三分の意味
福本と玉田は織本の自宅を後にした。
「まいったなあ。織本のばあさんに睨まれた時はマジで死んだお袋を思い出したよ」
福本は苦笑した。
福本は結局、順二から目新しい情報は聞き出せなかった。
「でも、主任はどうして順二の言った『三分』の言葉にこだわるのですか?」
「手がかりがそれしかないからだよ。犯人の目撃者がガイシャ二人のみ。犯行が行われた場所が走る電車の中で密室。しかも一瞬の犯行。車内の監視カメラもそれを証明している。四人が突然消え、また突然現れる。
現れた時は、一人は鋭利な刃物で両目を切られ床でのた打ち回り、もう一人は別の車両で手首を切り落とされ血まみれで転げまわっている。しかも、他の乗客は誰一人犯人を見ていない。どうやって解決するんだ?」
福本は腹立たしそうな顔で言った。
「迷宮入り」と言う言葉が福本の脳裏をかすめたのだ。
「しかし、子供の苦し紛れに言った言葉にそんな重要性があるとは思えませんが」
突然、福本は玉田の首を鷲掴みにした。
玉田は、突然首を絞められ体がすくんだ。
「こんな状態で、お前、三分あげますって意味のない言葉を言うか?普通、助けて、とか苦しいとか言うだろう」
福本は玉田に怒鳴った。
「確かに…分りましたからこの手をどけてください」
福本は玉田の締め上げた首を開放した。
「あの子供は真っすぐ俺の目を見て受け答えした。ああいう子供は嘘はつかない」
「…?だったら、そんな言葉は言ってないんじゃ…」
玉田の言葉を遮るように福本は言った。
「なのに、順二は嘘を言った。なぜだ」
「順二が嘘を言ったという事が、何故分かるのですか?」
順二が少し時間を置いて瞬きしながら『僕は言っていません』と言った表情を福本は思い浮かべた。
「一連の会話で、順二が瞬きをしたのはあの時だけだ。あれは自分をごまかすための所作だ。間違いない」
「気づかなかった」玉田は感心したように福田を見つめた。
「三分あげますの意味は何なんだ?それと…一体、誰に言ったんだ」
福本は首を傾げた。
二人の刑事が僕の家に来たのは、僕の言った言葉の意味を知るためだった。
二人の刑事、特に少し年配の優しい目つきの刑事はしっつこかった。
「三分あげるってどういう意味?」
僕はどう答えて言いか迷った。
僕はおじさんを見上げた。
おじさんは、二人の刑事の後ろに立っていた。
「どう答えればいいの?」
おじさんに聞いたらおじさんはこう答えてくれた。
「そんなことは言ってないと言え」
「嘘をつくの?」
「そうだ。正直に答えても誰も信じないぞ。それこそ、嘘つきのレッテルを貼られるだけだ」
おじさんの言うとおりだ。信じるものは誰もいないだろう。
僕はかたくなに言ってないといい続けた。
でも、その嘘を見破った人がいた。
僕の養母、良子さんだ。




