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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

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502/619

第502話「黒水の源流!枯渇した霊泉と岩肌の変色」

火曜日のお昼休み、皆様の日々の営みの合間にお届けするのは、病魔の「根源」へと肉薄していく第502話です。

本日正午も、皆様の大切な息抜きの時間に、確実な物語の続きをお届けいたします。


昨夜21時の更新では、最重症の「熱入営血ねつにゅうえいけつ」に陥っていた領主ギルバート卿に対し、枢先生が首の後ろの要穴「大椎だいつい」へ清熱の銀鍼を刺入。シオンの冷涼な魔力との同調により、体内にこもった猛烈な熱の内圧を劇的に引き下げ始めました。

今昼描かれるのは、一命を取り留めた領主の口から語られる、黒岩島を襲った「異変の始まり」。

単なる流行病ではない、島全体の環境を根底から汚染している真の病巣の正体が、ついに明らかになります。お昼のひとときに、謎が紐解かれる clinical な展開をどうぞお楽しみください。

 「……はぁ、はぁ……っ、おお……。頭の芯を焼き尽くそうとしていた、あの悍ましい熱が……引いていく……」

 ベッドに横たわるギルバート卿の口から、今度は濁りのない、確かな生気を宿した吐息が漏れた。

 シオンの清涼な魔力を乗せた、くるるの「大椎」への一鍼。それは、燃え盛る大火事に冷徹な清流を注ぎ込むかのように、領主の脳と血脈を蝕んでいた高熱を劇的に鎮めてみせた。首筋の黒い斑疹はんしんも、気の滞りが通じたことで、心なしか赤みを帯びた健常な皮膚の色へと戻り始めている。


「まだ熱の根元が消えたわけではありませんが、これで意識を失う危険は去りました。ギルバート卿、少しお話しできますか」

 枢が銀鍼を丁寧に抜き、卿の胸元に優しい手つきで毛布をかけ直す。


「ああ……。恩人よ、かたじけない……。何を聞きたいのだ?」

ギルバート卿は、案内役の島民に支えられてゆっくりと上体を起こした。その瞳には、先ほどまでの絶望ではなく、微かな希望の光が宿っている。


「この『黒熱病』が島に広がり始めた、最初のきっかけは何だったのですか。この規模の熱毒が空気中にこれほど濃厚に滞留するには、必ず明確な『発生源』があるはずです」

枢の鋭い問いかけに、ギルバート卿は苦渋に満ちた表情で深く、重い溜息をついた。


「……始まったのは、半月ほど前のことです。この黒岩島の中央には、古くから島民たちの命を支え、いかなる病をも退けると伝わる『白真の霊泉はくしんのれいせん』という水源がありました」


「霊泉……。大気や大地の魔力を豊富に含んだ、天然の良質な水源ですね」

シオンが魔導書にその名を素早く書き留めながら、真剣な眼差しで先を促す。


「そうだ。その泉の水は、島民の飲み水であると同時に、島の農作物や家畜を育てるすべての命の根源だった。だが……ある夜、島を不気味な微振動が襲った翌朝から、その霊泉の様子が一変してしまったのだ」

ギルバート卿は、思い出すだけでも忌々しいと言わんばかりに、身震いをひとつした。


「水の色が……ドロドロとした『焦茶色』に変色し、硫黄が腐ったような凄まじい悪臭を放ち始めた。私たちはすぐにその水を飲むのを禁じたが、時すでに遅かった。泉に近い集落の者たちから順に、次々と原因不明の高熱を出し、肌に黒い斑点を浮かべて倒れていったのだ。彼らは一様に『身体の奥が燃えるように熱い』と言い残して……」


「なるほどねぇ。それで、先生がゆうべ助けたあの白銀の鷹も、その水をどこかで口にするか、あるいは浴びてしまったわけだ」

ハクが片眼鏡の奥の目を細め、納得したように顎を撫でる。


「ええ。そして、その汚染された水源から立ち上る『熱毒の気』が、この島の閉鎖された防壁のせいで外へ逃げ場を失い、霧となって島全体を覆ってしまった……。これが、黒熱病の正体です」

枢は立ち上がり、リナが開けてくれた窓から、遠く島の中央にそびえる険しい黒岩の山頂を見つめた。


「水は東洋医学において、五臓の『じん』を養う最も重要な物質です。その源流が熱毒に冒されれば、島民全員の『陰液(体内の潤い)』が根底から干からびるのは当然のことわりです。――皆さん、治療の方向性が決まりました」


「先生、まずはその泉のところへ行くんだね!?」

ネネが往診鞄をギュッと抱きしめ、やる気に満ちた顔で枢を見る。


「はい。患者たちの熱を鍼で下げるのはあくまで一時的な応急処置。根源である水源の『毒』を清めて流さなければ、この島の病根は断ち切れません」


「フッ、面白くなってきたじゃない。私の銃が、大地の毒気相手にどこまで通用するか試してあげるわ」

リナが愛用の魔導銃のシリンダーを軽快な音とともに回転させ、不敵に微笑む。


「俺のこの頑丈な身体なら、多少の毒気なんか跳ね返して進めるぜ! 先生、案内は俺に任せろ!」

ガストンが大きな胸をドンと叩いた。


「ギルバート卿、私たちは今から山頂の霊泉へ向かいます。島民の皆さんには、部屋の窓を少しだけ開けて換気をし、できる限り白米の重湯などで体内の水分を補うようお伝えください」

枢の言葉に、領主と案内役の島民は、深く、何度も頭を下げた。


 往診チームは領主館を後にし、不気味な悪臭の霧がますます濃くなる黒岩山の登山道へと足を進める。

 命の源たる水を取り戻し、島を包む巨大な熱毒を穿つため――枢先生たちの、臨床の最前線となる厳しい山岳踏破が、今ここに始まるのだった。

 第502話「黒水の源流!枯渇した霊泉と岩肌の変色」を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

.

 火曜日のお昼、新しい一日の活力を得るひとときに、黒岩島を襲った疫病の物質的な「根源」である霊泉の汚染と、そこへ向けて迷わず舵を切る往診チームの勇敢な姿を描かせていただきました。

病の「枝葉(症状)」を抑えつつ、同時に「根本(原因)」を叩きにいく、東洋医学の『標本同治ひょうほんどうち』の思想に基づいた clinical な展開を感じていただけていれば幸いです。


 今回、枢先生が「水は五臓の『じん』を養う」と指摘した、東洋医学における水と体液の重要な関係について解説いたします。


 東洋医学において「腎」は、生命力の源である「せい」や、身体を潤して冷却水としての役割を果たす「腎陰じんいん」を蓄える極めて重要な臓器です。

この腎を健やかに保つために不可欠なのが、日々口にする「清らかな水(水穀の精微)」です。作中の黒岩島のように、生活のすべてを支える水源が「熱毒」によって汚染されてしまうと、それを直接・間接的に取り込んだ人間の体内では、冷却水(陰液)が急激に枯渇し、体内の陽気が制御を失って暴走(陰虚火旺:いんきょかおう)します。これが、島民たちを襲った「身体の奥が燃えるような高熱」の真のメカニズムです。環境の汚染がそのまま人体の五臓の破綻へと直結する様子を、壮大なスケールで提示する展開となっています。


 現代の皆様にとっても、デスクワークや気温の変化によって、気づかないうちに体内の水分(陰液)が失われ、頭痛や微熱のような「熱籠ねつこもり」が生じることがあります。お昼休みには、ぜひ冷たすぎない常温のお水や麦茶をこまめに補給し、五臓の「腎」と体内の冷却システムを常に潤す養生を心がけてみてください。


 悪臭立ち込める黒岩山を登り、ついに霊泉の病巣へと近づく往診チーム。そこで彼らを待ち受ける、大地の異変の真実とは。


次なる第503話は、本日火曜日の【21:00】に更新予定です。

一日の仕事を終えた夜のリラックスタイムに、大地の病巣へ挑む物語の続きをどうぞお楽しみに!

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