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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第六章:過労の覇権と再生の経絡】

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第567話「五感の覚醒と、魂の血脈」

知覚統括ノーシスが展開した「無感覚のアネステシア・ネットワーク」により、痛みや疲労のみならず、生きている感覚(知覚)そのものを削ぎ落とされた往診チーム。五感が麻痺し、瞳から光が消えゆく仲間たちを救うため、枢先生は心身の覚醒と魂の温もりを司る聖鍼『少衝しょうしょう』をその手に取り、自らの生命力を賭した「開竅醒神かいきょうせいしん」の決死の治療に挑みます。

 「……痛みも悲しみも感じない世界。それは平和でも福祉でもありません。ただの『生ける屍の檻』です!」


 枢の叫びが、音を吸い込む無感覚の回廊に固く響いた。


 しかし、ノーシスの放つ青白い「不仁ふじんの波形」はますます密度を増し、空気の振動すら奪っていく。ガストンは膝をついたまま焦点の合わない目で天井を見上げ、哭は短剣を握る手の感覚を失って指が緩みかけている。ジークたち地下住民に至っては、立っていることすらできず、まるで人形のようにその場に崩れ落ちていた。


 (意識が薄れていく……。五感が、脳へと至る経絡の回路が、冷たい氷で閉ざされていくようだ……!)


 枢自身の指先も、急速に感覚を失いかけていた。白い医療着の感触も、手に握る鍼の重みも消えようとしている。だが、彼の内なる白銀の気は、決して途絶えることはなかった。心臓の深遠なる奥底――東洋医学において「君主の官」と称される『しん』の領域で、人間の魂の灯火が激しく脈動していたからだ。


 「東洋医学において、心は『神(しん:意識や精神活動)』をぞうし、全身の血脈を統括する。心が死なない限り、知覚が途絶えることはない……!」


 枢は、感覚の消えかけた右手の親指と人差し指で、聖鍼『少衝』を握り直した。

そして、躊躇うことなく――自らの左手のお手元の小指、爪の生え際にある最重要穴『少衝』へと、深々と刺し込んだ!


 パシィィィンッ!!!!


 「――くっ……あぁぁぁぁッ!!」


 鋭い刺激が、枢の脳幹をダイレクトに貫いた。

自らの身体へ与えた「強烈な覚醒の痛撃」。その一刺しによって、閉ざされかけていた枢の五感の回路が一瞬で爆発するように開いた(開竅:かいきょう)。全身の血脈が劇的に熱を帯び、目蓋の裏に眩いばかりの紅蓮の光が吹き荒れる。


 「バカな……!? 自らの経絡に強烈な痛みの激痛を与えて、我が『無感覚の波形』を力づくで相殺しただと!?」


 天井の球体義体の中で、ノーシスの合成音が初めて焦りを含んで揺れた。


 「痛むからこそ、人間は傷ついた自分に気づくことができる! 悲しいからこそ、人は誰かの痛みに寄り添い、手を差し伸べることができるのです!」


 枢は覚醒した全身の気血を、手にした聖鍼へと注ぎ込んだ。

『少衝』から溢れ出た紅蓮の気は、心の熱(心火)そのものであり、凍りついた自律神経を溶かす「生命の体温」であった。


 「哭、ガストンさん! 魂の目を開きなさい!」


 枢は閃光となって駆け抜け、崩れ落ちそうになっていた哭とガストンの手の小指――その『少衝』のツボへと、超高速の連打で聖鍼の尖端を叩き込んだ。


 「……がっ!? 痛ぇぇぇぇッ!!」


 「うおぁぁぁッ!? な、なんだぁ、この痺れるような激痛はッ!?」


 哭とガストンが飛び起き、同時に激しい息を吐き出した。

彼らの瞳に、一瞬で生き生きとした命の光が蘇る。枢の放った熱い気の刺激が、ノーシスによって遮断されていた「心」と「脳」の連絡通路を力づくでこじ開け、麻痺していた知覚神経を極限まで強制覚醒させたのだ。


 「……臨床的に見て……めちゃくちゃ痛ぇぞ、相棒! だが……手のひらに、短剣の柄の冷たさが戻ってきやがった!」


 哭が刃を握り直し、鋭いギラつきをその目に宿す。


 「おうよ! 身体の底から、かーっと熱い血が沸き立ってくるのが分かるぜ! 俺は今……生きてるぞッ!」


 ガストンが力強く胸を叩き、豪快な咆哮を回廊に轟かせた。


 「ハク、リナ! ジークさんたちを! 手の小指、少衝のツボを強く揉みつまみなさい! それが知覚を呼び戻す『開竅かいきょう』の鍵です!」


 「はいッ!!」


 ハクとリナが駆け寄り、動けなくなっていたジークたちの小指の爪のキワを、全力で強くキュッと揉みつまんだ。

「あぐっ……!?」「息が……吸える……!」「感覚が、戻ってきた……!」

地下の遺棄労働者たちが次々と悲鳴を上げながら正気を取り戻し、自分たちの生きている実感に涙を流しながら立ち上がっていく。


 「不条理だ……! 不効率極まりない! なぜ痛みを喜ぶ!? なぜ苦痛を伴う生を肯定するのだ! 痛みなど、消し去るべき無駄なエラー(雑音)だ!!」


 ノーシスが狂乱し、球体から伸びる数十本の触手を怪しく発光させ、回廊全体のバイオ・ケーブルから極大の「全神経遮断パルス」を放とうと圧力を高め始めた。


 「雑音ではありません。これは、私たちが生きているという『命の証明』です!」


 枢は紅蓮の気を纏い、ノーシスの球体義体へとまっすぐに跳躍した。


 「哭、ガストンさん! 彼の触手が繋がる『神経の結びノード』を断ちなさい!」


 「 clinical に見て、あの青いコードが『知覚の強奪ルート』だ! 刻んでやるぜ!」


 哭が影の刃となって空間を滑り、ノーシスと壁を結ぶバイオ・ケーブルを一瞬で十数本切り刻んだ。

さらにガストンが「オラァァッ!」と叫びながら戦斧を振り下ろし、残りの太い配管を根元から粉砕する。


 「な……我がネットワークが切断される……!? 感覚が……フィードバックしてくる……!?」


 外部ネットワークを断ち切られたノーシスは、自らが遮断し、溜め込んでいた無数の労働者たちの「痛み」や「過労の悲鳴」のエネルギーを、逆流する形で自らの義体の中に直接引き受けることとなった。


 「あ……、あぁぁぁッ!? 熱い……痛い……! これが……これが人間の……『感じる』ということなのか……ッ!?」


 ノーシスの球体義体が激しく火花を散らし、内部から高熱の蒸気を吹き出し始める。自らが「無駄」として切り捨てていた知覚の濁流に飲み込まれ、彼の制御回路が崩壊を起こし始めたのだ。


 「――『少衝』、その閉ざされた心を開き、生命の温もりを思い出しなさい!」


 枢の手に握られた聖鍼が、ノーシスの義体の中心部――人間の脳に相当する『精神の中枢』へ、真っ赤な一筋の閃光となって突き刺さった。


 ドドドドドォォォンッ!!!!


 幾重にも重なる暴走音が回廊を揺らし、ノーシスの巨大な球体義体が、清らかな紅蓮の光に包まれながら静かに地上へと降下し、停止した。

回廊を覆っていた不気味な青白い光と無感覚の波動が潮が引くように消え去り、あとには温かい、血の通った「生きた空気」が満ち渡っていく。


 「……見事だ、聖鍼師……。痛みを知る者こそが……本当の温もりを……与えられるというのか……」


 ノーシスの義体のレンズから不気味な光が消え、静かな稼働音だけが残された。

第三の最高幹部ノーシスを撃破し、知覚を取り戻した往診チーム。彼らの前で、回廊の最深部へと続く「最後の巨大隔壁」が、重々しい地鳴りと共に滑り出していく。


 その先にあるのは、新大陸のすべてを病ませる元凶――ホストシステム『マザー・ギガ』の真の心臓部。

往診チームの過労の覇権を巡る激闘は、ついに最終局面へと突入するのだった。

 第567話をお読みいただき、ありがとうございました。


今回は、第三の最高幹部・知覚統括ノーシスが放つ「無感覚の網」に対し、枢先生が自らの身を削って『少衝』の刺鍼を施し、五感と知覚を強制覚醒(開竅醒神)させることで仲間たちの魂と身体の感触を取り戻す、感動の熱血治療と逆転劇をお届けいたしました。痛みを「命の尊いサイン」として肯定し、人間の温もりを取り戻した往診チームの絆を、どうぞ最後まで見届けてください。


 さて、今回は作中の往診チームのように「過度なストレスや思考のしすぎ、長時間のスマホ・PC作業によって脳が完全にオーバーヒートし、頭がボーッとして意識が遠のいたり、感情が麻痺して無気力・無感情な状態(不仁・不感症)に陥ってしまった時」、あるいは「急な眩暈やショックで意識が途切れそうになった時」に、脳の知覚野を一瞬で強制覚醒させ、澄み切った明晰な思考と温かい気持ちを瞬時に取り戻してくれる、指先の最高緊急覚醒穴をお届けします。


 今回ご紹介するのは、作中で枢先生が自ら刺鍼して意識を醒ました、小指の爪のキワにある名穴『少衝しょうしょう』です。


場所は、**手のお手元の小指にあり、爪の生え際の内側(薬指側)の角から、わずかに1ミリほど離れたところ(爪を立てて押すと、ピリッと脳まで響く鋭い痛みがあるところ)**にあります。


東洋医学において、ここは「手少陰心経てしょういんしんけい」の井穴であり、人間の意識や精神活動を司る『しん』の働きを最も素早く呼び覚ます『開竅かいきょう』の超最重要拠点です。疲労やストレスで知覚が麻痺している時は、この『少衝』の気が途絶えています。ここを適切に刺激することで、作中の枢先生が覚醒の刺鍼を行ったように、脳の知覚野に強烈な覚醒のシグナルが送られ、どんよりと曇っていた意識が一瞬でシャープに冴え渡ります。


ケアする場合は、反対の手の親指と人差し指で小指の爪の生え際を挟み、爪を立てるようにして「キュッ」と強くつまみ揉むのを左右交互に5回ほど繰り返してみてください。目が覚めるような刺激を与えることで、ノーシスの無感覚空間を打ち破った枢先生たちのように、一瞬で意識の霧が晴れ、生き生きとした明晰な心身を取り戻すことができますよ。


 次なる第568話は、本日**7月21日(火曜日)の夜【21:00】**に更新を予定しております。いよいよ開かれた最深部の扉。そこに鎮座するホストシステム『マザー・ギガ』の衝撃の真実とは!? どうぞお楽しみに!

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