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たこ焼き 八粒堂  作者: さんご


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13/13

番外編 この機械を作った男の話

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

商店街の古い人たちは、ときどきこんなことを言う。


「あの店、昔からあるわけじゃないんだよ」


「え?」


初めて聞く人は必ず驚く。


あの店は、

まるで最初からそこにあったような顔をしている。


しかし実際には――

ある日、突然できた店だった。


それは十年前の、雨の夜だった。


商店街の街灯がポツポツと灯る頃、

一台の軽トラックがゆっくりと入ってきた。


運転していたのは、

三十代くらいの男。


黒いコートを着て、

妙に落ち着いた目をしていた。


彼は商店街の空き店舗の前で車を止めると、

荷台から大きな機械を下ろし始めた。


それが――


あの自動たこ焼き機だった。


隣の八百屋の主人が声をかけた。


「兄ちゃん、何やってんの?」


男は少し笑った。


「店を開こうと思いまして」


「たこ焼き屋?」


「ええ」


八百屋は機械を見て首をかしげた。


「変な機械だな」


男は静かに言った。


「これは時間を焼く機械です。」


八百屋は笑った。


「はは、面白い冗談だ」


だが男は笑っていなかった。


その夜、男は一晩で店を作った。


看板を付け、

電源をつなぎ、

機械を設置する。


すべて終わると、男は機械を軽く叩いた。


すると――


カコン。


一粒のたこ焼きが落ちた。


まだ生地も入れていないのに。


男はそれを見て、満足そうにうなずいた。


翌朝。


商店街の人が店を見に来たとき、

そこにはすでに店長がいた。


今の店長だ。


しかし奇妙なことがある。


誰も店長が来た瞬間を見ていない。


気づいたら、

そこにいたのだ。


そしてもう一つ。


機械を運んできた男は、その日から一度も見られていない。


数年後。


店長に、ある常連が聞いた。


「この機械、誰が作ったの?」


店長は答えた。


「さぁ」


「俺が来たときには、もうあった」


「?」


常連は首をかしげた。


「店長が作ったんじゃないの?」


店長は笑った。


「俺、機械とか苦手でね」


だが。


ある日、店の裏を掃除していた三宅が

古い箱を見つけた。


中には設計図が入っていた。


見たこともない文字。


しかしタイトルだけは読めた。


『時間調理装置 試作型 2054』


三宅は言った。


「2054?」


「未来の年じゃないか」


さらに紙の端には、小さく書いてあった。


『過去に設置することで時間収集を行う』


『目的:未来の時間不足対策』


つまり。


この機械は――


未来の人間が作ったものだった。


その夜。


店長は一人で機械の前に座っていた。


カコン。


たこ焼きが落ちる。


店長はそれを見て、ぽつりと言った。


「今日も時間、集まってるな」


誰もいないのに、

機械が小さく鳴った。


カコン。


もし未来が本当にあるのなら。


この店で消えた時間は、

どこかの未来で――


誰かの人生を少しだけ長くしているのかもしれない。

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