第3話 とんがり帽子は友情のしるし 後編
「さて、フェリシアたちが迎えにくるまでまだたっぷりと時間があるんじゃ。3人で仲良く遊ぼうじゃないかね」
長老が言いました。
「そうね。じゃあ、天気もいいことだし外に出て遊びましょうよ」
アイナが言いました。
「外?それは止めた方がいいんじゃないかしら。だってほら、その・・・雨が降るかもしれないし」
ルーシーが慌てて言いました。
「とってもいい天気よ」
アイナが外を見ながら言いました。
「確かに今はいい天気だけど、突然雨が降ることだってあるじゃない。それに長老さんは年寄りだから家の中のほうがいいと思うのよ」
「変ね。さっきルーシーは長老さんはとても元気なおじいさんだって言ってたじゃない」
「そ、そうなんだけど・・・えーと・・いつもは元気なおじいさんなんだけど今日は腰が痛いのよ。ね?長老さん」
「そ、そうなんじゃよ。今日は朝から腰が痛いんじゃよ」
ルーシーは長老の演技がへたなのでアイナに気づかれてしまうのではないかと心配していましたが、アイナはまったく気づいていない様子でした。
結局3人は、部屋のなかでゲームをして遊ぶことにしました。それは、トランプにそっくりなゲームでした。
最初はみんなで仲良く遊んでいたのですが、負けず嫌いの長老とルーシーは、どんどん夢中になり、気づいたらルーシーと長老の2人だけでゲームをしていました。つまらなくなったアイナは、フェリシアのところに出かけて行きました。しかし2人ともゲームに夢中になっていてまったく気づいていません。
アイナがたいくつそうに歩いていると、にぎやかそうにしている広場で、フェリシアを見つけました。後ろから声をかけるとフェリシアは、まるで幽霊でも見たかのように驚いて言いました。
「ア、アイナ!何であなたがここにいるの?ちゃんと長老さんの家にいないとだめじゃない。後で迎えに行くと言ったでしょ?」
「だって2人ともゲームに夢中になっててつまんないんだもの」
「何ですって?もう!2人とも大事なことを忘れてゲームに夢中になるなんて信じられないわ!とにかく今すぐに長老さんの家に戻りなさいよ。ほら、早く」
「ここにいてはだめなの?だってこっちのほうが楽しそうなんだもの」
「いいからまっすぐに帰るの!」
フェリシアは無理やりアイナを追い返しました。
アイナはしかたなくとぼとぼと悲しそうに広場を離れました。しかし、長老の家には帰りませんでした。
アイナが向かった先は、グリムの家でした。グリムはアイナを温かく迎えてくれました。
「みんなが私のことを仲間はずれにするのよ。もうみんな私のことをきらいになったのかしら・・・」
「誰もあんたのことをきらいになったりはしていないと思うよ」
「だってフェリシアったらすごく冷たいのよ」
「それは何か理由があるんじゃないのかい?確かにあの子ははっきりと物を言う性格だけど、本当は正義感の強い優しい子なんだよ。付き合いは短いかもしれないけど、あんただってそれくらいのことはわかっていると思ったけどね」
「私だってそう思うわよ。でも・・・」
「もうすぐ仲間はずれの理由がはっきりすると思うよ。大事なことはあの子たちを信じるということさ。もうしばらくここでゆっくりしていくといいよ。そのうちルーシーが大慌てであんたを迎えにくるだろうからね」
グリムの言う通り、ルーシーが大慌てで飛んできました。
「やっと見つけたわ!勝手に外に出てはだめじゃない。おかげでたっぷりフェリシアに怒られたわよ。でも、それはゲームに夢中になってた私たちも悪かったんだけどね。それよりいそいでちょうだい。みんなが待ってるの」
「みんなって?」
「村の人たちみんなよ!アイナが知りたがっていたことがやっとわかるのよ」
「でも・・・」
「どうしたんだい?あんたらしくないじゃないか。さぁ、行っておいで。きっと忘れられない日になるよ」
「ありがとう、おばあちゃん。私、行ってくるわ」
アイナは笑顔でそう言うとルーシーといっしょに出て行きました。
辺りはすっかり暗くなっていましたが、村の広場はとても明るく、たくさんの村人たちがいました。
アイナが広場に行くとみんなが拍手で迎えてくれました。アイナは突然のことで訳がわかりませんでした。
「どう?驚いた?これはあなたの歓迎パーティーよ。あなたがこの村の住人になったことをみんなに報告するの。そしてこの村でみんなと仲良く暮らしていけますようにって祈るのよ。フェリシアたちは村の人たちといっしょにパーティーの準備をしていたのよ。秘密にしていたのは悪かったわ。でもあなたを喜ばせたかったのよ」
アイナはルーシーの話を聞いてとても驚きました。まさかフェリシアたちが自分のためにこんなにがんばっていたなんて夢にも思わなかったからです。
「アイナ、さっきはごめんなさい。パーティの準備がいそがしくて少しイライラしてたの。でもあなたを喜ばせるためにがんばったのよ」
「フェリシア・・・謝るのは私のほうだわ。あなたにきらわれたんじゃないかって疑ってしまったの。ごめんなさい」
「あら、そんなことはいいのよ。気にしないで。それよりもあなたにプレゼントがあるのよ。昨日の夜、私とお母さんとルーシーの3人で作ったのよ」
「おれだって手伝ったじゃないか!」
隣でリックスが抗議しました。
「ああ、そうだったわね。ほんのちょっぴり手伝ってくれたわね。さぁ、アイナ。受け取ってちょうだい。私たちからの友情のしるしよ」
「みんなありがとう。とてもうれしいわ」
そう言ってアイナはフェリシアから何かが入ったきれいな袋を受け取りました。その中には、きれいなワンピースととんがり帽子が入っていました。
「ありがとう。本当にありがとう」
アイナは帽子とワンピースを抱きしめながら、嬉しそうに言いました。
アイナは、フェリシアの家でそのワンピースに着替えると、少し恥ずかしそうにしてみんなの前に戻ってきました。
「どう?似合うかしら」
「とても似合うわよ」
フェリシアとルーシーが声をそろえて言いました。
「ありがとう。これでようやく私もこの村の住人になれた気がするわ」
アイナは嬉しそうに言いました。
「喜んでくれて私も嬉しいわ。私たち、これからも仲良くやっていけそうね。そりゃあ、時にはケンカをすることもあると思うけど、私たち、ずっと友達でいましょううね。もちろん、ルーシーやリックスもいっしょにね」
フェリシアの言葉にアイナは「もちろんよ」と力強く答えました。
村人たちも嬉しそうにそれを見ていました。
「さぁ、ではそろそろパーティを始めよう。まずはわしの挨拶からじゃ。みんなももう知っているとは思うが、新しくこの村で暮らすことになったアイナ・クラークじゃ。さぁ、アイナ。こんどはお前さんが挨拶をする番じゃよ」
突然長老に言われたアイナは少し戸惑いましたが、心を落ち着かせてみんなの前に出て挨拶をしました。
「私はアイナ・クラークです。今日は私のために素敵なパーティをありがとうございます。こんなに良い人たちに出会えて私は幸せです。これからもよろしくお願いします」
アイナの挨拶が終わると村人たちがいっせいに拍手をしました。
「さぁ、音楽じゃ」
長老のかけ声と同時に、楽しい音楽が聞こえてきました。
「ねぇ、アイナ。いっしょに踊りましょう」
アイナは、フェリシアに誘われて陽気に踊りました。
「ねぇ、リックスも踊ってきたら?」
「やめとくよ。踊りよりも食べることのほうが大事だもんね」
「私は踊ってくるわ」
そう言ってルーシーも踊りの輪に入りました。
ずい分おそい時間になりましたが、アイナや村人たちの楽しい時間はまだまだ終わる様子はありません。楽しい音楽と村人たちの笑い声がいつまでも続いていました。




