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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第八章:南海灼熱諸島と炎の熱邪(ねつじゃ)】

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第620話「銀爪城の決戦!胸悶・刺痛と膻中の開胸」

『足三里』の刺鍼によって全身の虚脱と足の重怠さを吹き飛ばし、薬草原野で貴重な生薬を手に入れた往診チーム。満を持して白銀霊峰の最頂部にそびえ立つ悪の城「銀爪城」へと突き進みます。しかし、城門を突破した一行を待ち受けていたのは、銀爪会総統「金毒帝こんどくてい」が展開した絶対禁忌の陣法「鬱血金毒陣うっけつこんどくじん」でした。狭く閉ざされた玉座の間で、胸を押し潰すような不快な重圧と激しい動悸、そして心臓を針で刺されるような刺痛に襲われるガストンたち! 逃げ場のない閉塞感と胸の痛みに苦しむ一行を救うため、枢先生の閃く銀鍼と東洋医学の深遠な智慧が、胸中の滞りを打ち破ります!

 白銀霊峰の最頂部、万年雪に抱かれた険しい岩壁の上にそびえ立つ黒鉄の砦「銀爪城」。


 往診チームは薬草原野で調合した生薬を携え、厳重な城門を突破して、ついに敵の本拠地である巨大な玉座の間へと足を踏み入れた。


 「ここが銀爪会の本拠地か……! 禍々しい気が充満していやがるぜ……!」

ガストンが戦斧を肩に担ぎ、玉座の間を見回しながら警戒の眼光を光らせる。


 「ええ……! 枢先生、奥に誰かいますわ!」

ネネが弓に矢を番え、玉座の影を見据える。


玉座に鎮座していたのは、全身に黄金の重装甲を纏った銀爪会総統「金毒帝こんどくてい」であった。

金毒帝が冷酷な笑みを浮かべ、手に持った杖を床へ力強く突きたてる。


「フハハハ! よくぞここまで辿り着いたな、おめでたい往診チームのドブネズミどもよ! だが、貴様らの旅もここまでだッ! 鬱血金毒陣、発動ッ!」


ゴゴゴゴゴ……ッ!


玉座の間の巨大な鉄門が重々しい音を立てて閉ざされ、室内の壁面からドロリとした濃縮金毒の紫煙が噴き出した!

密閉された室内に充満する重圧な毒気と、逃げ場のない極限の緊張感が往診チーム全体を包み込む。


その瞬間――ガストン、ネネ、哭、そしてハクとリナの胸元に、まるで巨大な岩石をズドンと叩きつけられたかのような激しい圧迫感と刺痛が走った!


「くっ……!? む、胸が……胸の中が押し潰されそうに苦しい……ッ! 息が……息が吸えねぇ……ッ!」

ガストンが戦斧を取りこぼし、胸元を両手で固くかきむしりながら膝をつく。


「はぁっ……はぁっ……! 心臓が割れるみたいにドクドク暴れて……胸の奥がチクチク刺されるように痛いわ……ッ!」

ネネもまた顔の血の気を完全に失い、激しい動悸と胸の痛みに耐えかねてその場に横たわった。


「……皆さん、落ち着いて大きく吐くことだけを意識してください……! これは強い緊張と毒気によって胸中の気が塞がり、心血(心臓の血流)が途絶えた『胸陽不振きょうようふしん心脈瘀阻しんみゃくおそ』です!」


くるるがすばやくガストンとネネの胸元(胸骨の中央)に手を当てる。

胸元の中央が石のようにカチコチに硬直しており、脈を診ると渋(じゅう・ザラザラと滞り、血流が極めて悪い脈)と促(そく・動悸を伴う不規則で速い脈)を呈していた。


「東洋医学において『胸は宗気(そうき・呼吸と循環を司る基本的なエネルギー)が集まる海』とされています! 閉塞された空間での恐怖や強烈なストレス、毒気によって胸の陽気が滞ると、気の巡りが停止して『気滞血瘀(血の滞り)』が引き起こされます。これが**『胸が押し潰されるように苦しい(胸悶)、息苦しい、動悸が止まらない、胸の奥が針で刺されるようにチクチク痛む(刺痛)、不安感で押し潰されそうになる』**という心胸部の緊急症状を引き起こすのです!」


「ハハハハ! 苦しかろう! この鬱血金毒陣は人間の心を締め上げ、心臓の鼓動を破裂させて死に至らしめる絶対殺戮の陣! 呼吸すらできぬまま、絶望の中で息絶えるがいいッ!」

金毒帝が杖をかかげ、胸を押さえて動けない一行へ向けて、濃縮金毒の弾丸を連続して放ち始める!


「くそ……っ! 胸が詰まって……手が上がらねぇ……ッ! 息が……吸えねぇんだ……ッ!」

ガストンが窒息しそうな苦しみの中で身をもがき、迫りくる毒弾を避けられない。


「……相棒! 胸の中央の『気の海』を開けッ! 胸が開けば……このような抑圧など一瞬で吹き破れるッ!」

隠密・コクが自らの胸痛と激しい動悸に耐えながら、身を挺して金毒帝の毒弾を短剣で弾き返す!


「任せてください、哭さん! 胸中に溜まった邪気を払い、途絶えた宗気を一気に解放します!」

枢の手が往診鞄から取り出したのは、胸の滞りを速やかに開通させ動悸と痛みを鎮める「寛胸理気かんきょうりき活血止痛かっけつしつう極上銀細鍼」であった!


「ハク、リナ! 胸の圧迫感を和らげ、心臓の血流を滑らかにする『薤白がいはく・ガイパク』と『檀香だんこう・サンダルウッド』の開胸理気アロマを、全員の胸元へ広範囲に全開照射しなさい!」

「了解です枢先生! 開胸理気アロマ、胸元へ全開照射ッ!!」


甘く高雅で温かな生薬の香りが胸元を優しく包み込み、硬く固まっていた胸中の緊張がスーッとほぐれ始める!


「胸中に集まりし宗気よ、塞がりし気海を開き、命の鼓動を整えたまえッ! 任脈の気会・八会穴……解放ッ!!」

シュパッ! シュパッ! シュパッ――!!


枢の手から放たれた銀鍼が、苦しむガストン、ネネ、哭、ハク、リナ、そして自らの**「左右の乳頭を結んだ直線の中央、胸骨の真上にある凹み」**へ、寸分の狂いもなく的確に水平刺(皮膚に沿わせて優しく刺鍼する手技)で打ち込まれた!

打ち込まれたのは、身体の全ての気が集まる「気会きえ」であり、胸の圧迫感、息苦しさ、動悸、胸痛、ストレスによる溜め息、母乳の出にくさを即座に解消する東洋医学至高の開胸特効穴――『膻中だんちゅう』!


ジュワァァァァァァッ!!!!!


「――つ……あぁぁぁぁぁぁぁッ!?!? 胸の中に詰まっていた重い岩が……一瞬で粉々に砕け散ったみたいに、新鮮な空気がドッと肺いっぱいに流れ込んできたぞ……ッ!」

ガストンが大きく胸を広げて深呼吸し、激しい動悸と刺痛から解放されて勢いよく立ち上がった!


「胸のチクチクする痛みが消えたわ! 心臓のバクバクがスッと落ち着いて、全身に血が巡っていく……ッ!」

ネネが胸元に手を当て、満開の笑顔で力強く弓を引き絞る!


「『膻中』は、体の前面の中央を通る『任脈にんみゃく』に所属し、全身の気が集まる『気会きえ』です! 東洋医学において『膻中は臣使の官、喜楽出づ』と称され、心の防衛器官(心包)の代弁者として、ストレスや毒気による胸の圧迫感、息苦しさ、動悸、心臓周辺の刺痛、パニック状態を即座に和らげ、胸を開いて深い呼吸と安らぎを取り戻す絶対の開胸理気名穴なのです!」


枢が力強く指を突き出す!


「な……何だとぉぉぉッ!? 我が鬱血金毒陣の絶望的な胸の重圧が、胸の真ん中のツボ一つで完全に打ち破られたというのかぁぁぁッ!?」

金毒帝が驚愕に顔を歪め、後退る。


「ガストンさん、ネネさん! 深い呼吸を取り戻したその胸で、金毒帝を倒し、霊峰に平穏を取り戻しましょう!」

「おうよッ! 胸がすーっと晴れ渡って、力がいくらでも湧いてくるぜぇぇぇッ! 決着をつけようぜ、金毒帝ッ!」

ガストンが大きく息を吸い込み、戦斧に渾身の陽気を込めて躍り出た!


「豪力・絆の太刀割り――開胸破邪・全開一閃断ッ!!!!」


ドカァァァァァァァンッ!!!!!!!!


ガストンが解き放った渾身の一撃が玉座の間を揺らし、金毒帝の重装甲と「鬱血金毒陣」を完全に粉砕した!

崩れ去る悪の陣法。城の窓から黄金の朝日が差し込み、白銀霊峰を覆っていた金毒の邪気が綺麗に消え去っていく。


「やりましたね、皆さん……! 霊峰に平穏が戻りました!」

枢の温かな言葉に、往診チーム全員が歓声をあげるのだった。

 第620話をお読みいただき、ありがとうございました!


敵の本拠地「銀爪城」の決戦において、鬱血金毒陣の密閉された重圧と毒気によって激しい胸の圧迫感(胸悶)、息苦しさ、動悸、胸の刺痛に襲われたガストンさんたちを、枢先生が『膻中だんちゅう』の刺鍼で見事に救い出し、見事に金毒帝を打ち破る感動のクライマックスをお届けいたしました!


 さて、今回は作中で枢先生がガストンさんたちの胸の重圧と痛みを解消した「胸陽不振・心脈瘀阻(胸の気が滞り、息苦しさや動悸、胸の痛みが走る病態)」の病理に基づき、日常で「ストレスや緊張で胸がギュッと締め付けられる、息苦しくて深い息が吸えない、胸がもやもやして溜め息ばかり出る、パニックや不安で心臓がバクバク動悸がする、胸の真ん中が固く凝っている時」に、胸を開いて気と血の流れをスムーズにし、深い安らぎをもたらしてくれる絶対の名穴をご紹介します。


 今回登場した『膻中だんちゅう』は、胸の真ん中を通る骨(胸骨)の上で、左右の乳頭を結んだ直線が交差する中央の凹みにあります。押すと少し響くような独特のツボ感がある場所です。


 東洋医学において『膻中』は、全身の気が集まる「気会きえ」であり、ストレスや感情の抑圧が最も溜まりやすい場所です。ここをやさしく刺激することで、胸のつかえを解き放ち、自律神経を整えて心臓の負担を和らげ、深い呼吸を取り戻すことができます。


 ケアする場合は、中指の腹を『膻中』に当て、円を描くように優しく撫でるか、息を吐きながら痛気持ちいい強さで5秒間じわーっと優しく押します。手のひら全体で胸の中央を温めながらさするのも非常に効果的です! これを深呼吸に合わせて5回ほど試してみてください!

胸の奥のつかえがスーッと解けて息が楽になり、心がすーっと落ち着いてきますよ!


 次なる第621話は、明日**8月17日(月曜日)のお昼【12:00】**に更新を予定しております!


白銀霊峰の戦いを終えた往診チーム。感謝に包まれる村々を後にし、新たな旅路へと向かう帰還編! 12時の更新をどうぞお楽しみに!

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