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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第八章:南海灼熱諸島と炎の熱邪(ねつじゃ)】

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第615話「銀嶺村の平穏!過労の胃苓と足三里の健脾」

旧鉱道の崩落と古代金毒地脈の暴走という未曾有の危機を、筋の要穴『陽陵泉』の刺鍼で見事に打ち破った往診チーム。白銀霊峰の鉱脈を蝕んでいた毒気は立ち去り、山裾の銀嶺村には再び穏やかで清らかな風が吹き抜け始めます。首領・金剛を失った銀爪会は完全に瓦解し、長年脅かされていた町民たちの笑顔が戻りました。しかし、過酷な激闘と毒気の影響は、チームを影から支え続けたハクとリナの体調を人知れず蝕んでいました。激しい疲労と食欲不振、お腹の張りに苦しむ仲間を救うため、枢先生の心温まる往診と東洋医学の智慧が再び光を放ちます!

 白銀霊峰の澄み切った青空に、温かな日差しが降り注いでいた。


 旧鉱道の崩落現場から無事に生還した往診チームを待っていたのは、銀嶺村の村長をはじめとする大勢の村人たちの歓声と感謝の嵐であった。


 「枢先生! ガストンさん! ネネさん! 哭さん! 本当に……本当にありがとうございました! 長年、鉱山を牛耳り、毒気で村を苦しめてきた銀爪会が崩壊し、川の水も透き通った綺麗なお湯に戻りました!」

村長が涙を流しながら、枢のの手を両手で固く握りしめる。


 「ガハハ! 村長、礼ならこの先生とみんなに言ってくれ! 俺たちは当たり前のことをしただけさ!」

ガストンが胸を張り、豪快に笑い飛ばす。村の広場には宴の準備が進められ、香ばしい山菜や肉の焼ける匂いが漂っていた。


だが、宴の賑わいから少し離れた診療所の木陰で、二つの小さな影がぐったりと倒れ込むように腰掛けていた。

往診チームの調剤と術式サポートを完璧にこなしてきた医療精霊、ハクとリナである。


「うぅ……リナちゃん、なんだか急にお腹がパンパンに張って……大好きな焼き肉の匂いを嗅いでも、気持ち悪くて吐き気がしてきちゃうよ……」

ハクが下腹部を押さえながら、力なく羽を小さく震わせる。


「私もですハクさん……。金毒の邪気を防ぐバリアを張り続けて、緊張が解けた途端に全身のダルさがどっと出て……お腹が重くてグーッて鳴るのに、何も受け付けないんです……」

リナも青ざめた顔で胸元を押さえ、小さく丸まっていた。


「……ハク、リナ。顔色がとても悪いですね。見せてご覧なさい」


二人の異変にいち早く気づいたくるるが、優しく声をかけながら二人の前に膝をついた。

小さな手首にそっと指を当て、脈を診る。さらに二人のお腹に手を触れると、胃のあたりから下腹部にかけて、ポチャンポチャンと水分が停滞し、冷たく硬く張っているのが伝わってきた。


「脈は濡緩(じゅかん・湿気と気の不足を示す弱く重い脈)……お腹には著しい『水滞すいたい』と『脾胃気虚ひいききょ』の反応が出ています。過酷な金毒の気との戦いによる極度の精神的緊張と疲労(過労)に加え、鉱道の冷気と湿気が胃腸を直撃したことによる『脾胃不和ひいふわ水穀不化すいこくふか』です」


枢は優しく二人の頭を撫でながら説明を続けた。


「東洋医学において『脾胃(ひい・胃腸)』は、食べたものを消化・吸収し、全身に必要な気・血・水を生成する『後天のこうてんのもと』と呼ばれる最も重要な消化器官です。過度の疲労や冷え、緊張が重なると、この脾胃の働きが急激に低下します。すると、消化能力が落ちて食べたものがお腹に停滞し、激しい胃の不快感、食欲不振、腹部満満感、全身の強い倦怠感、吐き気を引き起こすのです」


「ゲホッ……枢先生、俺もなんだか急にお腹が重くなってきやがった……。激闘が終わってホッとしたら、胃が底なしに重くて力が入らねぇんだ……」

ガストンも戦斧を置いて木陰に歩み寄り、どっかと腰を下ろして苦笑いを浮かべた。


「緊張の糸が切れたことで、全員の体に隠れていた激しい疲労が胃腸の機能低下として表面化したのですね。ですが安心してください。お腹の働きを根本から劇的に呼び覚まし、消化吸収を高めて全身の元気を一気に取り戻す至高の名穴があります」

枢の手が往診鞄から取り出したのは、温かな黄金色の輝きを放つ「健脾和胃けんぴわい温中降逆おんちゅうこうぎゃく純金太鍼」であった。


「まずは温かな生薬の香りで胃腸の湿気を取り除き、消化の気を巡らせましょう。ハク、リナ、少し休んでいてくださいね。僕がアロマを調合します」


枢は往診鞄から『蒼朮そうじゅつ』と『陳皮ちんぴ』の上質な精油を取り出し、空間に優しく漂わせた。

爽やかで甘苦い生薬の香りが広がり、滞っていた胃の重苦しい不快感がスーッと和らいでいく。


「胃の気を降ろし、全身の消化吸収と元気を無制限に引き出す……足の陽明胃経の合穴・四総穴……解放ッ!!」

シュパッ! シュパッ! シュパッ――!!


枢の手から放たれた金鍼が、苦しむハク、リナ、ガストン、ネネ、哭、そして自らの**「膝のお皿(膝蓋骨)のすぐ下にある外側の凹みから、指幅4本分(3寸)真っ直ぐ下におりたスネの骨(脛骨)の外側キワ」へ、温かな気とともに優しく打ち込まれた!

打ち込まれたのは、全ツボの中でも最も著名であり、胃腸の不調、食欲不振、全身の過労を劇的に回復させる東洋医学最高の健康長寿・健脾名穴――『足三里あしさんり』!


ジュワァァァァァァッ!!!!!


「――ふぁ……あぁぁぁぁぁッ!?!? お腹の奥から……ぽかぽかと温かい気が溢れてきて、胃の重たさがスッと消えていくよ……ッ!」

ハクが目を輝かせ、お腹を押さえていた手を離してパッと顔を上げた!


「嘘みたい……! 吐き気とお腹の張りが消えて、お腹の底からキュ〜ッとお腹が空く良い音が鳴り出しました……ッ!」

リナもほっぺたに赤みを差し、元気よく羽ばたいて見せる!


「おおっ……! 胃の底に溜まっていた重たい塊がサッと溶けて、全身にエネルギーがぐんぐん巡り出してきたぞッ!」

ガストンが自分のお腹を叩きながら、跳ね起きるように立ち上がった!


「『足三里』は、足の陽明胃経そくのようめいいけいに所属し、胃の気が直接注入される合穴ごうけつであり、四総穴しそうけつの一つとして『お腹の病はすべて足三里に求めよ』**と古来より称えられてきた絶対の名穴です! 胃腸の消化運動を高めて食欲不振、胃痛、腹痛、吐き気、下痢を解消するだけでなく、全身の免疫力と体力を劇的に底上げする東洋医学至高の養生・補気要穴なのです!」


枢が優しく微笑みながら、ハクとリナの頭を再び撫でる。


「さあ、お腹の調子も整いました。村の皆さんが作ってくださった温かいスープとご馳走を、みんなで美味しくいただきましょう!」


「わーい! 枢先生、ありがとう! 僕、村の特製山菜スープ、おかわりしてたくさん食べるよ!」

ハクとリナが弾けるような笑顔を取り戻し、往診チーム全体に温かな和みの時間が戻ってきた。


しかし、村の賑やかな宴の最中、霊峰の風に乗って新たな急報をもたらす一羽の伝書鷹が、枢の肩へと舞い降りたのだった――!

 第615話をお読みいただき、ありがとうございました!


激闘を終えた安心感から激しい胃腸の不調と過労に襲われたハクちゃんやリナちゃん、ガストンさんたちを、枢先生が『足三里あしさんり』の刺鍼と優しいケアで見事に救い出し、元気と食欲を取り戻す温かなエピソードをお届けいたしました。


 さて、今回は作中で枢先生がチームの胃腸の不調や過労を解消した「脾胃不和・水穀不化(消化機能が落ちてお腹が張り、食欲がなくなる病態)」の病理に基づき、日常で「疲れが溜まって胃が重い、食欲が出ない、お腹が張って苦しい、胃もたれや吐き気・胸やけがする、夏バテで全身がだるい時」に、胃腸の働きを根本から劇的に活性化し、体力と元気をみなぎらせてくれる絶対の名穴をご紹介します。


 今回登場した『足三里あしさんり』は、膝のお皿(膝蓋骨)のすぐ下にある外側の凹みに人差し指を当て、指4本分(人差し指・中指・薬指・小指)下に向かった位置で、スネの骨の少し外側の凹みにあります。


 東洋医学において『足三里』は、松尾芭蕉が『おくのほそ道』で灸を据えながら旅をしたことでも有名な、世界中で最も親しまれている万能の健康・消化器特効穴です。胃腸の蠕動運動を促して消化吸収を高めるだけでなく、全身の血流を良くして過労や自律神経の乱れを劇的に整えてくれます。


 ケアする場合は、親指の腹を『足三里』に当て、スネの骨に向かって少し力強めに痛気持ちいい強さで5秒間じわーっと押し込みます。これを息をゆっくり吐きながら左右10回ずつ試してみてください!

お腹がスーッと軽くなり、全身に温かなエネルギーが湧き上がってきますよ!


 次なる第616話は、本日**8月14日(金曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております!


伝書鷹がもたらした新たな往診依頼! 白銀霊峰を越えた先に待つ新たな町と試練とは――!? 21時の更新をどうぞお楽しみに!

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