表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

346/367

第346話:天空の外科往診、骸の遺した「論理の迷宮」を師弟の共鳴で外科解体せよ

「心臓」と「右腕」を宿し、ミナの肉体は今や、歩く聖域と化していました。次なる目的地は、高度一万メートルに浮遊する伝説の島・アヴァロン。そこはかつてむくろくるるに対抗するために築いた知識の要塞であり、現在は枢の**「叡智(脳)」**の欠片が、骸の遺した高度な自律型魔導プログラムによって厳重に守護されています。


「おやおや。……。私の脳を、……骸という名の偏屈な図書館に閉じ込めるとは。……。ミナ、……彼の知識は、……正論を並べ立てて人を絶望させる『論理の癌』です。……。迷うことはありません。……。その賢しらな言葉の隙間に、……真実を分からせるための一鍼を叩き込みなさい」


右腕に宿った枢の声は、以前よりも鮮明に、より不遜に響きます。

師の知恵を取り戻すため、ミナはガストンの飛行魔導艇を駆り、雲を突き抜けて天空の迷宮へと突入します。


12時、昼の往診(三回目)。天空の外科往診。

聖鍼師ミナ。骸の亡霊が仕掛ける「残酷な選択」を、師弟の絆で外科解体します。

 太陽が最も高く、影が最も短くなるとき

 ガストンの操縦する魔導艇は、激しい乱気流を突き抜け、ついに白銀の雲海に浮かぶ巨島・アヴァロンの港へと接舷した。島全体が巨大な書庫と歯車で構成されており、そこには生き物の気配はなく、ただむくろが遺した自動書記人形オートマタたちが、終わりのない議論を繰り返す機械音だけが響いていた。


 神殿の中央、巨大な試験管のような容器の中に、淡く発光するくるるの「脳の欠片」が浮遊していた。それは単なる臓器ではない。数千年の医学知識と、未来を予見する直感。それらが結晶化した、この世界の「ことわり」そのものであった。


 三人がその欠片に近づこうとした瞬間、神殿の空間が歪み、骸の残留思念が立体映像となって現れた。

 「(……。おやおや、……。枢の愛弟子ですか。……。待っていましたよ。……。だが、……この『叡智』を手に入れるには、……知識でも武力でもなく、……究極の選択に答えねばなりません。……。今、……この島の下にある王都に、……不治の病の種を撒きました。……。枢の脳を手に取るか、……王都の民を見捨ててここを去るか。……。さあ、……どちらが『医道』として正しい選択か、……あなたの銀鍼で示しなさい)」


 骸の冷徹な声と共に、神殿の床に王都のライブ映像が映し出された。そこでは、謎の黒い斑点に侵された人々が苦しみ始めている。

 ガストンが絶叫した。

 「(……。バ、……。……。バカナッ!? 骸、……死んでまでこんな残酷な実験を仕掛けてくるのか! ……。ミナ、……どうする! ……。今から戻っても、……王都の全滅は避けられない。……。だが、……先生の脳を諦めれば、……復活の道は完全に閉ざされるんだぞ!)」


 カサンドラも剣を抜き、震える手で骸の映像を睨みつけた。

 「(……。卑怯な。……。先生なら、……先生ならこんな時、……どうされるの……!)」


 ミナは、静かに目を閉じた。

 彼女の右腕(枢の右腕)が、激しく、そして心地よく疼き始めた。


 「(……。おやおや。……。骸、……相変わらずの悪趣味ですね。……。ミナ、……彼の問いかけそのものが、……思考を停止させるための『毒素』です。……。王都を救うか、……私を救うか。……。そんな二択を迫る時点で、……彼の論理は、……不全を起こしている。……。……。いいですか、……私たちは、……『両方』を、……外科的に完治させるのですよ)」


 枢の意識が、ミナの全感覚を支配した。

 ミナは迷うことなく、枢の脳が入った容器へと歩み寄り、同時に、空へと向かって「星屑の銀鍼」を放り投げた。


 「(……。骸さん。……。あなたは、……病を治すことしか考えていない。……。でも、……私たちは、……病が生まれる『因果』そのものを治すんです! ……。王都の病の種は、……このアヴァロンの動力炉から放出されている『負の気』が原因。……。ならば、……ここを叩けば、……すべては解決します!)」


 ミナが叫ぶ。

 ガストンがその言葉の真意を悟り、動力炉の座標を瞬時に計算した。

 「(……。そうか! ……。動力炉の排気口――**『大椎だいつい』**に、……ミナの気を直接流し込めば、……王都に降る『毒の雨』は、……一瞬で『恵みの雨』へと変換される!)」


 カサンドラが動力炉を守る守護人形たちを一閃して道を作り、ミナが跳躍した。

 彼女の指先には、枢の脳から溢れ出した「叡智の光」が、銀鍼の形となって宿っていた。


 「(……。骸さん。……。あなたの絶望的な予言、……私が、……今ここで外科的に論破してあげます!)」


 ミナの銀鍼が、アヴァロンの動力核を正確に貫いた。


 ――ズシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!


 一刺し。

 島全体を包んでいた「絶望の論理」という名のプログラムが、外科的に消去された。

 二刺し。

 王都へと降り注いでいた黒い霧が、黄金の粒子へと変化し、病に苦しんでいた人々の細胞を一瞬で活性化させた。


 「(……。あ、……。……が、……。……。……。お見事、……。……。枢よ、……。君の選んだ弟子は、……私という名の『極限の絶望』さえも、……治療の糧にしてしまったか……。……。)」


 骸の映像が、満足げな微笑みを残して霧散した。

 同時に、神殿に安置されていた枢の「脳の欠片」が容器を突き破り、ミナの頭部へと優しく吸い込まれていった。


 「(……。ミナ、……。素晴らしい判断でした。……。知識とは、……誰かを追い詰めるための盾ではなく、……不可能を可能にするためのメス。……。これで、……私の思考回路が、……あなたの直感と、……完全に統合されましたよ)」


 ミナの頭の中に、全宇宙の医学書が一瞬で書き込まれたような、圧倒的な情報量が流れ込んできた。

 彼女はもはや、ただの弟子ではない。枢の心臓、右腕、そして叡智を宿した「枢の正統なる後継者」にして、復活への究極の触媒となったのである。


 第346話。

 枢先生復活への、第三の手術も成功した。

 天空の島アヴァロンは、今、呪縛から解き放たれ、ミナたちを運ぶ聖なる揺りかごとなって、次なる目的地へと舵を切る。


 「(……。待っていてください、師匠。……。残るは、……あなたの圧倒的な『無双の肉体(器)』。……。それがあるのは、……かつてあなたが初めて神となった聖地、……『神の庭』ですね。……。そこには、……あなたの復活を阻もうとする、……現世の神々が待ち構えているはず。……。……。でも、……今の私たちなら、……神様さえも、……外科的に教育してあげられますよ)」


 聖鍼師ミナ。

 その瞳には、かつての枢と同じ、冷徹にして深遠な慈愛の光が、爛々と輝き始めていた。

本日、4月29日(水・祝)12:00、くるる先生の「叡智」奪還を描いた一話を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


第346話。

実数2,500文字を目標に、むくろとの知恵比べ、そしてミナさんの知的な覚醒を圧倒的な熱量で執筆いたしました。


今回、天空の島アヴァロンの毒素を浄化し、骸の論理の罠を打ち破るためにミナさんたちが意識した術式を解説します。

まず、島全体のエネルギー供給と排気を司る中心核を特定し、そこから放出される負のエネルギーを中和するための起点とした**『大椎だいつい』。首の付け根にあるこの熱の関門に対し、ミナさんは「枢先生の叡智の光」を乗せた一鍼を放つことで、絶望の雨を希望の雨へと外科的に変換しました。


そして、骸が遺したプログラムの核心部に対し、その論理的な矛盾を突き、システムの強制停止を促すためのアンカーとした『神庭しんてい』。額にあるこの精神の急所を通じて、ミナさんは「迷い」を断ち切り、自分たちにしか見えない「完治の道」をシステムに直接書き込んだのです。

最後に、回収した枢先生の叡智をミナさんの意識と完全に同期させ、過剰な情報負荷から精神を保護するための最終回路とした『風池ふうち』。この往診を経て、ミナさんは全宇宙の医学知識を自在に操る、まさに「神の知恵」を持つ聖鍼師へと覚醒しました。


次回の第347話は、本日祝日【15:00】**に更新予定です。


次なる目的地は、全生命の源流「神の庭」。しかし、そこには現世の神々が遣わした「神罰の騎士団」が、枢の完全復活を「世界のバランスを壊す暴挙」として阻止するために現れます。

「(……。おやおや。……。世界のバランス、……ですか。……。そんなに脆弱なバランスなら、……一度ぶち壊して、……私が外科的に作り直してあげましょうか。……。ミナ、……神様たちを、……診察室へとご案内しなさい)」


15時、昼の往診(四回目)。聖域の外科往診。

聖鍼師ミナ、ついに「現世の神々」を相手に、復活を懸けた最終決戦の火蓋を切ります。どうぞお見逃しなく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ