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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第六章:過労の覇権と再生の経絡】

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第564話「排泄統括の冷徹と、沸騰する水毒」

地下の廃棄労働者たちを率いるジークを治療し、心強い味方に迎えた枢先生一行。彼らはギガワークスの真の心臓部であるホストシステム『マザー・ギガ』へと向かうため、さらに深く陰鬱な地下プラントの奥深くへと進撃します。しかし、その行く手を阻むように現れたのは、地下世界の環境維持と「不良品の処分」を徹底的に司る、ギガワークス第二の最高幹部――執行役員『排泄統括・ヴァルカン』でした。重く澱んだ水毒をさらに超高圧で圧縮し、肉体を内部から破壊する「湿熱しつねつ」の恐怖の病理が往診チームを襲います。

 ジークの案内により、往診チームは地下重工業都市のさらに深部、鉄錆の巨塔が林立する「排水セクター」へと足を踏み入れていた。


 頭上からは、地上で使われた大量の魔導エネルギーの残り滓が、ドロドロとした赤黒い廃水となって巨大な側溝へ滝のように流れ落ちている。空気は生温いままさらに温度を上げ、ただ湿っているだけでなく、まるで沸騰した泥の中にいるような、不快な熱気と重苦しさが肌をじっとりと包み込んでいた。


 「……clinical に見て、ここの空気は完全にイカれてるぜ。息をするだけで、胸の奥が熱いヘドロで満たされていくみたいだ」


 哭が胸を押さえ、不快そうに顔をしかめた。


 「ええ。これは湿気(湿邪)に猛烈な熱(熱邪)が結びついた、東洋医学で最も油断ならないとされる『湿熱しつねつの邪気』です」


 枢は周囲の澱んだ湿熱の霧を見つめ、白銀の瞳を厳しく光らせた。


 「湿邪が熱を帯びると、経絡の中でドロドロに粘り気を持ってこびり付き、なかなか体外へ排出されなくなります。それが体内に長期間滞留すると、内臓、特に『膀胱ぼうこう』や『大腸』に激しい炎症を起こし、全身を内側から腐敗させる『湿熱下注しつねつかちゅう』の病理を引き起こすのです」


 「ハハハ! さすがは東洋の聖鍼師、病のメカニズムをよく理解しているではないか!」


 突如、排水配管の巨大なジャンクションの上から、金属が擦れ合うような不敵な笑い声が響き渡った。


 蒸気の霧を切り裂いて姿を現したのは、全身を強固な耐熱・耐酸性の黒鉄の鎧で固めた、巨漢の男だった。その背中には、何十本もの太い高圧ホースが接続されており、鎧の隙間からは常に沸騰した赤黒い蒸気がシュウシュウと噴き出している。


 「私の名はヴァルカン。ギガワークス本営・排泄統括エグゼクティブ・ディレクターである。この地下に落ちてきたエラーどもを完全に融解・処理し、マザー・ギガの健全な排泄システムを維持するのが私の『業務』だ!」


 「ヴァルカン……! まだそんな無意味な業務を続けるつもりですか! あなたたちのシステムは、すでに地上の拠点を失い、崩壊しつつあるのですよ!」

.

 ジークが怒りを込めて叫び、手にした工具の槍をヴァルカンへと向けた。


 「崩壊? バカを言うな、下層民め。地上など、マザー・ギガという巨大な頭脳が栄養を摂取するための『口』に過ぎん。脳と心臓がこの地下に健在である限り、ギガワークスは不滅だ。能率の落ちた細胞(お前たち)を排泄(処分)し、プラントの圧力を一定に保つ。それだけでこの世界は回り続けるのだ!」


 ヴァルカンがその巨大な両腕を前に突き出すと、背中のホースから、超高圧に圧縮された沸騰廃水の奔流が、往診チームに向けて一斉に放射された。


 「危ねえ! ガストン、防ぎきれるか!?」


 「任せとけぇ! だが、この熱さは尋常じゃねえぞ!」


 ガストンが再び大地の気を込めた新しい鉄盾を構え、前面に強固な障壁を展開する。

しかし、ヴァルカンが放つ「湿熱の濁流」は、ただの熱水ではなかった。盾の障壁に触れた瞬間、水分が爆発的に沸騰して凄まじい湿気となり、ガストンの盾の隙間を潜り抜けて、彼の皮膚へと直接まとわりついた。


 「ぐあっ……あ、熱ぃッ!? 腹の底が……急に激しく灼けつくように痛む……!」


 ガストンが突然、腹部を押さえてその場に膝を突いた。彼の顔面からはダラダラと冷や汗が流れ、その経絡は下腹部(下焦)のあたりで急激に真っ赤に充血し、気血の巡りが完全に目詰まりを起こしていた。ヴァルカンの湿熱邪は、防護を透過して体内の水分を瞬時に「毒性の強いヘドロ(湿熱下注)」へと変貌させ、内臓に急性の炎症を引き起こしたのだ。


 「ガストンさん! ――哭、ハク、リナ! ガストンさんを馬車の影へ! これ以上の湿熱の吸入は、腎の機能を完全に破壊します!」


 「クソッ、 clinical に見て、あの鎧のホースの弁を止めねえと、ジリ貧だぜ!」


 哭が影の衣を纏ってヴァルカンへと肉薄しようとするが、周囲の湿熱の霧が視界を奪い、さらに吸い込む熱気によって哭の呼吸も徐々に荒くなっていく。


 「ハハハ! 苦しめ、地上の不純物どもが! 私の排泄プラントの圧力の中で、ドロドロに溶けて地脈の錆となるがいい!」


 ヴァルカンはさらに高圧の弁を開き、排水セクター全体の温度と湿度を急速に上昇させていく。往診チームの全員が、下腹部の鈍痛と、足腰が焼けるような重だるさに襲われ、一歩も動けない窮地に追い詰められていった。


 (下腹部に猛烈に充満する、湿気と熱の滞り……。これを力づくで抑え込もうとしては伝統医学の理に反します。むしろ、下方の『水門すいもん』を劇的に開放し、このドロドロに沸騰した毒水を、一気に体外へと利尿・排泄させて洗い流さねばなりません!)


 枢は朦朧とする意識を銀の意志でつなぎ止め、往診鞄の最も深い底から、一本の、透き通るような白銀の輝きを放つ聖鍼『陰谷いんこく』を抜き放った。

それは、体内の水分と熱のバランスを最も厳格に司る「足の少陰腎経しょういんじんけい」の合水穴ごうすいけつ。下半身に溜まった最悪の湿熱を、清らかな水の流れに変えて一気に排泄するための、究極の「利水清熱りすいせいねつ」の鍼。


 「ヴァルカン、あなたの言う『排泄』は、ただの破壊です。本当の排泄とは、生命が自らを健やかに保つための、最も神聖な『浄化の営み』であるべきです!」


 枢の指先で、聖鍼『陰谷』が冷涼な絶対零度の光を放ち、周囲の湿熱の霧を凍らせるようにして輝いた。

暗黒の地下プラントに渦巻く沸騰する水毒と、すべてを洗い流さんとする聖鍼師の「清熱利湿」の死闘が、ここに激突するのだった。

 第564話をお読みいただき、ありがとうございました。


今回は、地下の第二の最高幹部である排泄統括ヴァルカンが登場し、すべてを重く灼き切る「湿熱しつねつ」の邪気によって、ガストンをはじめとする往診チームが内側から激しい炎症(湿熱下注)に追い詰められる、緊迫の展開を描写いたしました。効率のために人間の排泄や浄化の機能を歪めるギガワークスに対し、枢先生が聖鍼『陰谷』を以てどのように本物の「利水浄化」の奇跡を起こすのか、これからの激闘をどうぞご期待ください。


 さて、今回は作中のガストンのように「生温い高湿度の環境や、アルコール・脂っこいものの摂りすぎ(湿熱)によって、下半身や下腹部にドロドロとした余分な水分と熱が溜まり、尿が濃くなって排尿時にピリピリとした痛みや残尿感(尿路炎症)を覚えたり、下腹部が灼熱するように重痛く張り、足の裏や膝の関節が熱を持って激しくむくんで痛む時」に、下半身の『水門』を劇的にクリアに開放し、溜まった湿熱のヘドロをおしっことして一気に体外へ洗い流して、内臓の炎症を劇的に鎮めてくれる足の最高名穴をお届けします。


 今回ご紹介するのは、膝の内側の裏側にある、腎の働きを高めて水分を浄化する名穴『陰谷いんこく』です。

場所は、膝を軽く曲げた時に、膝の裏側の内側(親指側)に浮き出る2本の太い腱(半腱様筋腱と半膜様筋腱)のちょうど間にある、深い筋肉のくぼみの中にあります。


東洋医学において、ここは「足の少陰腎経しょういんじんけい」の合水穴ごうすいけつであり、体内の水液を統括する『腎』の水分調整機能を最もダイレクトに発動させる重要な拠点です。湿熱の毒が下半身に溜まっている時は、この『陰谷』の周囲が異常に熱を持って硬く強張り、軽く指で押すだけでもズーンと目の奥に響くような強い痛みを感じます。ここを適切に刺激することで、作中の枢先生が聖鍼『陰谷』を構えたように、膀胱や腎臓の熱(炎症)が劇的に尿として排泄され、下腹部の激しい不快感や、下半身の熱いむくみが驚くほどすっきりと解消されます。


ケアする場合は、膝を軽く曲げた状態で、反対側の手の親指以外の4本の指で膝を後ろから包むようにし、中指か薬指の腹をツボに当てて、膝の芯に向かってじわーっと優しく、5秒間押し上げるのを左右交互に10回ほど繰り返してみてください。ここを優しく揉みほぐすだけで、ヴァルカンの湿熱の波動を打ち破る枢先生たちのように、体内の不要な熱と水分を速やかに洗い流し、驚くほど軽やかで清らかな心身を取り戻すことができますよ。


 次なる第565話は、明日**7月20日(月曜日)の【12:00】**に更新を予定しております。ヴァルカンの超高圧湿熱を前に、枢先生がガストンと地下住民たちに施す驚愕の「即効利水治療」とは!? どうぞお楽しみに!

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