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第4話 文字の勉強をしよう 前編

          



 昨日の楽しい歓迎パーテーィから一夜明けた次の日の朝、アイナはフェリシアの家で朝ごはんを食べていました。しかしそこにビリーの姿はありません。昨日、夜遅くまで村人たちとお酒を飲んでいたので、まだぐっすりと眠っているのでした。


「ほら、見てみなさいよアイナ。昨日のパーティーのことが書かれているわよ」


 フェリシアはそう言ってアイナに新聞を見せました。そこには、昨日のことが絵入りで紹介されていました。なぜ絵なのかというと、この世界には写真という技術がないからです。そしてこの村の新聞は、毎日のように配達されるものではありません。この村がとても小さいため、毎日のように事件が起こるわけではないからです。しかもこの村はとても平和で、殺人事件のようなものは一度もありませんでした。


「どうしたの?うれしくないの?」


「そんなことはないわよ。絵を見ればなんとなくわかるもの。でも・・・読めないのよ」


「ああ、そうだったわね。ごめんなさい。アイナは人間の子供だったのよね。すっかり忘れてたわ。ねぇ、アイナ。あなたはこれからずっとこの世界で暮らしていくんだからこの世界の文字をちゃんと覚える必要があると思うの。私が教えてあげるからいっしょに勉強しましょうよ」


「お姉ちゃんが教えるの?止めといたほうがいいんじゃないの?お姉ちゃんはすぐ怒るからなぁ。お母さんが教えたほうがいいと思うよ」


 リックスが言いました。


「お母さんはいろいろといそがしいの。そうよね?お母さん」


「え、ええ、それはそうだけど・・・本当にフェリシアでだいじょうぶかしら・・・」


「もう!お母さんまでそんなこと言うの?もっと私のことを信頼してほしいわね。私だってちゃんと教えられるわよ。いいわね、アイナ。朝ごはんが済んだらさっそく私の部屋で勉強よ」


「べつに明日からでもいいんじゃないの?それに私にこんな難しそうな文字が読めるようになるとは思えないわ」


 アイナはあまり勉強が得意ではありませんでした。


「こういうことは早いほうがいいの!それにアイナが思うほど難しくはないのよ。あのバカなリックスだってちゃんと読めるんですからね。アイナにだってちゃんと読めるようになるわよ」


「バカで悪かったな」


 リックスがつぶやきました。



 朝ごはんを食べて少し休憩すると、さっそく2人は勉強を始めました。


 最初は仲良く勉強していたようですが、30分もたたないうちにフェリシアの怒鳴り声が聞こえてきました。どうやらアニーとリックスの心配が的中したようです。


「バカ!何回教えたらわかるのよ。これは魔人のフェリシアじゃなくて美人のフェリシアって読むの!なんで1番大切なところだけ間違えるのよ。わざとやってるの?」


「私だって真面目にやってるわよ。そんな言い方しなくてもいいじゃない」


「よく言うわよ。考え事をしたり、よそ見したりしてるくせに!あなたのためにわざわざこうして教えてあげてるんじゃない。わかってるの?」


「何よ!私だって無理に教えてくれなんて言ってないわ。どうせならもっと優しい人に教えてもらったほうが良いわよ」


「あっそう!じゃあ好きにしなさいよ。私だってあんたみたいなもの覚えの悪い子に教えるのはごめんだわ」


「私も誰かさんみたいな怒りんぼに教えてもらうのはごめんだわ」



 そう言ってアイナは出て行きました。


「やっぱりこうなると思ったわ」


 アイナが出て行った後、アニーが言いました。


「心配することはないよ。子供のケンカなんてよくあることさ」


 ようやく起きてきて遅い朝ごはんを食べているビリーが言いました。




 フェリシアの家を出て行ったあとアイナは、今度はもっと優しい人に教えてもらおうと思いましたが、まだこの村の人たちとはあまり仲良しではないため、アイナが頼れるのは1人しかいませんでした。


 そこはグリムの家でした。


「ああ、やっぱりここは落ち着くわね。何だか自分の家に帰ってきた気持ちよ」


 部屋に入ったと同時にアイナが言いました。


「相変わらずよくしゃべるわね」


「あら、ルーシーもいたの?」


「私がいたら悪い?ジャマなら帰るけど」


「まさか!ルーシーがジャマだなんてそんなことちっとも思っていないわよ。本当よ」


「まあ、いいわ。で、今日は何しに来たの?どうせまた面倒なことをおばあちゃんにお願いしに来たんでしょ」


「面倒だなんてそんな・・・私はただこの世界の文字を教えてもらおうと思ってきたのよ。だってこの世界で暮らしていくには必要なことでしょ?」


「確かに必要だわ。でも、何でわざわざここに来たの?フェリシアに教えてもらえばいいじゃない」


「たしかにルーシーの言う通りだけど・・・フェリシアはだめなのよ。なんて言うか、その・・・えーと・・・」



「何よ!はっきりしないわね。何が言いたいの?」


「どうやらあんたたちはケンカをしたらしいね。」


 さっきまで静かに2人の会話を聞いていたグリムが言いました。


「ああ、そういうことね。どうせアイナが怒らせるようなことをしたんでしょ」


「そんなことはないわよ。そりゃあ、ちょっとはよそ見とかしたかもしれないけど・・・フェリシアったらすぐに怒るのよ。いやになっちゃうわ」


「たしかにあの子は怒りっぽいところがあるからね。それに比べてあんたはマイペースだからさ。ケンカになるのもなんとなく分かる気がするよ。それでもあんたのためを思って一生懸命教えようとしたはずだよ。あんたもそれくらいはわかってやらないといけないね。ちゃんと仲直りしてフェリシアに教えてもらったほうがいいと思うよ」


「おばあちゃんは教えてくれないの?」


 アイナががっかりした顔で言いました。


「一生仲直りしないというなら私が教えてあげるよ。でも、仲直りする気があるなら早いほうが良いよ。そうしないとよけいに気まずくなるからね」


「でも・・・どうやって仲直りしたらいいか分からないわ」


「そんなことは簡単だよ。直接言いにくいのなら手紙を書けばいいのさ」


「おばあちゃんったら変なことを言うのね。私は文字を読むことも書くこともできないのよ。だからこうして教えてもらいに来たんじゃない」


「そんなことは私だってわかってるよ。ちゃんと最後まで話をお聞き。あんたが手紙を書くのを私が手伝ってあげるって言ってるのさ。それならあんたにだって出来るだろう?それともやっぱり直接仲直りするほうがいいかい?」


「そうね。がんばって手紙を書くほうがいいと思うわ」


「そのほうが私もいいと思うね。じゃあ、始めようか。まずはフェリシアに伝えたいことを口で言ってごらん。それを私が文章にするからね」


 アイナは少し考えてからしゃべり始めました。
















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