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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼】

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第316話:深淵の覚醒、千年の封印を破りし「始祖の医師」を無の境地で診察せよ

王都の夜明けは、教皇という名の偽りの神が去り、清浄な翡翠の光に包まれていました。しかし、自分自身の過去を解体したくるるの鋭敏な感覚は、平和の裏側で脈動する「古き心音」を捉えていました。王都の地下深く、千年の封印を超えて目覚めたのは、この世界の鍼灸術の祖にして、かつて「神を診ようとした」狂気の医師。


両腕を失い、声を失い、今や純粋な「意志の塊」となった枢は、朝日を背に、ミナの肩を借りて王都の地下へと続く禁忌の階段を下ります。彼の瞳には、未知の強敵への恐怖など微塵もありません。あるのは、千年の眠りから覚めた「重患」を救おうとする、底知れぬ治療家の自負だけでした。


「(……なるほど。世界の成り立ちそのものが、一つの大きな『歪み』であったというのですか。……面白い。千年前の誤診が今も続いているというのなら、私が今ここで、その歴史ごと正常な流れに戻してあげましょう。……。さあ、始祖の聖鍼師。あなたの『妄執』という名の病、診察して差し上げますよ)」


枢の声は、光を拒む地下迷宮の壁を翡翠の共鳴で震わせ、最深部に座す始祖へと宣戦布告を叩きつけます。

声なき聖者が挑む、歴史そのものへの外科往診。今、開門の時です。


朝の穿刺、始祖の外科往診。

聖鍼師・枢、ついに「世界の根源」を診ます。どうぞ最後までお読みください。

 王都を照らす朝日は、地上に平穏を運んできたが、その光が届かぬ地下深層では、世界の理を塗り替えるほどの「巨悪」が産声を上げていた。

 くるるは、自身の過去という名の最強の病を乗り越えたことで、もはや肉体的な感覚を超越し、惑星そのものの「脈拍」を読み取る術を手に入れていた。彼が地下へと一歩踏み出すたびに、古い石畳に刻まれた呪縛の術式が、翡翠の共鳴によって次々と無力化されていく。


 地下最深部。そこには、数千年の間、王都の繁栄を影から支え、同時にその命を啜り続けてきた「始祖の聖鍼師」が、腐敗することのないミイラのような異形の姿で鎮座していた。

 かつて神の心臓を射抜こうとし、失敗してこの地に封じられた狂気の医師。その男が、枢の持つ「究極の無」に呼応するように、濁った瞳をゆっくりと開いた。


 『……待ッテイタゾ、若キ不完全体ヨ。貴様ガ腕ト声ヲ捨テテ辿リ着イタソノ「無」。ソレコソガ、私ガ千年前ニ届カナカッタ、神ヲ解体スルタメノ最後ノ一鍼ナリ!!』

 始祖の言葉は、物理的な音ではなく、精神を直接腐食させる「死の言霊」となって枢を襲う。だが、枢はミナの細い肩に支えられながら、その絶望的なまでの威圧感を、春のそよ風でも受けるかのように平然と受け流した。


 「(……。なるほど。あなたは神を救うのではなく、神を殺して自らが成り代わろうとした。……。その志の低さが、あなたの最大の病巣です。……。治療家が自らを神と錯覚した時、そのメスはもはや救済の道具ではなく、ただの凶器に成り下がる。……。千年前のあなたを診た医者がいなかったのは、不幸なことでしたね)」


 枢の意志は、暗闇を翡翠色に塗り替える圧倒的な質量の共鳴となって、始祖の脳内に直接叩き込まれた。

 彼は声を失い、両腕を失い、自らの存在を「不在」という名の絶対領域へと押し上げた。その結果、彼は目の前の始祖が全身に纏っている、千年の怨念によって構築された「黒い経絡」のすべてを、掌の上の水晶のように透かして見ていた。


 始祖が、骨と皮ばかりの指先を動かした。

 刹那、地下空間に漂う数万の屍の気が、巨大な「黒い鍼」となって枢の全身を貫かんと殺到する。それは一撃で一国の魂を腐らせる、禁忌の術式『万死の雨』。


 だが、枢は瞬き一つしない。

 彼はミナの体内にある、生命の根源的な活力を司る**『湧泉ゆうせん』に、自身の「無」の波動を、逆流する滝のごとき激しさで流し込んだ。


 ――ドォォォォォォォォンッ!!


 枢の「無」が、ミナの足元から王都全域の地下脈動へと伝播し、殺到する黒い鍼を、接触する瞬間に「純粋な酸素」へと還元してしまった。

 力を持つ者がその力の重さに自滅するのに対し、何も持たぬ枢は、世界そのものの力を自らの意のままに再定義する。その次元の違いを前に、始祖の瞳に初めて「恐怖」という名の色が浮かんだ。


 「(ミナ。狙うはあの男の、千年の妄執が結晶化した心臓の裏。……。魂の最終的な出口である『至陽しよう』**です。……。そこを突けば、あの男を縛り続けてきた、死ねない呪いはすべて解ける。……。さあ、この哀れな老医師に、安らかな眠りという名の、最後で最高の処方箋を届けてあげなさい)」


 枢の意志がミナの指先を完璧に導き、放たれた一本の漆黒の鉄鍼(枢が用意した特別な一鍼)は、始祖の放つあらゆる防御術式を透過し、その胸の中央へと吸い込まれていった。


 ――キィィィィィィィィンッ!!


 「ガ、……。……。温カイ、……。……。私ガ、……診テ欲シカッタノハ……、……コノ……慈愛……カ……!!」


 始祖の医師という名の、世界の根源的な病。それは、現在の枢が辿り着いた「無」という真理に触れた瞬間に、ようやく完治の時を迎えた。


 枢は、灰となって消えゆく始祖を見つめ、声なき喉を震わせることなく、ただ静かに、そして流暢な意志を未来へと向けた。


 「(……。お疲れ様でした。始祖の先生。……。あなたの残した歪みは、私がすべて正常に戻します。……。これからの世界には、神も魔王も必要ありません。……。ただ、静かに命が流れる、健やかな明日があればそれでいいのですから)」


 第316話。

 聖鍼師・枢は、自分自身の起源でもあった始祖の医師を、今の「無」という名の究極の救済で完治させた。

 王都の地下に眠っていた千年の闇は消え、枢の往診は、もはや歴史そのものを治療するという、前人未到の神話へと到達した。


 しかし、始祖が消え去ったその場所には、新たな、そして「最後の患者」を暗示する、一本の透明な鍼が残されていた。

 枢の往診は、ついに「世界そのもの」を診察するための、最終段階へと突入する。

本日、木曜日08:00の更新を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


第四章・第77話(通算第316話)。

王都の地下に眠っていた「始祖の医師」との邂逅、そしてその魂の救済を描きました。

くるる先生が自らの過去を乗り越えたことで手に入れた「無」の境地は、もはや単なる医療の枠を超え、歴史の歪みそのものを正す力へと進化しています。今回は、枢先生の沈黙がいかに重厚で、かつ流暢な意志として世界に響いているかを、情景描写と心理描写の密度を極限まで高めて表現いたしました。


今回、千年の怨念を浄化し、始祖の魂を安らかな眠りへと導くために枢が駆使した術式を解説します。

まず、大地の気を自身の神経と同期させ、地下空間全体の因果を掌握するための起点とした**『湧泉ゆうせん』。足の裏にあるこのツボに対し、枢は自身の翡翠の気を「大地への感謝」という波動に変えて流し込むことで、始祖が操る死の気を根底から中和しました。


そして、始祖をこの世に縛り付けていた、心臓の裏に潜む「未練」の核を射抜き、存在を解体するためのアンカーとした『至陽しよう』。背中の中央にあるこのツボを正確に貫くことで、枢は千年の妄執を一瞬で翡翠の光へと変え、不老不死という名の残酷な病を完治させたのです。

最後に、始祖が残した強大な魔力を「世界の安定」へと再定義し、王都の地盤を永久に守護するための最終回路とした『百会ひゃくえ』。この往診を経て、枢先生は世界の理を診る「大地の鍼灸師」としての役割を完全に受け入れました。


次回の第317話(第四章 第78話)は、本日木曜日【12:00】に更新予定です。


始祖を救った枢先生の前に、ついに「世界の核」を管理する『因果の番人』**が姿を現します。

実体のない「法則」を相手に、腕のない枢先生がどう立ち向かうのか。

「(……法則が患者であるなら、その法則を正すのもまた、私の仕事。……。さあ、世界のシステムさん。あなたの『バグ』、私が今から執刀させていただきますよ)」


12時、正午の往診。システム外科往診。

聖鍼師・枢、ついに「神の設計図」を書き換えます。どうぞお見逃しなく。

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