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がなぶのだお  作者: 三郎
8/12

二人の刑事

当時この傷害事件は大々的に全国ネットで報道された。

 電車内での傷害事件。

 被害者は二人。

 その二人の証言で犯人のおおよその姿が分かった。

 年齢は五十代前後の男、黒スーツで、なぜか赤い蝶ネクタイ。

 太く赤い杖を持っているがそれは仕込み杖。


 不思議なのはその犯人を見たのは被害者四人の内の二人だけ。


 目撃者の一人は両目を鋭い刃物で切られ失明、もう一人は両手首をこれも鋭い刃物で切断され重症。

 後の二人は首筋に軽い傷を負っていたが、何も見ていないの一点張り。


 その内容の経緯が詳細に判明するにつれ『真夏の怪奇事件』とマスコミは騒ぎ始めた。


 警察は聞き込み調査を念入りに行った。もちろん、僕の自宅にも警官は来た。



 あと半年で定年を迎える福本完治は、第二の職場である民間警備会社の警備課長補佐と言うポストが決まっていた。

 何事もなく警察の強行係を退職して新天地に向かおうとした矢先、この事件を担当することになった。全く不可思議な傷害事件を受け持つことになったのだ。


 今年の春に捜査一課に配属された新米刑事の玉田信二と共に聞き取り調査を始めてから五日目、今日は織本順二という子供の家の自宅訪問だ。


「どう考えてもおかしいですね。被害者の二人以外は誰も犯人を見ていないなんて」玉田は首を傾げた。


「俺も、長年警察に勤めているがこんな事件は初めてだ」

 福本は玉田の疑問に同調した。


「犯人は仕込み杖を持ち、その刀を振り回し強行に及んだ。

手を切断された被害者は電車内でその男に追いかけられたという。

その光景を乗客の誰も見ていない。

乗客が見たのは突然叫びをあげ血だらけで、床の上をのた打ち回っている被害者の姿。

しかし、黒スーツで赤い蝶ネクタイの犯人の姿を誰も見ていない」福本は今までの聞き込みの結果をまとめあげながら言った。

 

そこに玉田は付け加えた。

「しかも不思議な事に、電車内で備え付けられた防犯カメラの映像には、被害を受ける直前の四人の被害者たちが突然消え、数秒後に被害者が、これも突然に、床でのた打ち回っている姿で現れた。

カメラを調べた結果、故障はしていない、手を加えられた形跡もない。

鑑識課ではありえない現象だと首をかしげている始末だ」

 玉田はため息をついて福本に言った。

「一体、これはどういうことなんでしょうか?」


「さあね、狐に包まれたような事件だ。と、言うしかないね」


 二人の刑事は大きな玄関の前に立った。

「ここが織本順二が住んでいる家か?」


「そうです」


「しかし立派な門構えだな。親は何やってるんだ」


「確か不動産売買を手広く経営しているとの事です」


「なるほどね」



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