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勇者のパーティー

 一回戦から色々あった闘技大会だが、今は普通にモブ同士の戦いが行われている。グランはあれでも強い方だったみたいで、他の出場者ははっきり言ってお話にならない。あくびが出るレベルだ。グランも、くじ運さえよければもっと上位に行けたのかもしれない。カイン君の試合はまだ先なので、わたしは壁に張り出されたトーナメント表を確認しに行った。


 ふむふむ。おっ、主人公の名前発見。無事に勝ち進んでいるようだ。わたしは席に戻ると、アメリアにこっそり耳打ちをした。アメリアの目がきらりと光り、素早い動きで人ごみへと消えていく。……せめてもの恩返しだ。


 丁度今から主人公の試合が行われるみたいなので、わたしはそちらの会場へ移動した。空いてる席はなかったが、まだ立ち見できるスペースはあったので、柵にもたれ掛かりながら戦いを眺める。


 WEF本来の主人公、ルークスとモブとの試合が始まった。


 ルークスはまずモブとの距離をとり、相手の出方をうかがっているようだ。一回戦を勝ち抜いたとはいえ、そこはモブ。掛け声とともに上段の構えでルークスに切りかかる。……そんな分かりやすい攻撃が当たるわけがない。その上、勢いよく振り下ろされた剣はリングに見事にめり込んでしまい、剣を抜くまでにかなりの隙ができた。そこをルークスは見逃さなかった。背中から斬りつけ、一撃だ。相手が戦闘不能に陥ったので、ルークスの勝利である。モブは救護班に運ばれて行った。……試合開始わずか三分の出来事であった。


 わたしにとっては退屈な試合も、他の観客にとっては刺激的なイベントらしい。ルークスの見た目がいいこともあって、黄色い歓声はいつまでも続いた。ルークスは声援にこたえる様にして手を振ると、控室へ戻っていった。……さて、わたしにはやらなければならないことがある。わたしはルークスの後を静かにつけていった。


「お疲れさま。ケガしなくて良かったね」

「あぁ、ありがとうエステラ」


 ルークスは控室でゲームのヒロインであるエステラと一緒にいた。傍から見たら文句なしの美男美女のカップルだ。ルークスはサラサラの金髪に薄いブルーの瞳、鎧の上からでもわかる引き締まった体の爽やかイケメンだし、勇者だけあって強い。エステラはふわふわの赤毛を腰のあたりまで続く長い二本の三つ編みにしている。髪の赤と瞳の緑のコントラストが美しい神秘的な顔立ちの少女だ。もちろん、ヒロインだけあって可愛い。しかも強い。わたしは慣れ親しんだキャラの二人に勝手に親近感を覚えていた。


「こんにちは」


 わたしは二人に声を掛けた。二人とも眩しい笑顔で挨拶を返してくれた。


「先ほどの試合、拝見しました。とってもお強いんですね。お二人は旅をされてるんですか?」

「そうなんだ、魔王を倒す旅の途中なんだよ」


 うん、知ってる。だが、わたしは分かりやすく驚いて見せる。


「えぇっ! あの魔王を!? ……わたし感動しました。世界を救うためにあなた方の様な若い二人が旅をしているだなんて……! お願いです。わたしも連れて行ってくださいませんか? きっとお役に立ちますので……!」


 ふっ、お気づきだろうか。わたしが昨夜カイン君に告げ、即振られた、いきなりのパーティ参加希望を今ここで再び行っていることを……! 学習能力ないって思った? こいつほんとバカって思った? でも残念でした! 今回はこれでいいのだ! ……なぜなら!


「いいよ! 仲間は多い方が良いし! 俺はルークス、よろしく!」

「わたしはエステラよ。よろしくね」


 この二人は来るもの拒まず、たとえ後で裏切る怪しさ満点キャラでもノー審査でパーティに加入させてしまう、人を疑うことを知らない純粋無垢なド天然二人だからだーーーー!


「よろしくお願いします! ユーリです!」


 わたしは二人と熱い握手を交わし、晴れて勇者パーティーの一員となった。


ゲームの主人公って素直な人が多いですよね。疑り深いと話が進まないですもんね。

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