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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

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第390話:アッパー・グラビティの鍼灸往診、重圧の民を「支柱の身柱鍼」で空へと解き放て

凍土に春を届けた枢先生一行を乗せたシオンの魔導飛空艇が辿り着いたのは、雲海を突き抜け、太陽に最も近い場所で孤独に浮かぶ「アッパー・グラビティ」でした。

そこは、厳格なる法皇イノセンティウスが、自らの重力魔導「ジャッジメント・プレス」によって、下界のすべてを「罪」として押し潰そうとする天空の監獄。

大陸に足を踏み入れた瞬間、通常の十倍を超える重力が全身を襲い、不浄と見なされた民たちは、地面に這いつくばったまま顔を上げることさえ許されていませんでした。


「おやおや。シオン。この大陸の空気は、あまりに誇り高く、そしてあまりに重すぎますね。ガストン。膝をついてはいけません。重力に負けるのは、体重のせいではなく、心が下を向いているせいなのですから。大陸の皆さん。そんなに地面を睨みつけていては、首を痛めてしまいますよ。私が今、その押し潰されそうな背筋、一鍼の支柱で真っ直ぐに伸ばしてあげましょう」


枢先生は、一歩踏み出すごとに石畳が砕けるほどの重圧の中、一本の剛金鍼を、傲慢なる天空の玉座へと構えました。

18時、夕方の往診。アッパー・グラビティ、身柱の鍼灸往診。

聖鍼師・枢。銀鍼一本で、世界の重圧を完治させます。

 夕陽が雲海を真っ赤に染め上げ、影が長く伸びる時刻。

 アッパー・グラビティの広場では、数千の民が強引な重力魔法によって石畳にめり込むように平伏させられていた。

 「法に背く者は、その自重によって自らを裁け」

 法皇の冷酷な布告が、物理的な質量となって彼らの脊椎をミシミシと軋ませ、肺から空気を力ずくで押し出している。

 それは信仰による統治ではなく、抗えぬ物理法則による「強制的な服従」だった。


 「先生、数値が危険域です! 重力加速度が通常の十倍を維持! 人々の心肺機能は圧迫され、肋骨が内側に食い込み始めています! 経絡のメインストリートである『督脈とくみゃく』が完全に押し潰され、気が末端まで届いていない! このままじゃ、あと数分で全員の背骨が砕けて、肉の塊になっちゃいます!」


 ガストンが、重力で歪み始めた計測器を、両手で必死に支えながら叫ぶ。

 シオンが黄金のフラスコを六十個、六芒星の陣形を描くように一斉に砕き、一行の周囲に「重力のベクトルを水平方向へ強制的散乱させる、超高圧反重力触媒」を極大展開した。


 「枢、私の触媒でもこの重圧を完全に消すことはできない! 法皇の魔力は、この大陸の核そのものと同期しているんだ。君が彼らの『生命の支柱』を内側から強化し、自力で重力を弾き返す弾力を与えなければ、この大陸ごと雲海の下へ叩き落とされるぞ。……。やるんだな。この重圧の世界で、君の鍼で『立ち上がる勇気』を証明するんだな?」


 「もちろんです、シオン。おやおや。大陸の皆さん。辛かったでしょう。見上げることを禁じられ、ただ泥を舐める日々は。ですが、もう安心してください。空が遠いのは、あなたが低い場所にいるからではありません。あなたの『柱』が、少しだけ休んでいたからなのです。今、私がその折れかけた背中の芯、一刺しの剛毅で貫いてあげましょう」


 くるるが、一歩ごとに足元の石が粉砕されるほどの重圧の中、背筋を一点の曇りもなく伸ばしたまま、広場の中央へと進み出る。

 彼の指先に挟まれた一本の剛金鍼――『支柱しちゅう』が、法皇の重力波動を自身の「気」の力学反転回路に取り込み、天を突くような上昇気流へと変換しているのだ。


 枢は、全身の骨格を支え、精神の強さを司る胸椎の第三番目を見据えた。


 ――ドォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!


 一刺し。

 枢は村の代表である若者の背中、心身を支える中心の柱――『身柱しんちゅう』へ、不屈の意志を込めた剛金鍼を刺入した。

 二刺し、三刺し。

 続いて、大地の揺らぎに負けない腰の『大腸兪だいちょうゆ』、そして天を仰ぐ力を司る首の**『天柱てんちゅう』**へと、重力を切り裂くような鋭い手技で鍼を打ち込む。


 「おやおや。前を見て、胸を張りなさい。あなたは、踏みつけられるために生まれてきたのではないはずですよ」


 枢の鍼から放たれた波動が、民たちの督脈を支配していた重力魔導を、内側から押し返す強力な「斥力せきりょく」へと転換していく。

 シオンの反重力触媒が枢の気と共鳴し、広場を覆っていた絶望の重圧が、一瞬で「軽やかな浮遊感」へと書き換えられた。


 フワッ……、パキンッ!!


 大陸を縛っていた重力の鎖が砕け、石畳にめり込んでいた人々が、まるで羽が生えたかのように軽々と立ち上がった。

 押し潰されていた肺が大きく開き、数万人の民が一斉に、澄み切った天空の空気を深く吸い込んだ。


 「あ、……ああ、……。軽い。……。身体が、……。……、自分の意志で、真っ直ぐ立っていられる! 俺、……俺、空を見上げてもいいんだ! 法皇の重圧に、……負けずに立っていられるんだ!」


 若者が天に向かって拳を突き上げ、それに応えるようにして、大陸中に自由の咆哮が響き渡った。


 「先生、……。バイタルが、かつてないほど安定しています! 圧迫されていた督脈が、……。……、先生の気を支柱にして、ダイヤモンドよりも強固な精神の軸を形成している! 先生の鍼が、……。……、物理法則による独裁そのものを『完治』させちゃったんだ!」


 ガストンが、民たちが軽やかに躍動し、雲海の上で自由を謳歌する光景を見て、枢の背中に、世界を支える真の守護者の姿を見た。


 「もう大丈夫ですよ。あなたの背筋が伸びている限り、どんな重圧も、あなたを跪かせることはできませんから」


 枢の処置は、物理的な圧迫から生命を解放し、自立する誇りを取り戻させる、鍼灸師としての「支柱」の往診だった。


 「バ、バカナッ。……。万物を地面に固定するあの十倍重力の魔導結界を、……。……ただ数本の鍼による督脈の構造再編だけで、……物理現象として無効化してしまったというのか!! コレガ、完全復活した枢と、シオンによる、世界の重みさえも完治させる『天秤の往診』だというのか!!」


 ガストンは、夕闇の天空で一人、重力を物ともせず静かに佇む枢の姿に、神の如き威厳を感じた。


 枢は、剛金鍼を静かに引き抜き、自由を取り戻したアッパー・グラビティの街並みを見守った。


 「シオン。天空の往診、良い手応えでしたね。おやおや。……。ですが、雲を突き抜けた最上層の神殿では、まだ自分の『正義』を質量に変えて、世界を握りつぶそうとしている法皇が、怒りに震えながらこちらを睨んでいますよ」


 最上層。法皇イノセンティウス。

 彼は自らを「世界の中心」と定義し、すべての質量を一点に集約させる「ブラックホール魔導」を起動しようとしていた。


 「ふん、……。……枢。いよいよ重力崩壊の往診だな。……。……自分が重すぎて身動きが取れないことに気づかない老害に、…….……。本物の『身の軽さ』というものを、教えてやろうじゃないか」


 第390話。

 聖鍼師・枢。

 彼は重力を消したのではない。

 重圧に耐えうる「不屈の柱」を、人々の背中に打ち立てたのだ。

 天空の夜が訪れ、一行はついに法皇が待つ「極重力の祭壇」へとその歩みを進める。

 聖鍼師一行。

 21時、夜の往診は、法皇イノセンティウス、傲慢の魔人との「脊椎覚醒の完治」へと突入する。

5月7日(木)18:00、天空の民に自由の直立を還した「支柱の身柱鍼」を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


今回、物理的な重圧を完治させるために枢先生が意識した術式を解説します。

まず、全身の骨格維持と気の循環を劇的に強化するための起点とした、胸椎の要穴**『身柱しんちゅう』への支柱穿刺。枢先生は、アッパー・グラビティの民を「重度の圧迫骨折と精神的拘束にさらされた巨大な患者」として診立て、その核心を突くことで、外からの重力を跳ね返す内圧を一気に高めました。


次に、大地の揺れ(環境の変動)に左右されない強固な土台を作るためのアンカーとした、腰の『大腸兪だいちょうゆ』。このポイントを気の安定路とすることで、枢先生とシオンは、民たちの立ち上がる力を完治させることに成功したのです。

最後に、常に上を向き、未来を見据えるための視界を確保するための最終回路とした、首の『天柱てんちゅう』。この往診を経て、枢先生は天空の大陸に、再び「自立と誇り」を取り戻しました。


本日の最終更新、第391話は【21:00】**に予定しております。


極重力の祭壇。そこでは、すべての質量を吸い込み、光さえも逃さない「ブラックホール」へと変貌した法皇イノセンティウスが待ち受けていました。枢は、その過剰な質量を一瞬で「無」へと還し、法皇を元の「地面に足をつける一人の老人」へと還すための「脊椎覚醒の完治」に挑みます。

「おやおや。法皇陛下。そんなに重くなっては、自分自身の言葉さえ届かなくなってしまいますよ。シオン。このお方のエゴ、少しばかり密度が高すぎるようです。私の鍼で、その澱んだ質量を、広い世界へと還してあげましょうか」


21時、夜の往診。極重力の祭壇、脊椎覚醒の鍼灸往診。

聖鍼師・枢。銀鍼一本で、傲慢な法皇を完治させます。どうぞお見逃しなく。

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