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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第五章 : 神代再編・枢復活編】

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第344話:復活への外科往診、師の魂が眠る「北方氷河の封印」を弟子の執念で外科解体せよ

聖鍼師・くるるが石化し、光となって散ってから一ヶ月。王都は静まり返っていました。民衆は救われましたが、彼らの心には「自分たちのために、唯一無二の師を失った」という癒えぬ後悔が、巨大な病巣のように巣食っています。


しかし、ミナだけは諦めていませんでした。

彼女は、枢が散り際に遺した「光の鍼」が、実は消滅したのではなく、世界の経絡の特定ポイントに「自身の魂を分割して封印した」ものであることに気づきます。

すべてを集めれば、枢先生は、あの圧倒的な威厳と毒舌と共に、再び私たちの前に降臨する。


「おやおや。……。師匠。……。隠居するには、……まだ早すぎますよ。……。世界は、……あなたがいないと、……こんなにも退屈で、……治し甲斐のない場所になってしまうのですから。……。ガストン、……カサンドラ。……。泣いている暇はありません。……。世界中に散った師匠の『欠片』を、……外科的に全回収しに行きますよ」


朝の往診。復活への外科往診。

二代目(仮)・ミナ。師匠を「生き返らせる」という、神をも恐れぬ禁忌の往診を開始します。

 静寂を切り裂くように、ミナは王都の中央広場に突き立つ、くるるの石像の前に立っていた。

 石像は物言わぬ彫像に過ぎない。しかし、ミナが「星屑の銀鍼」を石像の心臓部にかざすと、鍼は微かな、しかし力強い共鳴を返してきた。それは、枢が自身の魂の核を、あえて世界の最果て数箇所に分散し、自身の復活を「最後の試練」として弟子たちに課したという、師匠からの挑戦状であった。


 「(……。ガストンさん。……。見えますか。……。この石像から放たれている、……翡翠色の細い糸が。……。一本は、……北の氷河へ。……。一本は、……西の砂漠へ。……。そしてもう一本は、……空の彼方へ。……。師匠は、……死んでなどいません。……。バラバラになった自分を、……私たちが正しく『縫合』できるかどうか、……試しているんです)」


 ガストンは魔導端末を狂ったように操作し、その糸の先を解析した。

 「(……。バ、……。……。バカナッ!? 魂ヲ分割シテ世界ノ経絡ト同化サセルナンテ、……神ノ腕デモ不可能ナハズダ! ……。ダガ、……確実ニ反応ガアル。……。北方氷河、……かつてむくろが潜んでいたあの最果ての地に、……先生の『生命の熱量』の三割が、……氷の下で脈動している!)」


 カサンドラが大剣を背負い、一歩前に出た。

 「(……。先生を、……取り戻せるというのね。……。ミナ、……迷うことはないわ。……。たとえそれが、……神の理に背くことだとしても、……私は先生のいない世界を守るより、……先生と共に戦う地獄を選びたい。……。行きましょう、……最果てへ)」


 ミナは力強く頷き、枢の杖を握りしめた。

 彼女には聞こえていた。遥か北の地で、氷に閉じ込められながらも「おやおや、……随分と到着が遅いですね」と、皮肉たっぷりに笑う枢のあの声が。


 三人は、王都の最高速馬車を飛ばし、わずか数時間で北方の極寒地帯へと到達した。

 そこは、ゼノスが遺した負の遺産と、世界の地脈の乱れが交差する、極めて不安定な空間であった。数万年の氷が、枢の魂を核にして、巨大な「氷の臓器」へと変貌し、周囲の熱を無差別に吸い込み続けている。


 「(……。師匠。……。随分と、……立派な寝床を作ったものですね。……。ですが、……そんなに冷たい場所では、……あなたの鋭い舌も、……凍りついてしまいますよ。……。私が、……その氷を外科的に粉砕して、……あなたの一部分を、……無理やり引きずり出してあげます!)」


 ミナは、氷河の中心、枢の気が最も濃く噴き出している一点――**『大椎だいつい』を見定めた。

 そこを貫けば、氷の封印は解け、枢の第一の魂が解放される。しかし、封印を守る「氷のガーディアン」が、三人の前に立ちはだかった。それは、枢の魔力と氷が混ざり合って生まれた、師匠の幻影。


 「(……。おやおや。……。私の眠りを妨げる、……不届きな患者はどなたですか。……。診察料は、……高くつきますよ)」


 氷の枢が、冷徹な声で告げる。

 ミナは震える足を叱咤し、銀鍼を構えた。


 「(……。本物の師匠なら、……そんなに優しくありません! ……。ガストンさん、……熱量を一点に集中させて! ……。カサンドラさん、……幻影の動きを止めて! ……。私は、……あの一点に、……魂の縫合鍼を打ち込みます!)」


 三人の連携が、極寒の戦場を熱く燃え上がらせた。

 ガストンの爆火が氷を溶かし、カサンドラの剣が幻影の腕を切り裂く。

 その刹那、ミナが空を舞った。


 ――ズシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!


 一刺し。

 氷の枢の眉間、精神の結合点――『印堂いんどう』**を正確に貫いた。


 「(……。っ、……。……。おやおや。……。……合格、……です……)」


 幻影が光となって砕け散り、その中から、翡翠色に輝く「枢の心臓の欠片」が、ミナの掌へと飛び込んできた。

 ミナがそれを自身の胸に当てると、確かに聞こえた。

 ドクン、と。

 世界を平伏させる、あの尊大な、しかし誰よりも温かな聖鍼師の鼓動が。


 第344話。

 枢先生復活への、最初の手術は成功した。

 「(……。待っていてください、師匠。……。世界中のあなたをすべて集めて、……必ず、……私たちの前に、……あの不遜な態度で戻らせてみせますから!)」


 新章「神代再編・枢復活編」。

 二代目(仮)ミナと仲間たちが、死をも超越した「最強の師」を現世へと引きずり戻すための、禁忌の往診が今、本格的に幕を開けるのである。

本日、4月29日(水・祝)08:00、くるる先生復活への第一歩を描いた一話を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


第344話。

ミナさんたちが世界に散った先生の魂を集める「復活の外科手術」を開始するエピソードを執筆いたしました。


枢先生がいかにして「無双」のまま戻ってくるのか。そのための器を、ミナさんたちが命懸けで作っていく様子を、第五章のメインテーマに据えて参ります。


今回、北方氷河に封印された枢先生の「心臓の欠片」を解放するためにミナさんたちが意識した術式を解説します。

まず、氷の呪縛によって硬直した魂のエネルギーを、再び熱い拍動へと変えるための起点とした**『大椎だいつい』。首の付け根にあるこの熱の関門に対し、ミナさんは枢先生の形見の銀鍼を打つことで、極寒の封印を外科的に解体しました。


そして、枢先生の幻影の思考を停止させ、その本質である魂の核を露出させるためのアンカーとした『印堂いんどう』。眉間にあるこの精神の急所を通じて、ミナさんは「偽物の静寂」を打ち破り、本物の鼓動を引き出すことに成功したのです。

最後に、回収した枢先生の欠片を、復活の日まで安全に保管し、自身の気と同期させるための最終回路とした『膻中だんちゅう』。この往診を経て、ミナさんは枢先生の命を半分背負う「器」としての覚悟を決めました。


次回の第345話は、本日祝日【10:00】**に更新予定です。


次なる欠片は、西の果て、砂漠のオアシスに眠る「枢の右腕」。しかし、そこはカザンの一族が守護する聖域であり、彼らは枢の復活を「世界の混乱を招く」として拒絶します。

「(……。おやおや。……。私の右腕を、……勝手に御神体にするのは困りますね。……。ミナ、……遠慮はいりません。……。私の腕、……力ずくで診てあげなさい)」


10時、朝の往診(二回目)。砂漠の外科往診。

聖鍼師ミナ、ついに「枢の右腕」を求めて、カザンの一族と激突します。どうぞお見逃しなく。

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