキャキャ!!マタクエル!マタクエル!!ウマソウナヤツ!!」
それは刺々しく噛みちぎることに特化した歯を持つ獣だった。
「キャキャキャキャキャ!!アイタイナ、アイタイナッ!ハヤク!ハヤクッ!!」
それは何かの肉塊がへばりついた棍棒を振り回す獣だった。
獣はゴスッゴスッと手に持つ棍棒を地面に殴り付ける。そこには潰れて原型が分からなくなった何かの肉塊が転がっていた。そしてそのまま獣は徐にその肉を掴み口へと運ぶ。
そのまましばらくの間、クチャクチャと汚らしい音を立て、恍惚とした表情で骨の一片まで残さず平らげた。
「キャーーー!!!ウマイナァ!タベタイナァ!!モット!モットォォォ!!!」
獣のいる森の中にはそれ以上に獰猛な魔物など沢山いる。しかも獣がいるこの森はキュケの森。世界最大規模の森なのだ。
そんな場所で大声をあげればただでさえ獰猛な魔物が、夜であることも相まってより凶暴になって襲ってくるであろう。
しかし、これだけ騒ぎ立てる獣の元には一匹たりとも魔物が現れることは無かった。いや、実際に周りにはいる。だが、その魔物たちは遠巻きにその獣を見るだけで襲おうとはしなかった。
なぜならその獣の後ろには夥しい量の肉塊と血溜まりが広がっていたからだ。
自然の生物ほど弱者に強く、強者に弱い。魔物たちは一瞬にしてその獣には手を出してはいけないことを悟ったのだった。
「キャーーー!マダマダタベタイィィィ!!」
だが、本当は近くにいることさえダメなことだったのだ。好奇心は猫をも殺す。魔物ながらにしてその言葉がこれほど的確に当てはまるものもそうないだろう。
群れのボスに隠れて獣の跡を付けてきたある狼型の魔物は抵抗虚しく、一瞬でミンチへと直行した。獣の雄叫びの煩さに耐えかね、攻撃を仕掛けようとした猿型の魔物は両腕をちぎられ、森の奥へ捨てられた。
「キャーキャー!ウマイッ!マズイッ!ママァァァ!!!」
瞬きの間に接近し、周りに蔓延る魔物たちを瞬く間に殺したその獣はまたも懲りずに大声をあげる。もはや獣の周りに存在する魔物は一匹残らず消えた。
しかし、よく見るとその獣は人型をしていた。髪も顔も体も血に濡れたままだったせいか、カピカピに乾いているが、それでも確かに人間だった。
そう、彼はあの時までは何の変哲もない普通の少年だったのだ。スラムの場所に似つかわしくないほど心穏やかで、何をされても相手を決して恨まなかった心優しい少年だった。
しかし、今棍棒を振り回し雄叫びを上げる彼にはその面影など一切無かった。自然に生き、弱肉強食の世界を走り回る一匹の獣であった。
「キャーーー!!!キャキャキャーーーー!!!」
甲高く耳障りな雄叫びを上げながら満月に向けて吼えるその姿は人というよりは二足歩行する狼のようでもあった。
名前:ヒルト・ラキネス
種族:人族
Lv:102
ステータス:体力8937
魔力3965
攻撃10276
防御1258
敏捷8223
知力3167
スキル:餓鬼道Lv.- 槌術Lv.7 剣術Lv.9 火魔法Lv.6 水魔法Lv.1 神聖魔法Lv.6 剛力Lv.4 俊敏Lv.1 雷嵐耐性Lv.4
称号:六道一者
ブクマと感想、チャンネル登録よろしくね!




