問う真実 2
「…突然変異ということもあり得るのでは?」
ソルは無難に返した。
言葉に詰まったゆえの苦し紛れの言い訳でもあった。別に真実を話したところで何か変わるわけでもないが『神様に異世界から連れてこられ自分の創ったオリキャラに転生して、その能力で森を創った』なんて誰も信じてもらえそうにないことを正直に話すのは憚れる。
ソルはとりあえず誤魔化すことにした。
「大体この森に住んでいるからと云って、この森が生まれた理由など知るはずもないだろう」
「…そんなこと有りません」
「どうして?」
「……聞いたからです」
誰に?と続く言葉を出そうとした時、夜にもかかわらず少し開けた窓から小鳥が室内に入り込んできた。
小鳥は二人の上空をぐるりと一回りした後スウェンの肩に停まる。
ピーチチチ、ピチピピッ…
スウェンの目線を合わせ、まるで会話するように囀る小鳥
ソルとの会話を打ち切りスウェンは小鳥の囀りに耳を傾けている様子だ。
「…」
ソルは独り仲間はずれされた気分になり落ち込む。
ただボーっとしているわけにもいかず覚めてしまった残りの夕食を黙々と口に運んでゆく。
虚しい食事があと一匙で終わろうとしていた時、囀りに耳を傾けていたスウェンがソルにようやく向き直った。
「すみません。突然中断させてしまって…」
「別に良い。まだ夕食も食べきっていなかったからな。その間に完食させてもらった」
残り一匙を口に含みソルに答える。
スウェンは申し訳なさそうな表情の後一度肩に停まったままの小鳥に視線を寄こしソルを見る。
「さっきの続きですが、この森を知る者たちから話を聞いたんです。この森の誕生にはソル様が関わっていると」
「森を知る者?…一体誰が…」
「僕が来る以前にこの森に住んでいるのはソル様以外にもいるでしょう?」
(私以外に…?)
ソルは困惑した。ソルには能力で生みだされた森故なのか有る程度の感知が出来る。森の端にゆくにつれてその精度は低くなってゆくためスウェンの存在には気付かなかった背景がある。初めて異世界人と遭遇したのはスウェン以外いない、つまりスウェン以前にこの森に住んでいるのはソル以外いないはずなのだ。
あとは動植物しか生命体がいないはずなのだが…動物?
「もしかして…動物の事を言っているのか」
「はい、そうです。羽耳族は動物、翼を持つ生物の“声”が聞き取れるんです。そのおかげで話を聞くことが出来ました」
スウェンはハッキリと答える。
ソルは項垂れた。何その特殊能力と思った。
砂漠だった時は全然いなかった動物だが鳥だけは数匹程度砂漠を横切っていたのが視界の端で見えていた。その鳥と話せるなら誤魔化しようがない。
「その鳥たちから聞いたのであれば再度私に効かなくても良いではないか」
愚痴るように呟くソルの前でスウェンは静かに目線を下げた。
「確かにそうですが、上空で見ていた鳥たちには大まかな出来事しか知らないんです。ですから確認のためソル様本人にお聞きしたかったのです」
「…はぁ…そうか。なら隠した所で無駄だろう…確かにこの森が生まれた背景には私が関わっている」
「それはどういう関わりなのですか?」
「…鳥たちからはなんと聞いたんだ?」
ソルはスウェンの問いには答えず聞き返した。
スウェンは過多の小鳥を横目に応える。
「“紫がかった黒髪の少年が腕を上下に動かした後と突然森が生まれた”っと」
スウェンの言葉を聞いたソルはスウェンの目の前だというのに両手で顔を覆い腰を曲げて項垂れてしまった。
突然の奇行にスウェンは呆然とした。
(黒歴史パート2-!!!っが見られてたぁあ!!)
ソルは過去の自分の行動にこれほどまでに後悔したことはなかった。
真っ赤になった顔を冷やす間、ひたすら悶えた。