死亡フラグか、修羅場フラグか……あれ、結果は同じじゃね?
いや、短くてすみません。
短期間で更新しようとすると、どうしても長さとクオリティが……ね?
文の完成度的な面に関しては、一応後でちまちまと修正していく予定でございます。
負の感情の塊で構成されたかの様な、しかし、だからこそ無垢で純粋な妖怪の少女…水橋パルスィ。
ある意味でそういったものとは無縁な生活をしてきた唯衣は、いまいち彼女の真意を測りかねていた。
いきなり転がり込んできた少年を、事もあろうに見返りを求めず、自分の家に寝泊りさせる……パルスィが妖怪である事を考慮してもあまりに不用心過ぎるし、何よりそれによる彼女の利点が全く思い浮かばなかったからである。
隙を見て自分を喰うのが目的だという方向も、流石にここまで平穏な時間が続くと考えづらくなって来た。平凡な一人の人間程度、彼女がその気になればいつでも襲えるのだから。
……いや、とりあえず堅苦しい話は抜きにして、今は二人の食事風景へと視点を切り替えよう。
閑話休題、である。
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
「……治癒魔法、ねぇ。正直な話、私はあまりそっちの方面には明るく無いのよ。残念だけれど、教えられる事はあまり無いわね。どうせ好奇心で買っただけだし、その本はあげるからもっと勉強しなさい。」
「そっか…いや、こちらこそいきなり尋ねたりして、悪かったね。」
「何言ってるのよ、わからない事があったら他人に訊くのは自明の理でしょう?……全く、変なところで謙虚なんだから。」
妬ましいわ、と。
そう続けたパルスィは、皿に残っていた最後の唐揚げを箸でつまむと、その艶やかな唇を開いた中へ放り込んだ。
「あっ………」
自分の箸を突き出した姿勢のまま固まる唯衣。どういう事かは……まあ、説明するまでも無いだろう。
「私の方が一瞬早かった…それだけの事よ。」
あー美味しい、美味しいわーと一通り目の前の少年をからかった後、パルスィは食べ終わった自分の分の片付けを始めた。
だが、唯衣は未だに味噌汁を啜っている。
「……あれ?貴方、もしかして猫舌だったの?」
「うん、少しだけどね。特にこういう汁物は熱いと駄目で……あ、でもこの味噌汁美味しいよ!」
申し訳無さそうに言った後、慌ててフォローする唯衣。
「え?あぁ、うん…ありが、と?」
くるくると回る展開に、しどろもどろのパルスィ。
彼女の性格からして、普段は人と話す事があまり無いのだろう。その様は明らかなコミュ障……もとい、口下手で大人しい女の子そのものであった。
そして漸く冷めてきた味噌汁を飲む唯衣を見ていたパルスィは、ふとある事に気が付く。
「あれ?唯衣君、少し思い出して来たりとか…したの?」
「………ッッ!?」
この少年、実はパルスィの家に厄介になるにあたって一つの『保険』を掛けている。
それは、自分が記憶喪失であるという嘘。これによって、少なくともパルスィの霊夢関係での八つ当たりによる負傷だけは回避できている。
勿論、この良くも悪くも正直な少年がそんな嘘を長い間吐き続けられる訳が無いのだが……緊急事態だった為、本人も慌ててしまっていたのだろう。
それ以来、唯衣はパルスィに「思い出した?」と尋ねられる度に体良くはぐらかして来た。
だが今回の質問は、明らかに普段とは違う空気を纏っていた。
「……何で、そう思ったの?」
「つまり図星って事ね。全く、言ってくれれば良かったのに……いや、何と無く、ね。味噌汁飲んでる時の唯衣君の表情がこう…懐古的って言うの?昔を懐かしむ様な表情だったから。」
「はぁ……思いっきりバレてたんだ。」
「さ、観念して白状なさい。貴方は一体、何処の誰なのよ?」
好奇心に煌めく、切れ長の双眸。唯衣も見惚れてしまいそうになる深緑のそれが、これから彼自身の語る事により吊りあがるのだと思うと、僅かに心が痛んだ。
「……実は、ね。僕ーーーー」
そこまで言った所で、唯衣の言葉は途切れた。
……否、『強制終了させられた』と言った方が正しいだろうか。
「………っぁあ!緊急保護スキマアタァーーーック!!!」
唯衣がちょうど口を開いた、その瞬間。彼の後ろにどす黒い空間の割れ目が広がり、その中から出て来た狐が凄まじい勢いで唯衣を抱えてその中に戻って行ってしまったのである。
「………………あれ?唯衣君?」
一人その場に残されたパルスィは、現状を把握できずに戸惑っていた。
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
(落ち着け私。素数を数えて落ち着くのよ……)
割れ目から出て来たあの狐、僅かだが見覚えがある。
あれは恐らく幻想郷の管理者である八雲紫の式、藍だろう。何の用があって彼を連れて行ったのかはわからないが、少なくともあれらは無差別に人を喰う様な妖怪では無い筈。
となると、かなり危ういものではあるが彼の安全は(彼が前科者だったりしない限りは)保証された事になる。
と、そこまで思考が辿り着いた所で、パルスィはふと自分の中を埋めている悔しさに気が付いた。
(……あれ?何で私、こんなに苛ついてるの?)
その正体不明の感情にもやもやとしながらも、彼女は黙って考えを巡らせる。
(とりあえず、唯衣君が八雲紫達の関係者である事はわかったわ。今度会う事があったら……詳しく、話を訊かないとね?)
パルスィはすっかり冷めてしまった味噌汁を一気飲みし、黙って台所へ向かって行った。
「また……一人、か。」




