VIPルーム
「ごゆっくりどうぞ、、」
「ああ、どうも、、」
ぱたんと戸が閉まる。
「いやっほーう!」
「♪」
それと同時に、ラストとルドルフが部屋で騒ぎ出す。
「すげえ、サンタすげえ!すげえよサンタ!」
「中身がねーぞ。もうちょっとまともにしゃべれや」
「だってこれ!すげえとしか言いようがないぞ!」
僕たちは今、いつもの旅館にいる。
しかし、昨日までの部屋ではない。
きらびやかな装飾。
何やら高そうな置物や、壁にかけられた絵。
バルコニーのような一角があり、そこには備え付けの露天風呂から湯気が出ている。
さらに部屋は昨日までのところよりも段違いに広い。
人数が一人増えただけなのに、部屋は倍の広さだ。
「すごいね、、」
隣でリィナも、僕の隣で立ち尽くしている。
何故僕たちがこんな部屋にいるのか。
それは数分前の出来事。
リィナを連れて、預けていた部屋の鍵をもらおうと受付に行くと、受付嬢は僕を見た途端に裏へ引っ込んでいって、支配人を名乗る女を連れてきた。
その人が言うには、
「試合、見ました!まさかサンタクロース様がうちに泊まっていたなんて、、!ぜひ、うちでできる限りのおもてなしをさせてください!」
といわれ、最高の部屋を用意するといわれた。
もちろんそんな高い部屋は金がないから泊まれない。
それに明日には帰る、といった。
しかし支配人はどうやら僕の試合を見てファンになったらしく、泊まってくれるならそれでいいし、金なんて要らない、むしろタダでいいとさえ言ってきたのだ。
そこまで言われて断る理由もなく、僕たちはそのおもてなしを受けることとなった。
そして今、VIPルームに該当するこの部屋へと案内されたわけだが。
「サンタ見ろよ!特設露天風呂!しかも混浴!」
「ラスト、、お前、もう少し自重しろよ、、」
「屋上!すげー眺め!広い部屋!」
この激しくテンションをハイにさせている男を見ていると、身分もわきまえずにこの部屋にいる自分たちが情けなく思えてくる。
「まあ、すごいけどよ、、、」
とりあえず近くにある座椅子に座る。
荷物をおいて落ち着くと、テーブルの向かいの座椅子にリィナも座る。
「本当にすごいとしか言えないね、、」
少し微笑んで、僕を見る。
「ああ、リィナも、ここの部屋に来れてよかったよ」
支配人は戦う女にもあこがれを持っているらしく、大会を見に来たのはリィナを見るためだったらしい。それで僕との試合を見て、僕のファンになったみたいだが。
リィナも泊めたいといったら、二つ返事で了解してくれた。
最後の含み笑いが何か引っかかったが。
「本当に、あの人には感謝しないとね」
「それじゃあ、まあ、夜までまだ全然時間あるし、昼寝でもするかあ」
「こらこら、そんなだらけちゃダメでしょ」
「いいじゃん、こんな部屋でもすることは変わんねえよ。さっきまずいもん飲みすぎて昼飯って気分でもないしな」
空の小瓶を振って見せると、リィナは少しいやそうな顔をする。
「飲む?」
「絶対いや」
「そういうと思ったよ。んじゃあうちのお通しだ。これでも食ってな」
袋からゼリーを取り出して渡す。
「スライムのゼリーね、、普段どうやって戦ってるの?」
「こんな感じ」
ゼリーを一つ取り出して、スライムに見立てる。
そしてそれを掴んで、一気に握りつぶす。
「怖いよ、、かわいそうだとは思わないの?」
「かわいそうだからそうしてるんだよ。剣で切られたら超痛いし?魔法なんてぶつけたら死ぬほど痛いだろうし?なら物理しかないっしょ」
「まあ、確かに、、そういう考えもあるね、、あ、おいしい」
「良かった。んじゃ、夕方にでも起こしてくれ」
「本当に寝るんだ、、」
寝ようとテーブルに突っ伏すこと数秒。
そこで勢いよく戸は開けられる。
「きゃ、なに!?」
顔を戸の方へ向けると、マイが数体の雪だるまと一緒に、そこで立っていた。
「サンタさん、、置いてくなんてひどいじゃないですか、、!」
「あ、ごめん」
普通に忘れてた。
大会の野次から逃げるのに必死で、リィナと騒ぐラストを連れ出すのが限界だったしな。
「それで、どう、この部屋。驚いた?」
「ええ、すごい部屋です、、驚きましたよ、、大会でそこの方にしたことも!」
「ええ!?」
リィナをにらみつけるマイ。
いきなり自分に矛先が向いて、声を出して驚くリィナ。
「あー、やっぱり?」
「やっぱり?じゃないですよ!どういうことですかどういうことなんですか?いきなりプロポーズだなんてうらや、急すぎてびっくりしましたよ!?」
「今寝るとこで夜に話そうと思ってたんだけど。やっぱり今話さないとだめなの?」
「当り前じゃないですか!説明してくださいよ!」
「わかったよ。んじゃあみんな座ってくれ。ラストも。もうそんなはしゃがない。早く座れ」
「んん?まさかあの話か?それなら座るぜ」
ラストはニヤニヤしながら僕の隣に座って、耳元で囁く。
「ちゃんと誤解は解けよ?」
「はあ、、わかってんじゃねえか」
雪だるまたちが僕の周りによってきて、ルドルフが胡坐をかいた僕の上に乗ると、全員がテーブルを囲んで話せる状態になった。
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