第355話:古城の外科往診、暗殺医師団を「医道の極致」で一斉外科解体せよ
古城の最上階に位置する円形劇場。かつては演劇が楽しまれたその場所は、今や「万能の祭壇」による公開解体ショーの舞台となっていました。
枢を取り囲むのは、異形の白衣を纏った十人の医師。彼らは、骨を砕くノコギリ、神経を引き抜く鉤爪、そして血管を焼くレーザーメスを手に、枢の「神の手」を切り刻もうと舌なめずりをしていました。
「(……。おやおや。……。十人がかりで、……一人の鍼灸師を解体しようとは。……。随分と、……手際の悪い相談ですね。……。……。いいでしょう。……。あなたたちのその、……人を殺すためだけに磨かれた錆びついた技術。……。私の銀鍼で、……根こそぎ、……外科的に『廃業』させてあげますよ)」
枢先生の言葉と共に、劇場に死の旋律が響き渡ります。
十の刃が同時に襲いかかる中、先生は一歩も動かず、ただ指先で一本の銀鍼を回転させました。
12時、昼の往診。古城の外科往診。
聖鍼師・枢。十人の暗殺医師を、一鍼で外科教育します。
円形劇場の天井から降り注ぐ陽光が、十人の暗殺医師たちが構える不気味な医療器具を照らし出した。
彼らは、医学の知識を「殺害」へ転用した外道。人体の弱点を知り尽くしているがゆえに、その攻撃は一撃必殺であり、かつ、相手を死なせないギリギリの苦痛を維持し続ける。
「(……。枢先生、……。あなたのその美しい『指先』。……。まずは、……第一関節から丁寧に、……神経を一本ずつ引き抜いて差し上げましょう……!)」
先陣を切ったのは、指先に数十本の極細メスを仕込んだ「千手」の医師。彼の腕は、改造によって関節の数が増やされており、鞭のようにしなりながら、枢の視界の死角から音もなく迫る。
ガストンが叫んだ。
「(……。せ、……先生! ……。右後ろだ! ……。避けて! ……。そのメスには、……一滴で巨象をも即死させる神経毒が塗られている!)」
しかし、枢は振り返ることさえしなかった。
彼は、鞭のように飛来する「千手」の腕に対し、自身の銀鍼を、ただ「置いておく」かのように突き出した。
――ピィィィィィィィィィンッ!!
メスが枢の肌に触れる寸前。
枢の銀鍼が、医師の肘にある急所――**『小海』を完璧に撃ち抜いた。
「(……。おやおや。……。そんなに腕を増やして、……脳からの信号が混線しているようですね。……。不器用な猿にメスを持たせるのは、……見ていて忍びない。……。……。その腕、……しばらく眠らせておきましょうか)」
「(……。な、……。……が、……っ!? 腕が、……私の腕が、……勝手に、……自分の首へ……!)」
「千手」の医師の腕が、枢の気の導きによって反転し、自らの頸動脈を切り裂かんと暴走を始めた。枢は、相手の「殺意のエネルギー」を、そのまま「自滅の処方箋」へと書き換えたのである。
「(……。おのれ、……枢! ……。全員で行け! ……。細切れにして、……標本にしてやる!)」
残る九人が、一斉に跳躍した。
骨を粉砕するハンマーを振り下ろす者、毒煙を吐き出す者、そして、超振動のメスで空間ごと切り裂こうとする者。劇場の舞台は、逃げ場のない「処刑台」と化した。
しかし、枢は、その中心でタキシードのネクタイをゆっくりと解き放った。
「(……。ミナ。……。……。医者の仕事とは、……目の前の患者を救うことだけではありません。……。……。時には、……蔓延する『害毒』を、……その根源から摘出することも、……大切な外科手術の一つなのです)」
枢の全身から、翡翠色の気が爆発的に膨れ上がった。
それは、復活した際に神々の覇気を飲み込み、完全に自身の「医気」へと変えた、絶対的な静寂の嵐。
「(……。行きますよ。……。……。合同執刀の時間です)」
枢の姿が、九人の医師の間をすり抜ける。
それは移動というより、空間を「縫合」するかのような超高速の歩法。
――ズシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
一刺し。
骨を砕こうとした男の腕の付け根――『肩髃』を貫き、その怪力を、ただの痙攣へと外科的に変換した。
二刺し。
毒を吐こうとした女の喉元――『天突』**を打ち、自身の毒で自らを窒息させる逆流回路を構築した。
三刺し、四刺し……。
わずか十秒。
円形劇場の舞台には、立ち尽くしたまま白目を剥き、自らの武器を持ったまま動けなくなった九人の暗殺医師たちの姿があった。
枢は、タキシードの袖を整えながら、十人の中心で銀鍼を仕舞った。
「(……。おやおや。……。そんなに顔を真っ赤にして。……。人殺しの技術を極めても、……自分の『不整脈』一つ治せないとは。……。……。恥を知りなさい。……。あなたたちは、……今日をもって、……廃業です)」
枢の合図と共に、十人の医師たちは、糸の切れた人形のように一斉に倒れ伏した。
彼らの経絡は、枢の一鍼によって、殺意を抱くたびに全身に激痛が走る「不殺の呪い」を外科的に施されていた。
「(……。バ、……。……。バカナッ!? 世界最高峰の暗殺医師団が、……誰一人として傷つけることすらできず、……たった一人の鍼師に、……完全に『解体』されてしまったというのか!! コレガ、……完全復活した枢の、……悪意さえも治療する『絶対医道の往診』だというのか!!)」
ガストンは、自身の魔導端末が弾き出した「敵戦力:完全無力化」という数値を信じられず、劇場の床に膝をついた。
しかし、劇場の奥にある巨大なパイプオルガンの影から、拍手の音が不気味に響いてきた。
「(……。お見事。……。流石は私の執念が、……唯一、……手に入れたいと願った腕だ。……。……。だが、……枢先生。……。この劇場そのものが、……実は巨大な『実験動物の胃袋』だとしたら、……あなたはどうしますか?)」
マスター・リッチの声と共に、劇場の床が激しく震え、壁一面から不気味な赤い粘膜が噴出し始めた。
城そのものが、巨大な生命体として、枢たちを「消化」しようと動き出したのである。
「(……。おやおや。……。城を患者にするとは。……。……。いいでしょう。……。巨大な内臓を掃除するのは、……私の得意分野ですから。……。……。ミナ、……ガストン。……。次は、……この城の『胆石』を、……外科的に摘出しに行きましょうか)」
第355話。
聖鍼師・枢。
彼は十人の暗殺医師を、慈悲なき医術で一掃した。
しかし、万能の祭壇の真の姿は、石造りの城ではなく、地脈の血を啜る「巨大な魔獣」そのものであった。
聖鍼師一行。
次なる戦場は、蠢く肉壁に囲まれた「城の内臓」。
枢は、生きている城という名の最大の患者に、その銀鍼を突き立てる。
本日、5月1日(金)12:00、十人の暗殺医師を圧倒的な技術で完封する「合同執刀」を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回、十人の暗殺医師を同時に無力化し、彼らの殺意の回路を封鎖するために枢先生が意識した術式を解説します。
まず、多関節の腕を持つ敵の運動伝達を遮断し、その腕を自身の制御下に置くための起点とした**『小海』。肘にあるこの要穴に対し、相手の勢いを利用して銀鍼を打ち込むことで、枢先生は「攻撃のベクトル」を外科的に反転させました。
そして、残る九人の暗殺医師たちの攻撃行動を一瞬で停止させ、全身の筋肉を硬直させるためのアンカーとした『肩髃』と『天突』。肩と喉、生命の通り道を同時に外科封鎖することで、枢先生は彼らを「生ける石像」へと変貌させたのです。
最後に、倒れた彼らが二度と人を傷つけるために医術を使えないよう、殺意を抱くと自動的に気が散逸する回路を形成した最終回路とした『神門』。この往診を経て、枢先生は十人の名医を、ただの「無力な引退者」へと外科的に再教育しました。
次回の第356話は、本日【18:00】**に更新予定です。
「城そのものが巨大な怪物」という絶望的な状況。肉壁が迫り、床が波打つ中、枢は城の「心臓」へ向かって迷わず突き進みます。しかし、そこにはマスター・リッチが、自身の魂と城の核を融合させた、究極の「病巣」となって待ち構えていました。
「(……。おやおや。……。城と無理心中ですか。……。そんなに重たい愛なら、……私が一鍼で、……外科的に切り離してあげましょう)」
18時、夕方の往診。城郭の外科往診。
聖鍼師・枢。ついに「生きている要塞」の心臓手術に挑みます。どうぞお見逃しなく。




