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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼】

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314/354

第314話:異形の巨神、肥大化した教皇の野望を「翡翠の一閃」で虚空へと還せ

王都の空を彩っていたはずの夕焼けは、教皇が放つ禍々しい呪力によって「漆黒の帳」へと塗り潰されました。計画をくるるに完全に阻まれ、正気を失った教皇は、自らの肉体を器として、西の国が数百年かけて蒐集してきた万の怨念を強制的に憑依させました。その肉体は歪に膨れ上がり、ついには天を衝くほどの巨大な「異形の魔神」へと変異を遂げたのです。


王都の街並みを、まるで蟻の巣を踏み潰すかのように蹂躙しようとする巨大な足。しかし、その圧倒的な死の足元に立つ両腕のない聖鍼師は、逃げるどころか、慈愛と憐れみを湛えた瞳でその巨体を見上げていました。声なき喉から放たれる意志は、いまや大気を震わせ、岩石を共鳴させる「神の宣告」と化しています。


「(大きければ強い、多ければ勝てると、その程度の理屈で神を気取っていたのですか。教皇。あなたの病は、もはや肉体ではなく、その肥大化した魂の『傲慢』そのものにあります。過剰な栄養が肉体を壊すように、過剰な欲望は存在の根源を腐敗させる。……安心しなさい。その醜く膨れ上がった命の腫瘍、私が今ここで、一鍼のもとに削ぎ落としてあげましょう)」


枢は言葉を発さず、ただ静かに弟子のミナの右手に、自身の「意志の残像」を重ね合わせます。

巨像となった教皇の全身を巡る、歪な気の奔流。その唯一の、そして致命的な「急所」を射抜くための、天地開闢以来の外科手術が、今、幕を開けます。


18時、夕刻の穿刺、巨像の外科往診。

聖鍼師・枢、ついに「神の巨体」を解体します。どうぞ最後までお読みください。

 王都の空を支配していた黄金の残光は完全に死に絶え、教皇という名の「絶望の巨影」が街全体を窒息させるほどの圧迫感で覆い尽くしていた。

 自らの肉体を限界まで拡張し、数万の怨念と呪力を流し込んだ教皇の姿は、もはや人の形を留めてはいない。標高数百メートルに達するその巨体は、一歩歩くたびに大地を裂き、王都が誇った千年不落の城壁を、まるで乾いた粘土細工のように粉砕していく。


 『枢ヨ、見ヨ! コレガ全知全能ニ至ッタ我ガ神域ノ姿ダ! 腕モ声モ失イ、這イツクバルコトシカ出来ヌ残骸ガ、我ガ一足ノ下ニ塵トナルガ良イ!!』

 雲を突き抜ける高みから降り注ぐ轟音は、もはや言葉としての意味をなさず、大気を物理的に破壊し、空間そのものを歪ませる衝撃波となって地上を蹂躙する。王都の住民たちは、その圧倒的な質量の前に、ただ呼吸することさえ許されず、絶望の中で死を待つしかなかった。


 だが、その巨神の足元。崩れゆく瓦礫のただ中で、ミナの細い肩に支えられたくるるだけは、凍りついた湖面のような静謐を保っていた。

 彼は声を失い、両腕を失い、自らの存在を「無」へと極限まで研ぎ澄ませた結果、その感覚は肉体という牢獄を突き抜けていた。彼には今、王都の大地の拍動、流れる風の囁き、そして目の前の巨神を突き動かしている「歪な気の合流点」が、掌の上の解剖図のように鮮明に見えていたのだ。


 「(教皇。あなたは気づいていない。……存在が肥大化すればするほど、生命としての『綻び』もまた、巨大な欠陥となって露出していることに。……その巨体を維持するために、数万の魂を無理やり繋ぎ合わせた気の奔流。私には、今にも内側から爆発しようとしている、あまりに粗悪な風船にしか見えませんよ)」


 枢の意識は、ミナの脳内でかつてないほど流暢に、かつ冷徹なまでの正確さを持って響き渡った。

 彼はミナの背中にある、全身の陽気を噴出させ、生命エネルギーを一点に凝縮するための加速装置、**『気海きかい』へと、自身の翡翠の気を「存在の圧縮」へと変換して一気に叩き込んだ。


 ――キィィィィィィィィンッ!!


 刹那、ミナの全身から放たれた翡翠の光が、一本の細く、しかし天を貫くほどに鋭い「因果の糸」となって夜空へと伸びた。

 それは巨神となった教皇の猛烈な圧力をすり抜け、その巨大な体内を巡る、最も不安定で、最も脆い「気の接合部」を正確に捕捉した。


 枢は、自身の「空白の右肩」を、物質的な限界を突破し、因縁そのものを断ち切るための、超次元切断鍼――『翠星の穿刺ジェイド・スタッブ』へと昇華させた。


 「(ミナ。狙うは雲の彼方。奴の喉元にある、数万の魂を縛り付けている呪縛の核、『天突てんとつ』**です。……そこを突けば、その虚飾の肉体は自らの膨大な重さに耐えかねて崩壊する。……さあ、世界で最も巨大な患者に、私からの最後で最高の処方箋をプレゼントしてあげなさい)」


 ミナが、枢の魂の絶唱に呼応し、残された全魔力と全生命力を一本の翡翠鍼に凝縮させる。

 枢の意志がミナの腕を完璧に誘導し、放たれた一鍼は、音速を超え、空間そのものを切り裂き、巨神の喉元にある「命の急所」へと吸い込まれていった。


 ――ドォォォォォォォォンッ!!


 「ガ、ハッ……!? 我ガ、体ガ……、……内側カラ、……浄化ノ炎デ、弾ケル……だと……!!」

 巨神の喉元を貫いた翡翠の光が、体内で連鎖的な浄化爆発を起こす。


 枢の放った鍼は、教皇の肉体を物理的に破壊したのではない。

 無理やり接合され、歪められていた数万の怨念の「経絡」を、瞬時にして本来あるべき正常な流れへと引き戻したのだ。

 行き場を失った膨大な負の魔力は、もはや教皇の歪んだ意志では制御できず、その巨体を内側から瓦解させ、天へと還す「救済の業火」へと変貌した。


 枢は、光となって崩れゆく巨神を見上げ、静かにその瞳を閉じた。


 「(……お疲れ様でした。教皇。……あなたの長く、独りよがりな『夢』は、今ここで終診です。……これからは、あなたが利用し、傷つけてきた魂たちと共に、果てしない懺悔の往診へと向かいなさい。……それが、私があなたに下す、鍼灸師としての最後の手向けです)」


 第314話。

 聖鍼師・枢は、自らのすべてを削ぎ落とした「無」の境地から放たれた一鍼によって、神を自称した巨像を解体し、王都に永遠の静寂を取り戻した。


 漆黒の黄昏が消え去り、王都の空には見たこともないほど美しい翡翠色のオーロラが広がっていく。

 それは、教皇の呪縛から解き放たれた万の魂が、枢への感謝を込めて踊る「救済の光」であった。

 枢の往診は、いまや一人の患者を救うことを超え、歴史と因果そのものを治療するための、人々の心に永遠に刻まれる「不滅の神話」として、その絶頂へと登り詰めていく。

本日、水曜日18:00の更新を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


第四章・第75話(通算第314話)。

教皇が変貌を遂げた「絶望の巨神」に対し、くるる先生がその圧倒的な質量の差を、ただ一点の「真理」で覆すクライマックスを描きました。

身体的な不自由を極めた枢先生が、逆に世界そのものを自らの感覚器官として使いこなし、どれほど巨大な敵であろうとも、診察台の上の「患者」としてしか見ていないその凄み。今回は枢先生の「沈黙のモノローグ」を地の文と完全に一体化させ、アクションのスピード感と情報の密度をこれまでの数倍に引き上げた「極大ボリューム」でお届けしました。


今回、巨神の体内循環を崩壊させ、教皇を存在そのものから解体するために枢が駆使した術式を解説します。

まず、ミナの生命エネルギーを爆発的に圧縮し、超高密度の貫通力を生み出すための起点とした**『気海きかい』。臍下にあるこのツボに対し、枢は自身の翡翠の気を「核融合」に似た高密度のエネルギーへと変えて流し込むことで、物理法則を凌駕する一撃を可能にしました。


そして、巨神の全機能を司る神経と魔力の合流点であり、この術式の唯一の出口である『天突てんとつ』。鎖骨の間にあるこのツボを正確に射抜くことで、枢は数万の魂を繋ぎ止めていた呪縛の糸を根こそぎ断ち切り、教皇の巨体を維持するエネルギーを、そのまま自壊のためのエネルギーへと反転させました。

最後に、放たれた破壊の波動を「浄化の光」へと再定義し、王都の全住民に一切の被害を及ぼさぬよう、全魔力をオーロラへと変換する最終回路とした『極泉きょくせん』。脇の下にあるこのツボ(概念上)を介して、枢は巨神の爆発という天災級のエネルギーを、慈愛に満ちた「救済のカーテン」へと変えて、世界の因果を正常へと戻したのです。


次回の第315話(第四章 第76話)は、本日水曜日【21:00】に更新予定です。


教皇を倒し、ついに平和が訪れたかに見えた王都。しかし、塵となった教皇の残骸から、枢先生の「声」と「両腕」が、独立した邪悪な意志を持つ『真・聖鍼師・完全体』**として再構成され、枢先生の前に立ちはだかります。

自分の過去、自分の力、自分の声。すべてを兼ね備えた「理想の自分」との、最後の、そして最も残酷な外科往診。

「(……おやおや。私の抜け殻が、ようやく私に『診てほしい』と、そう言っているようですね。……いいでしょう。自分自身を治療するというのは、鍼灸師にとって永遠の課題ですから)」


21時、本日最終。鏡像の外科往診。

聖鍼師・枢、ついに「自分という名の病」を完治させます。どうぞお見逃しなく。

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