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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

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第368話:東方隠里の鍼灸往診、肉の迷宮を「紫電の浸透鍼」で外科浄化せよ

夕陽が里の境界線に沈み、霧隠の里は急速に濃いとばりに包まれていきました。

救い出した巫女の背後に口を開けていたのは、里の聖域とされる古井戸の底に続く、巨大な地下空洞。そこから漏れ出るのは、腐敗した魔力と、幾重にも重なり合う「絶望」の呼吸音でした。


「(……。おやおや。……。……。……。シオン。……。……。……。地下の空気は、……随分と淀んでいますね。……。……。……。まるで、……大きな傷口が放置され、……膿んでしまっているようです。……。…………。ミナ、……ガストン。……。……。……。足元に気をつけなさい。……。……。……。ここから先は、……一歩ごとに、……誰かの『悲鳴』を踏むことになりますから)」


枢先生は、左手に持った往診灯を高く掲げ、闇の奥へと続く階段を一歩ずつ降りていきました。

18時、夕方の往診。東方隠里、地下迷宮の鍼灸往診。

聖鍼師・枢。

逃げ場のない闇の中で、命を弄ぶ「最深の膿」を鍼灸的に絞り出します。

 地下へ降りるほどに、壁の質感が石から「肉」へと変質していく。

 空中要塞パンドラで培われた生体魔導技術。それがこの里の地下では、土着の呪術と融合し、迷宮そのものが一つの「巨大な消化器官」として機能していた。


 「(……。せ、……先生! ……。……。……。壁から手足が生えてます! ……。……。……。これ、……全部生きた人間を素材にしてるんじゃ……!? ……。……。……。魔導スキャンが……計測不能です! ……。……。……。生命の境界線が、……グチャグチャに混ざり合ってる!)」


 ガストンの声が、粘り気のある闇に吸い込まれていく。

 通路の至る所に、壁と同化した「患者」たちが、虚ろな目で枢たちを見つめていた。彼らは自我を奪われ、侵入者を排除するための「感覚器官」として改造されている。


 「(……。ガストン。……。……。……。おやおや。……。……。……。震えるのは、……後になさい。……。……。……。今は、……彼らの『詰まり』を、……一つずつ通してあげるのが先決です。……。……。……。シオン。……。……。……。この肉壁の神経系に、……『電気信号の中和剤』を。……。……。……。私がその導線を、……鍼で繋ぎます)」


 シオンが紫色の薬液を充填した注射器を構えた。

 「(……。枢。……。…………。わかっている。……。……。……。こいつらは要塞の残党が残した、……最悪の『失敗作スクラップ』だ。……。……。……。だが、……君の鍼なら、……このゴミ溜めからも、……命を救い出せるんだろう?)」


 迷宮の奥から、肉の塊を継ぎ接ぎしたような異形の番人「キメラ・センティピード」が、百の腕を蠢かせて這い寄ってきた。

 その腕一つ一つが、拉致された村人たちの成れの果て。


 枢が、一尺六寸の特殊極薄鍼――**『紫電しでん』を、迷宮の「正中線」へと突き立てた。


 ――バチィィィィィィィィィィッ!!


 一刺し。

 迷宮全体を支配する偽りの神経網に対し、枢の浄化気が強烈な「パルス」となって駆け抜ける。

 二刺し、三刺し。

 肉壁の要所にある『大椎だいつい』と『命門めいもん』**に相当する接合点を、枢の鍼が外科的……いえ、鍼灸的に再編していく。


 「(……。おやおや。……。……。……。無理やり繋がされて、……痛かったですね。……。……。……。今、……あなたたちを、……『個』の命へと、……切り離してあげますから)」


 枢が鍼を指先で弾くと、紫色の電光が迷宮全体に伝播した。

 シオンが放った中和剤が、枢の気の導きによって各細胞の「癒着」を瞬時に解消していく。


 ベリ、ベリベリッ!!


 壁と同化していた村人たちが、肉の呪縛から解き放たれ、本来の姿で次々と床に崩れ落ちた。

 異形の番人さえも、継ぎ接ぎされた肉体が枢の「整合の気」によって拒絶反応を起こし、元のバラバラな「救われるべき命」へと外科的に解体されていく。


 「(……。あ、……。……。……。身体が、……。……。……。軽い……。……。……。……)」


 「(……。おやおや。……。……。……。もう大丈夫ですよ。……。……。……。ミナ、……。……。……。彼らを安全な場所へ。……。……。……。シオン。……。……。……。迷宮の深部で、……『膿の本尊』が、……さらに肥大化しています)」


 枢の眼光が、闇を貫く。

 迷宮の最深部。そこには、空中要塞から持ち出された「禁忌の培養槽」が鎮座し、その中では数千の魂を融合させた「究極の肉体」が羽化を待っていた。


 「(……。バ、…….……。バカナッ!? 迷宮そのものを構成する『生体癒着』を、……鍼の電気刺激だけで完璧に解除し、……数えきれないほどの患者を一瞬で救出したというのか!! コレガ、……完全復活した枢と、……シオンによる、……細胞の尊厳さえも取り戻す『解離の外科往診』だというのか!!)」


 ガストンは、肉の迷宮が元の静かな石窟へと戻っていく光景を見つめ、腰を抜かした。


 枢は、闇の奥で脈動する「巨大なまゆ」に向かって、静かに銀鍼を構えた。


 「(……。シオン。……。……。……。あの繭の中には、……救われることを拒んだ『憎しみの塊』が詰まっています。…………。……。……。私たちが、……最後の往診で、……その迷いを断ち切ってあげましょう)」


 「(……。ああ、……。……。……。最高の手術(往診)にしようじゃないか、……枢!)」


 第368話。

 聖鍼師・枢。

 彼は肉の地獄と化した地下迷宮を、紫電の鍼で浄化した。

 しかし、闇の最深部で羽化を待つ「究極の患者」は、要塞の全データを引き継いだ、史上最悪の「再生の怪物」であった。

 聖鍼師一行。

 地下迷宮の最終決戦。

 枢の銀鍼は、再生し続ける絶望を、根源から完治させることができるのか。

5月3日(日・祝)18:00、地下迷宮の深淵を描く「紫電の浸透鍼」を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


今回、迷宮全体の生体癒着を解除し、異形の番人を人間に戻すために枢先生とシオンが意識した術式を解説します。

まず、迷宮全体の神経網に介入し、個々の細胞の拒絶反応を沈静化させるための起点とした、中央主柱への**『大椎だいつい』刺入。枢先生は、迷宮全体を一つの「多重人格的な拒絶反応を起こしている患者」として診立て、その中枢を突くことで、異常な細胞結合を鍼灸的に無効化させました。


そして、切り離された生命のバイタルを即座に安定させ、ショック死を防ぐためのアンカーとした『命門めいもん』。生命の火を灯すこのポイントに気を送り込むことで、枢先生とシオンは、素材とされていた村人たちを外科的に……経絡的に再起動させることに成功したのです。

最後に、迷宮深部に潜む邪気の源泉を特定し、その供給路を遮断するための最終回路とした『足三里あしさんり』。この往診を経て、枢先生は地獄の迷宮を、再び静かな「ただの洞窟」へと完治させました。


次回の第369話は、本日【21:00】**に更新予定です。


迷宮の最深部、巨大な繭から産声を上げる「再生の怪物」。どれほど傷つけても瞬時に復元される絶望に対し、枢は「再生そのものを病」と捉え、細胞の増殖を鍼で制御する究極の技を繰り出します。

「(……。おやおや。……。……。……。元気すぎるのも、……また一つの病気ですよ。…………。……。……。シオン。……。……。……。この暴走する『若さ』、……私たちの手で、……穏やかな老いへと導いてあげましょうか)」


21時、本日最終。地下迷宮の最終往診。

聖鍼師・枢。最深部の羽化を「完治」させます。どうぞお見逃しなく。

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