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メテオモンスター  作者: ナムアニクラウド
第1章 メテオモンスター参上
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第1話 宇宙人は最悪だ

挿絵(By みてみん)


 夕暮れ時。彼は走っていた。彼は人間だ。彼は宇宙人のことはよく知らないが、どうせろくでもない奴らなのだろうと思った。なぜなら、いままさに宇宙人が彼を殺そうと追いかけているのだから。

挿絵(By みてみん)

「はあ、はあ、あいつ、まだ追ってくる……!」

 その宇宙人は見た目には可愛い、小さく白いドラゴンの子供のような姿をしていた。彼には確認する余裕がないが、ずんぐりした体にハニカム模様の腹を持っていた。それがいま、彼に暴力を働かんと息巻いて追ってくるのだ。冷気の息を巻き、短い足からは想像もつかない速さで人間の後を追う。もし追いついたならば途端にその冷気で人間を氷漬けにするつもりなのだろう。さきほどその息を一撃もらい、体がかじかんでうまく走れない。宇宙人は最悪だ。それを体感したことがなかったのが悔やまれる。あんなことをしなければ……このモンスターに気づかれるような行動をとっていなければこんなことにはならなかったのに。


 ……必死に逃げるこの人間は”かなの国”にある彗星の町に住んでいる。その日の朝、人間は朝食をとりながらテレビをつけてニュース番組を見ていた。アナウンサーの女性が落ち着いた声でその日の出来事を話していた。

「彗星の町にメテモンたちがやってきてから今日で一週間になります。人類とメテモンの再会から3年経ち、だんだんとお互いの交流が深まってきていますね。」

 古い言い伝えでは隕石に乗って現れるという宇宙人。さまざまな怪物のような姿をしていることから、彼らは隕石怪物・メテオモンスター、略してメテモンと呼ばれている。ニュースの解説役の男性が続いてこう話す。

「星間戦争の発端を作ったメテモンたちに対して、凶暴なものたちではないのか、なぜ宇宙人に人間星の住居などを分けなければならないのか、など人類側の不満も上がっていますね。彼らを受け入れるという判断を行った王の今後の指揮が注目されます。」

 人類の中には彼らを良く思っていない者も多かった。本来の住処があるのに人間の星にやってきて、しゃあしゃあと住み着くモンスターたち。103年前の星間戦争をけしかけてきたのも彼らであると誰もが昔から伝え聞いている。当時、彼らが突然多くの人間たちを殺す奇襲攻撃を仕掛けてきて、そこから勃発した星間戦争。しかしメテモンは人間より弱かったと聞いている。やがてメテモンたちは降参し、人間星に住み着いた者たちは自分たちの星へ帰ったそうだ。

 そんなメテモンたちがちょうど3年前、涼しい顔をしてふたたび人間の星へやってくるようになったのだ。テレビを見ているこの人間も、彼らを良く思っていない者の一人だった。彼はかなの国の国民の一般的な性質として王のことは信頼しているが、テレビを見ながら、こんなやつらを受け入れるなんて、王は何を考えているんだろう、と思った。しかし時計を見るとアルバイトの時間が迫っていたので、人間はテレビを消して行くべきところへ行ったのだった。


 メテモンに追いかけられながら、人間は思いだしていた。問題はそのあとなんだ。夕方、アルバイトが終わったおれは町のはずれの林を散歩していた。そこで出会ったのだ、あの白いメテモンに。おそらく最近受け入れられたという人たちの一人だろう。そいつは人間に無防備な背中を向けてぼんやりしていた。だからそのままにしておけばよかったんだ。なのにおれは声をかけてしまった。王が進んで受け入れたメテモンたちなのだから、実は優しいものたちなのではないかと思ったからだ。するとそいつは振り返り、おれの姿を見ると目を光らせ、突然冷気の息を吹きかけてきたんだ。

 人間は後悔していたが、とにかく今は敵が疲れて諦めるのを祈って走るしかない。そう思って後ろを向くと、無念にも白いメテモンは大股4歩といった距離まで近づいてきていた。すでに林を抜けて町中に入っており、もう少しで自宅というところだった。人間がついに間近まで迫った危機に1秒、怯むと、そいつはお得意であろう冷気の息を吹きかけてきた。息は勢い良く人間の足を捕らえ、凍結がアスファルトと足をつないで固まってしまった。この距離で届くのかよ、メテモンが人類より弱いなんて嘘じゃないのか!と人間は思った。

 人間はそのまま転んでしまうのだが、このとき、彼は別の誰かが曲がり角から現れる気配を感じた。感じたが、彼はすぐ目の前の脅威に釘付けになった。メテモンは今にも息を吐くぞというふうに、シャーと鳴いて人間を脅かしている。


 直後、曲がり角から現れた丸っこい何かが人間と白いメテモンの間に踊りでた。それは人間ではなかった。ピンク色のだるまのお化けのような形をしていて、その頭は火を髪のようになびかせており、現れるやいなや奇妙な言葉を発音した。

「ファミナ!」

 すると、だるまのお化けの手のひらから火の玉が現れ、宙に浮き、前に飛び、白いメテモンの皮膚にぶつかり、焦がした。白いメテモンは命中した場所を手で押さえてギャーと鳴いた。

「な、な、なん、だ!?」

 人間は混乱した。襲ってきた白いメテモンを攻撃する、ピンク色の……こいつもメテモンなのだろうか?それなのに自分を助けようとしたのか?ドラゴンの氷の息も不思議な力だが、謎の発音とともに現れた火の玉はさらに理解不能だ。

 考えがまとまらないが、人間の目の前には白いメテモンが白旗をあげ、そそくさと逃げていく光景があった。白いメテモンが逃げて行くと、ピンク色の生き物は人間のほうを向いて、人の言葉を話した。

「きみ、大丈夫?凍ってるのは靴だけかな?」

「えっ!?ええと、まあ……ちょっと寒いくらいで……」

「よかった。」

 安心した、というような素振りを見せる謎の生き物。なんだろうこいつは。宙に浮いてるし。彼は人間に自己紹介をする。

「ボクはメテモンのニグニ。」

挿絵(By みてみん)

 やはり彼もメテモンのようだ。しかし、彼は自分を助けてくれた。襲ってくるような素振りもない。人間はあっけにとられながら、もうひとつの疑問を投げかけてみた。

「え……と、さっきの火の玉は一体……?」

「ああ、あれ?ボクって火属性だから火の呪文が使えるんだよね。えっへん。」

「呪文?」

「呪文知らない?メテモンだったら皆知ってるんだけどなー。どう説明したものかなあ。」

 どうやらこのメテモンには敵意がなさそうだと気づいた。人間はやっと安心し、氷漬けになった靴では家に帰れないことに気づいた。

「どうしようこれ。歩けない……」

「あ、こういうことなら任せて。」

 ニグニと名乗ったメテモンはそう言うと、人間の凍った靴に息を吹きかけた。それは人類の息よりだいぶ熱く、氷をみるみるうちに溶かしていった。そのおかげで人間は立ち上がれるようになり、これで当面の不安は取り除かれた、と安堵の息をついた。なるほど、火属性のメテモンだから火の息が吐けるといったところなのだろうな、と思いながら人間が立ち上がると、今度はニグニが人間に訊いた。

「きみの名前は?」

「ああ、そうだった。おれは

「やっぱいいや。とりあえずボク人間星に来たばかりなんだけど住むところを確保してなかったことに気づいたので家貸して。」

「はあ!?!?」

 人間はついキレそうになった。しかしニグニは本気のようで、満面の笑みをして人間を見つめていた。

「いいでしょ?ボク命の恩人だよ?」

「……」

「いやあ困ったなあ。寒いの苦手だから、かなの国の夜を地べたで過ごすのは辛いなあ。」

「……」

 確かに彼は命の恩人だった。ホントは命の恩人じゃないんじゃないかな?と思いたかったが、彼なしで助かるイメージが浮かばなかった。人間は命の恩人が路頭に迷うのを見過ごせるほど無神経ではなかった。無駄に優しかったのだ。

「い……いいよ。」

「オーイエイ!早速行こうぜ!」

「……まあ、はい。」

 人間は立ち上がり、彼と一緒に帰り道につくことにした。ニグニはのほほんとした雰囲気をかもしながら人間のあとに付いていった。宇宙人は最悪だ。命の恩人すら、恩にものを言わせて家を借りようとするやつなのだから。

 だが、人間はメテモンを凶暴な者たちと認識していたので、この敵意のないらしいメテモンが不思議であり、もう少し様子を見てみたいとも思っていた。


 これが人間とニグニの活躍の始まりだ。ちなみに人間が言いそびれた自分の名前は「西東(さいとう) 南北(なんぺー)」という。このおはなしの中で彼が名前で呼ばれることはしばらく無いだろう。

挿絵(By みてみん)

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