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東方迷人記〜空から降って来たのは男の子でした〜  作者: 長良
二章…すれ違い続ける者たち
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嫉妬の緑眼

ここは地底、旧都。

幻想郷の深き地の底にあり、かつて地獄として使われていた場所。地上では既に亡きとされた、曰く付きの妖怪達が住まう場所。

…今日もその片隅で、何やら二つの影が蠢いていた。



「唯衣君、昼餉が出来上がったわよ……って、唯衣君?」

深く澄んだ緑眼を煌めかせ、昼餉のおかずを乗せたお盆を運ぶ少女、水橋パルスィ。

「……………」

そして、彼女に『唯衣君』と呼ばれた少年……諫早、唯衣。

「唯衣君……あぁ、もう。大した集中力じゃない、妬ましいわ。」

唯衣は、先程から小さな文机に向かい、ずっと本を読んでいた。

パルスィは彼の横にお盆を置き(それでも顔を上げない唯衣は流石と言う他無いだろう)、下からその表紙を覗き込む(それでも気付かない唯衣は以下略)。

「何読んでるのよ?……なになに、【治癒魔法入門〜魔法のメカニズム・原理〜】ってうわ、これ明らかに入門用の内容じゃないじゃないのッ!」

「うひゃあ!?」

あまりの内容に、堪え切れず大声で突っ込みを入れるパルスィ。そしてその大声に驚いた唯衣が悲鳴を上げた。

「パ、パルスィさん!?いつからそこに!」

「ベタな反応してんじゃないわよ!昼飯出来たってさっきから言ってるじゃないの!」

無様な姿を見せてしまった羞恥に顔を赤らめる唯衣と、彼のあまりと言えばあまりな反応に違う意味で顔を赤くして叫ぶパルスィ……(はた)から見ればただの仲のいいカップルにしか見えなかっただろうが、如何せん本人達には全く自覚というものが無い。

(負の感情にのみ)敏感な女と、鈍感が過ぎて周りから呆れられる男。ある意味ピッタリなコンビである。

どこぞの巫女の嫉妬が怖……いや、何も言うまい。それもパルスィの糧になるだけだ。


「……ま、とりあえず昼餉が出来たから。これから残りも運んでくるから、そこで待ってて頂戴。」

未だ机に向かっている唯衣を置いて、台所へと歩いて行くパルスィ。

その背中に、立ち上がって背中を伸ばしながら唯衣が声を掛けた。

「随分とからから言ってるね、まぁそれは良いんだけど。

とりあえず、僕も準備手伝うよ。」

驚いた事に、赤の他人と敬語以外で話す事が出来る様になっている。

霊夢との一週間・そして時間の合わない世界に放り出された一ヶ月間が、彼の心境に何か変化を(もたら)したのかも知れない。

「良いわよ別に。全く、よくわからない所で親切よね貴方…その心、全く以て妬ましいわ。」

彼女は、多少の苦味を混ぜた笑みを浮かべながら台所へ去って行った。

本人が言っているのならそれで良いのだろうとそれを見送る唯衣は、先程まで向かっていた机の上にあるものを見て、慌ててパルスィを呼び止める。

「ちょっとちょっとパルスィさん、お盆置きっ放しだよ!」

「あら、そうだったかしら?」

台所から、間延びした声が聞こえて来た。

「食卓に運んでおこうか?」

「良いわよ、今日はそこで食べましょう。」

予想外の答えに驚いた唯衣は、思わず上ずった声で返答してしまう。

「えっ?…何でまた。」

「随分と熱心に勉強している様だったから、ね。こういう時は、出来るだけ場所を変えない方が良いのでしょう?」

「あんたは受験生の母親か!?」


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


結局、その後はちゃんと食堂に戻って食事を始めた二人。

メニューはご飯と味噌汁、そして漬け物と鳥の唐揚げ……幻想郷の生活水準から言えば、かなり豪勢な部類に入るだろう。

「パルスィさんの唐揚げ、相変わらず美味しいね。どうやって作ってるの?」

「貴方、男の癖に料理になんて興味あるの?……人は見かけによるってのはどこの格言だったかしら。」

よらないんじゃないかなぁ…と口を零した後に、ふと何かを思い出した様に卓向かいの少女を見つめる唯衣。

「そう言えば、パルスィさん。話は変わるけど…」

「え?あぁ、何かしら?」

「僕に、魔法を教えてくれないかな?」

「……………は?」

突然の申し出に、目を丸くして驚くパルスィ。

「あんたね、普通の人間に魔法なんで使える訳無いじゃないの。寧ろ地底に放り出されて、今ここで生きてるのが奇跡みたいなものなのよ?」

そして今度は、その言葉を聞いた唯衣が驚く番だった。

「えっ、普通の人って魔法使えないの…?」

「そりゃあそうでしょう。魔力なり何なり、原動力が無くちゃ。」

「……そういや、霊夢もそんな事言ってたっけ……」

ぼそりと呟きを零す唯衣。だがその言葉は、幸い(?)にもパルスィには届いていなかった。

「何か言ったかしら?」

「いや、何でも無いよ……というか、さ。」

「何よ?言いたい事があるならはっきり言いなさい。」


「僕……何やら、使えるみたいなんだけど。」


「………………お医者様はどこだったかしら。」

いそいそと財布を取り出し、有り金の額を確認し始めるパルスィ。

唯衣は慌てて彼女を止めようとしたが、返ってきたのは射抜く様な冷たい視線だった。

「…全く、馬鹿言わないで頂戴。貴方は『普通の』人間でしょう?」

「そうなんだけど……」

口ごもる唯衣。


実は、彼には『パチュリー、霊夢と試してみたら発動した』という経験を話す訳にはいかない、ある理由があった。

なんとこの少年、自分が記憶喪失であると偽っているのだ。

理由は簡単、それは『パルスィが妖怪だから』。

その立場上(あと性格の問題上)、博麗の巫女である霊夢は、妖怪達との折り合いが決して良いとは言えない。

ここで自分が霊夢の関係者だと話してしまうと、今後の行動に支障が出るかもしれないと思ったのだ。

しかし。

(これは……選択ミスったかな…?)

地底に飛ばされて、そしてパルスィの家に厄介になり始めてからはや三日。その間に、唯衣は実感していた。

この少女、隠し事とか絶対無理なタイプだ…と。

因みにこれは、隠し事が出来ないという意味では無い。相手の自分に対する隠し事が許容出来ないタイプだという事だ。


(霊夢……気付いているのなら、早く来て貰いたいんだけど……!)


このままでは、唯衣の下手な嘘がバレるのも時間の問題である。

\やった!/ \やった!/

小説書ける!

\やった!/ \やった!/

パルスィ書ける!


………というわけで、自分の好きなキャラ第二位、水橋パルスィさんのご登場です。

良いですよね、嫉妬心以外は常識人のかほりがして。


というわけで(二回目)、今回は常識人×常識人でタッグを組ませてみました。というかこの二人以外出てきません。


やっと二章が始まりましたが、これからもどうぞよろしくお願い致します!

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