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平凡希望しかし現実苦し  作者: 澤木弘志
第一章 優しき愚者 ~朱ノ篇~
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食事

今年最後の投稿です。

スウェンは立ち止る。

ここに来るまである程度予想はついていた。

でも、予想を上回る程の情景が眼前に広がっていた。


木々から零れる光が溢れ、草木は悠々と生い茂る。見たことのない色とりどりの樹や草花。

まるで楽園のようだと思った。



立ち止って呆けた顔をしているスウェンを横目にソルは疲れた体を休めるべく家へと足を進めた。

家の入口に立って未だ止まっているスウェンを促す。


「こっちだ。早く来い」


ソルの声で我に返ったスウェンは急げ足でソルのもとへと駆けよる。

みたことのないほど立派な大樹が目の前に悠然と佇んでいる。

その中をソルは進む。

慌てて追いかけるスウェンの目にまたも驚きが襲った。


綺麗に整理された室内。

故郷で一番裕福だった長の家と比べるのもおこがましいほど広々としていて、物が揃っている。

きょろきょろとあたりを見渡していたスウェンに突然放り投げられた柔らかいものが顔面を襲う。


「え!?」


「お前の着替えだ。随分汚れているから風呂に入ると良い」


ソルはスウェンに呼びの服を投げて風呂場へと誘導する。

一度水場で丸洗いに近い形で汚れは落としたが臭いや細かな汚れは落とせていなかった。

休憩時に怪我の具合を見たところ傷口もほぼ塞がっていたためひとまず風呂へと直行させることにしたのだ。


今まで風呂というモノを知らなかったのだろうスウェンはあたふたとしながらソルの説明を深迷な顔で聞いてゆく。

説明の中で初めは拒絶の意思が見え隠れしていた。だが鼻が麻痺していて自身の臭いに気付かなかったが、しかめっ面でソルから臭いと言われ渋々ながらお風呂に入ることになった。


ソルはスウェンが風呂に入っている間、ご飯の支度を始める。

移動中は果実で腹を紛らわせてはいたが、如何せんほとんどが水分である果実では腹に溜まらない。

家に帰って漸くまともな食事を取るため、いそいそと準備に取り掛かる。


まずは米を水炊きしておき、その間に火力は弱めにして野菜をいためてゆく。

炒めるのは細かく切ったパプリカと人参。

ご飯が炊けると炒めた野菜と絡め、その中にブツ切りのトマトを加える。

味付けに塩コショウをつけてゆく。

トマトの水分でより柔らかくなったご飯に粉チーズをかけて完成。


器に盛り付け、飲み物は牛乳ならぬ花乳。味は牛乳とほぼ同じでほのかに酸味があるオリジナルな飲み物だ。

材料は全て庭に植えたオリジナル草木で採れたもの。二年の間に幾分か種類が増えていた。


準備を終えると同時にスウェンが風呂からあがる。

ずいぶん時間がかかったようだ。

初めての事で手間取ったのだろう。疲労を取るどころか疲労困憊な様子に呆れてしまった。


そんなスウェンも食事のいい匂いにつられてふらふらとキッチンに寄ってくる。


「食事にしよう」


「…食べてもかまわないのですか?」


「?当り前だろう。食べてもらわなくては困る」


二人分を作ったのだ。腹が減っていてもさすがに食べられない。元々小食なのだ。

スウェンは歓喜したように急いで食卓に付き何かの祈りをささげた後無我夢中で食べ始めた。



よほど腹が空いていたのだろう。

もしかしたら道中の果実だけでは物足りなかったのかもしれない。足りるかどうか不安になりながらもソルもスウェンに遅れて食事を開始した。






諸事情により29日~31日まで投稿が出来ません。

再開は1月1日からになりますので来年もよろしくお願いします。


では、皆様よいお年を!

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