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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼】

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第309話:根源の病、自らを「生ける黄金鍼」として大地の澱みを貫け

正午の太陽が真上から王都を照らす中、地表を揺るがす黒い脈動が庵の周囲に溢れ出しました。それは数千年前、神代の聖鍼師によって封じられた「根源的腐敗」。

くるるは、自身の透き通る左肩をミナに差し出し、静かに微笑みました。

「……。ミナ。……。……。……私を、……。……。……『正しく』打ち込みなさい。……。……。……。……今の私は、……。……。……世界で最も鋭く、……。……。……。……。……最も優しい、……。……。……。……。……一本の『鍼』なのですから」


第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼、第70話(通算第309話)。


実体を持たない病魔に対し、実体を失いかけた枢が挑む「概念の外科手術」。

ミナの震える指先が、枢の背中にある『霊台』に触れた瞬間、王都は翡翠の閃光に包まれ、時間は静止します。枢は自らの意識を「一鍼」へと研ぎ澄ませ、病魔の深層心理へとダイブします。


「……。太古の孤独よ。……。……。……。寂しかったでしょう。……。……。……。……。私が今、…………。……。……。あなたの中心を、……。……。……慈愛の言霊で、……。……。……。……。満たしてあげますよ」


12時、正午の穿刺、自己犠牲の外科往診。

聖鍼師・枢、自らを「鍼」として打ち込む。どうぞ最後までお読みください。

 王都の地下一千メートルで、数千年の眠りを破った「黒き原初の膿」が、くるるの翡翠の気に引き寄せられ、地表へと這い出してきた。

 それは形を持たず、触れるものすべてを「無」へと還す、神代の医療過誤。

 

「……なるほど。私の存在が、……。……。……あまりに純粋になりすぎたために、……。……。……。……この星が隠していた『最大の毒』を、……。……。……。……。……呼び覚ましてしまいましたか。……。……。……。……。……。因果の連鎖とは、……。……。……。……。……実にお節介なカルテですね」

 

 枢の声は、崩落を始めた庵の庭で、透き通る体から直接「空間の振動」として流暢に響いた。

 もはや肉体という境界線は曖昧になり、彼の足元からは翡翠の蓮華が次々と咲き乱れている。

 

 ミナが涙を堪えながら、枢の背に手を添える。

 『おじいちゃん……。……本当に、いいの? ……。……自分を鍼にするなんて……!!』

 

「……。案じなさい、ミナ。……。……。……鍼は、……。……。……抜くためにあるのです。……。……。……。……私がこの病魔を射抜いた後、……。……。……。……。……あなたが、……。……。……。……。……私を『人間』の側へと、……。……。……。……。……。引き戻してくれれば良いのですから」

 

 枢は、自身の「概念上の全身」を、病魔の核を貫くための、最大最強の黄金鍼――**『自己投擲・天位往診セルフ・ニードル』**へと変容させた。

 腕がない。足の感覚も薄い。だが、それゆえに彼は「一本の線」として、世界の理を貫く唯一の存在へと昇華していた。

 

「……。さあ、治療を始めましょう、……。……。……名もなき根源の澱みよ。……。……。……。……あなたが抱えてきた数千年の『虚無』……、……。……。……。……私のこの『命の煌めき』で、…………。……。……。……。一瞬で飽和させて差し上げます」

 

 枢は、自身の全神経を、自身の額にある**『印堂いんどう』**へと、自身の完全に統合された「存在の質量」を、病魔の核へと最短距離で叩き込むための、弾道計算へと直結させた。

 

 一本目の、そして「世界の傷」を塞ぐ翡翠の鍼。

 枢はミナの掌を触媒に、自らの体を「光の矢」として放ち、大地の急所、**『湧泉ゆうせん』**へと、自身の自身の翡翠の気を「絶対的な再生」に変えて一斉に叩き込んだ。

 

 ――カァァァァァァァァァッ!!

 

「……、……ア……、……。……。……温か……い……。……。……。……」

 

 病魔の咆哮が、安らかな溜息へと変わる。

 枢の体そのものが、病魔の核へと深く沈み込み、その黒い闇を内側から「翡翠の光」で塗り替えていく。

 

 くるるは、意識の深淵で、病魔の「心」へと語りかけた。

 

 二本目の鍼を、自らの「記憶」という名の熱量に変え、枢は自身の右脳を、失った両腕の「空位の可能性」を無限の光として出力し、澱みを根こそぎ浄化するために、魂の全力で投擲した。

 

 ――ドォォォォォォォンッ!!

 

「……、……はぁ……、……。……。……これで、……。……。……。……。良いのです。…………。……。……。……。……病を診て、……。……。……。……。……。己を診て、……。…………。……。……。……。……。最後には、……。……。……。……。……。……『無』になる。……。……。……。……。……。……。……。それこそが、……。…………。……。……。……。……。……。聖鍼師の……、……。……。……。……。……。……本望……ですから」

 

 枢の透き通る体が、病魔の中心で眩いばかりの太陽となる。

 自分自身を消滅させ、そのエネルギーですべてを救うという、極限の救済。

 王都を飲み込もうとしていた黒い膿は、瞬時に純白の翡翠の霧へと変わり、大地へと還っていく。

 

「逃げはしません。……。……。……たとえ、……。……。……。……私の形が……、……。……。……。……。永遠に失われることになったとしても。……。……。……。……。……私は、……。……。……。……。……。世界という名の患者を、……。……。……。……。……。……。決して……見捨てはしない!!」

 

 三本目の最終鍼。病魔を大地の栄養へと再定義し、自身の意識を人間界へと再構成するための、還魂鍼。

 

 枢は、存在の核にある**『気海きかい』**を、自身の自身の全生命を「一人の男への帰還」へと叩き込むために、魂の底からの流暢な叫びと共に爆発させた。

 

 ――キィィィィィィィィンッ!!

 

 翡翠の光が収束し、そこには病魔の消えた清浄な大地と、ミナの腕の中で、これまで以上に「脆く、しかし確かな温もり」を持って横たわる、両腕のない枢がいた。

 枢は、腕を失い、自らを鍼に変えて神代の病を往診し、自らの手で自らを救うことで、真の「不死身の人間」を完成させたのだ。

 

 次の瞬間。

 

 枢は、ミナの涙に濡れた頬を、残された「光の残響イメージ」でそっと撫で、正午の光を浴びながら、かつてないほど穏やかで、流暢な声で告げた。

 

「……。ただいま。……。……。……。ミナ。……。……。……。……。どうやら、……。……。……。……。……『鍼』から……、……。……。…………。……一人の……、……。……。……。……。……ただの……、……。……。……。……。……。……不自由なおじいちゃんに……、……。……。……。……。……。……戻れた……ようですね」

 

 第309話。

 聖鍼師・枢は、自らを最強の鍼として病魔の深淵に打ち込み、自らを消滅させる寸前で、弟子の愛という名の「引き抜き(抜鍼)」によって生還し、神をも超える「究極の人間」へと新生した。

 

 正午の静寂の中。

 枢の姿は、透き通ることを止め、誰よりも温かく、誰よりも「生」の輝きに満ちた一人の鍼灸師として、ミナの腕の中に確かに存在していた。

本日、火曜日12:00の更新を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


第四章の第70話(通算第309話)。

いのぴー先生、枢先生がついに「自分自身を道具にする」という、鍼灸師としての究極の自己犠牲と、そこからの生還を描き切りました!

神代の病魔に対し、自らを鍼として打ち込むその姿。もはや「無双」という言葉すら生ぬるい、魂の外科手術。そして最後、ミナの愛によって「ただの不自由なおじいちゃん」に戻るという展開……。枢先生の人間臭さと、神域の技術が融合した、最高潮の盛り上がりとなったのではないでしょうか。


今回、地脈を蝕む根源的な毒を浄化し、自身の意識を再構築するために枢が駆使した「自己投擲・還魂術」を解説します。

まず、大地の気の流れが最も滞り、病魔のエネルギーが集中している急所を捉え、そこへ自身の全存在を叩き込むための起点とした**『湧泉ゆうせん』**。足の裏にあるこのツボに対し、枢は自身の体を「光の黄金鍼」として打ち込むことで、大地の毒を内側から爆発させました。


そして、自身の意識を病魔の深淵に同期させ、過去数千年の絶望を「翡翠の光」で飽和・消滅させるためのアンカーとした**『巨闕こけつ』。みぞおちにあるこのツボ(概念上)を介して、枢は自身の「記憶」と「言霊」を熱量として放出し、病魔の核を治療し切ったのです。

最後に、光となった自身の存在を、再び「一人の人間」の形へと収束させ、ミナの待つ世界へと帰還するための最終回路とした『気海きかい』**。臍の下にあるこのツボを自身の全生命力で爆発させることで、枢は「鍼」という道具から、再び「枢という名の人間」へと、奇跡の再構成を果たしたのでした。


次回の第310話(第四章 第71話)は、本日火曜日**【18:00】**に更新予定です。


病魔を退け、真の人間として帰還した枢。しかし、その体は「両腕がない」だけでなく、極限の救済の代償として「言葉(声)」を失いかけていました。

沈黙の聖鍼師となった枢。そんな彼を狙う、東の国から来た「声のない刺客」たち。

枢は、声すらも失った状態で、どうやって世界を診るのか。

「……(ミナ。……。……。……。私の代わりに、……。……。……。……私の『想い』を、……。……。……。……。……。鍼に乗せて……、……。……。……。……。……。届けてください)」


18時、夕刻の往診。沈黙の外科往診。

聖鍼師・枢、ついに「心」だけで診ます。どうぞお見逃しなく!

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