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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第二章:鋼鉄の帝国と腐敗の科学】

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第75話:狂える執刀医、絶たれた神の手

お読みいただきありがとうございます!


広場での一斉救済を終え、ついに帝都宮殿へと足を踏み入れたくるる

しかし、豪華絢爛な回廊の先に待っていたのは、ヘイズ博士の歪んだ教えを狂信的に信じる「魔導医師四天王」の第一刺客でした。


命をただの「魔力回路」と断じる彼らと、一鍼に魂を込める枢。

医療の矜持を懸けた、静かなる、しかし熾烈な死闘が幕を開けます。


日曜15時、ティータイムの更新をどうぞお楽しみください!

 宮殿の重厚な大扉を潜ると、そこには外の喧騒が嘘のような、静謐で、かつ冷徹な空間が広がっていた。大理石の床は鏡のように磨き上げられ、壁には歴代の「偉大なる医師」たちの肖像画が並んでいる。だが、その肖像画のすべての瞳が、ヘイズ博士の魔力によって「監視カメラ」と化しているのを、くるる翡翠眼ひすいがんは見逃さなかった。


「……枢さん、気をつけて。……この廊下、壁の裏に無数の魔導手術器が仕込まれています。……一歩でも踏み外せば、生きたまま解体されるような、不吉な魔力の揺らぎを感じます」

 リナが杖の先を光らせ、周囲を警戒する。カザンも槍を構え、いつでも飛び出せるよう全身に闘気を纏っていた。


「……フフ、……野蛮な魔族を連れて、神聖なる『賢者の回廊』を汚すとは。……枢、君はやはり、あの頃から変わっていない。……効率と秩序を愛せない、医学界の汚物だよ」


 回廊の先、純白の診察着を着た一人の男が、冷たい笑みを浮かべて現れた。

 魔導医師四天王の一人、「解剖のアルバス」。

 彼はかつて、生きている動物や時には人間さえも「魔力回路の観察」と称して解体し、その成果をヘイズに捧げてきた狂気の医師だった。


「アルバス……。あなたの『効率』とは、救える命を選別し、無価値な者を切り捨てることだった。……それは医学ではなく、ただの虐殺です。……今もあなたの手からは、拭いきれない血の匂いが漂っていますよ」


「……何とでも言え。……私にとって、生命とはただの精密な魔導機械に過ぎん。……壊れた部品は取り替え、劣った回路は焼き切る。……それこそがヘイズ先生の提唱する『完全なる人体』への近道なのだ! ……死ね、時代遅れの鍼師!」


 アルバスが指を鳴らすと、回廊の壁から無数の魔導メスが飛び出し、全方位から枢へと襲いかかった。それは物理的な刃ではなく、触れた者の「経絡」を直接切断するために設計された、魔力そのものの刃。一つでも掠めれば、その部位の魔力循環は永遠に失われる。


「……カザン、リナ、下がってください! ……これは私の『往診』です!」


 枢は往診バッグから、漆黒の輝きを放つ「短鍼」を十数本、一度に指の間に挟んだ。

「……経絡を切るというのなら、あなたのその『歪んだ指先』から治療しましょう。……アルバス。……あなたのその異常な執着は、脳の扁桃体から流れる気が、過剰な魔導刺激で腐敗していることが原因です」


 枢の体が独楽のように回転し、飛来する魔導メスをすべて鍼の先で弾き飛ばした。火花が散り、金属音が回廊に響き渡る。

「……聖鍼流、制圧術――『陽渓ようけいの封印』!」


 アルバスが次の術を放とうと腕を上げた瞬間、枢の放った三本の鍼が、彼の両手首にある**『陽渓』**のツボを、寸分の狂いなく貫いた。


 ツボとしての『陽渓』は、親指を立てた時にできる窪みに位置し、手首の動きだけでなく、頭部の熱を下げ、高ぶった感情を鎮める要所だ。だが、魔導手術によって自身の神経を無理やり拡張していたアルバスにとって、そこを封じられることは、全身を動かす「操作桿」を破壊されるに等しかった。


「……な、何をした!? 手が……指が動かん! ……私の、私の完璧な指先が……!」


「……動かないのではありません。……あなたの脳が、これ以上の『罪』を重ねることを拒絶し、回路を閉じたのです。……アルバス。……あなたは命を機械だと言いましたが、機械には不可能なことが人体にはあります。……それは、自らを変えるという意志の力です」


 枢はアルバスの懐に肉薄し、驚愕で固まる彼の胸元……**『膻中だんちゅう』**に、最後の一刺しを打ち込んだ。


「……ここを鎮めます。……あなたの狂気の源、怒りと独善の気を……すべて大地へ還しなさい」


 アルバスの全身から、どす黒い気が霧散していく。彼の瞳から狂気が消え、代わりに深い虚脱感と、自身が犯してきた罪への恐れが滲み出した。

「……あ、……私は、一体……。ヘイズ先生の……あの光の、美しさに……見惚れて……」


 アルバスはその場に崩れ落ち、もう動くことはなかった。死んだのではない。枢の鍼によって、魔導に汚染された人格が一時的に「機能停止」し、深い眠りにつかされたのだ。


「……一人目です。……ヘイズ博士。……あなたの築き上げた『偽りの医療』を、一人ずつ丁寧に、根元から摘出していきます。……待っていてください、……最後は、あなた自身の心臓に、私の全霊の鍼を届けてあげます」


 枢の翡翠眼は、廊下の奥で更なる罠を構える「四天王」の次なる影を捉えていた。

 一歩、また一歩と、聖鍼師の歩みが都の呪いを解き明かしていく。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


魔導医師四天王、最初の刺客「解剖のアルバス」を圧倒的な医術で鎮めたくるるさん。復讐として殺すのではなく、医者として「狂気の根源」を治療するその姿に、カザンたちも改めて畏怖を感じているようです。


今回登場した**『陽渓ようけい』**。

手首の要所であり、頭痛や目の充血、そして「興奮状態」を鎮めるのに非常に効果的なツボです。指先を酷使する外科医にとっての急所を、見事に射抜きましたね。


次回、第76話は本日**【18:00】**に更新予定です!

次なる刺客は、植物と毒を操る美貌の医師。

宮殿の温室を舞台に、枢の「薬学知識」が試されます!


「アルバスの指を封じる展開、スカッとした!」

「枢さんの『医者としての正論』が重い……!」


と思っていただけましたら、ぜひ**【評価(☆☆☆☆☆)】**やブックマークをよろしくお願いします!

18時の更新も、どうぞお楽しみに!

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