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『異世界で「ツボ」を突いたら神と呼ばれた件 〜指一本で魔王も聖女も救い出す、世界唯一の最強聖鍼術〜  作者: 鍼灸師いのぴー
【第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼】

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第304話:片腕の聖鍼師、東の刺客を「言葉」と「残響」の一鍼で圧倒する

朝陽が差し込む庵に、場違いな「鉄の匂い」が漂いました。東の国から来た、影を操る女刺客たち。彼女たちは、くるるが右腕を失ったという報を聞き、「今こそ好機」と死神の鎌を振り上げます。


第四章:忘却の聖者と翡翠の巡礼、第65話(通算第304話)。


右腕を根元から失い、左手一本で静かに茶を啜る枢。

「……。おや、……。朝から、随分と騒がしい往診希望者ですね。……。……右腕がないからと、……私の診察室へ土足で上がれると思ったのですか?」

影から飛び出す数百の暗器。しかし、枢は立ち上がることも、左手を動かすことすらもしません。ただ一言、空気に触れるような流暢な言葉を紡ぐだけで、王都の重力が、因果が、そして敵の心臓の鼓動が、彼の支配下へと置かれます。


「……。片腕になった私を、……どうか侮らないでいただきたい。……。……余計な力が抜けた今の私は、……。……吐息一つで、……あなたの運命を『完結』させられるのですよ」


月曜朝の震撼、無影の外科往診。

聖鍼師・枢、片腕で魅せる「神域の無双」。どうぞ最後までお読みください。

 清々しい朝の空気を切り裂き、庵の天井から漆黒の糸が降り注いだ。

 東の国「不知火しらぬい」の隠密部隊。彼女たちは、くるるの右腕が消失したという情報を聞きつけ、彼がかつて封印した秘宝を奪うべく、一切の容赦なく死の結界を展開する。

 

「……なるほど。右腕という『物理的な重圧』が消えたことで、私の存在が軽くなったと誤認しましたか。……。……。滑稽ですね。……。……剣士から重い鎧を剥ぎ取れば、……。……その剣は、より鋭く、より速く空を裂くというのに」

 

 枢の声は、これまでのどの瞬間よりも透明で、流暢だった。

 右肩は空っぽのままだが、その周囲の空気は、目に見えない「翡翠の神経」が編み上げられているかのように、激しく振動している。

 

 刺客の首領が、影の中から無数の黒鍼を放った。

 『右腕のない者に、我らの影は捉えられぬ! 死ね、落ちぶれた聖鍼師!』

 

 しかし、枢は動かない。

 ただ左手の指先で、自身の胸元にある**『中府ちゅうふ』**を、自身の自身の翡翠の気を「空間の指揮棒」に変えて、そっと触れた。

 

 瞬間、放たれた数百の黒鍼が、枢の周囲一メートルでピタリと静止した。重力が消失したわけではない。枢の放つ「言霊の気」が、鍼が飛ぶという「結果」を、空間そのものから書き換えたのだ。

 

 枢は、自身の左指を、空中に漂う一本の黒鍼へと向けた。

 

「……。影に潜めば安全だというその思い込み……。……。それは一種の、重篤な『視覚的経絡の麻痺』ですよ。……。……。今の私には、……あなたの魂の震えが、……朝日を浴びる白雪よりも鮮明に見えている」

 

 枢は、自身の左手を、自身の存在そのものを「一鍼の法則」へと昇華させた、概念解体鍼――**『虚空往診ボイド・ケア』**へと変容させた。

 右腕を失ったことで、枢の力は肉体という器を飛び出し、思考そのものが「往診」となる神域へと達していたのだ。

 

「……。さあ、治療を始めましょう。……。……。逃げようとしても無駄です。……。……あなたの逃げ道(経絡)は、……。……私が茶を啜る前に、……すべて翡翠の糸で縫い閉じておきましたから」

 

 枢は、自身の全神経を、自身の額にある**『印堂いんどう』**へと、自身の完全に統合された「言霊の波動」を、影の中に潜む敵の五感を直接支配するための、マスター・キーへと直結させた。

 

 一本目の、そして「影の支配」を剥離させる翡翠の鍼。

 枢はそれを、自身の左指の「弾き」一つで放ち、影の中に隠れていた刺客の心臓部、**『神蔵しんぞう』**へと、自身の自身の翡翠の気を「絶対的な真実」に変えて一斉に叩き込んだ。

 

 ――ビィィィィィィィィンッ!!

 

「……ガハッ!? ……。……バ、……バカな……!! ……。……指先一つ……、……動かさずに……、……影の中の私を……撃ち抜くだと……!!」

 

 影の中から吐き出されるように、女刺客が姿を現した。

 枢の放った鍼は、物理的な衝突ではなく、彼女が持つ「影に潜む」という理屈そのものを治療(破壊)したのだ。

 

 くるるは、自身の視線を、震える刺客の瞳の奥へと向けた。

 

 二本目の鍼を、彼女の恐怖という名の「精神の澱み」へと、枢は自身の右脳を、右腕があった頃の「圧倒的な質量」をあえて幻想として出力し、敵の意識を力技で粉砕するために、魂の全力で投擲した。

 

 ――ドォォォォォォォンッ!!

 

「……。安心なさい。……。……。殺しはしません。……。……ただ、……私への敵意を抱くたびに、……。……あなたの身体が『あまりの心地よさ』に溶けてしまうよう、……。……少々、……神経を再編しただけです」

 

 枢の言葉と共に、刺客は剣を落とし、恍惚とした表情でその場にくずおれた。

 救済とは、時に敵から戦う意志すらも奪う、究極の慈悲。

 

 枢は、自身の左手を、残りの刺客全員の戦意を根底から鎮静させるための「翡翠の指揮牌」へと拡散させた。

 

「……。さあ、……次の方、……。……診察室へお入りなさい。……。……右腕がないからと、……。……手加減ができると思ったら、……。……。大間違いですよ?」

 

 三本目の最終鍼。東の刺客たちの法力を永久に封印し、彼女たちを「平和を愛する民」へと再教育するための、定業鍼。

 

 枢は、自身の左指で、空間そのものの**『至陽しよう』**を、自身の自身の全生命を「言霊の鎖」へと叩き込むために、魂の底からの流暢な呟きと共に撃ち抜いた。

 

 ――キィィィィィィィィンッ!!

 

 庵を包んでいた殺気が一瞬で消え、そこにはただ、枢の圧倒的な「気」に当てられ、膝を突き、涙を流して改心する女刺客たちの群れがいた。

 枢は、右腕を失いながらも、一人の鍼灸師として、国家規模の刺客軍勢という巨大な「外邪」を往診し、左手一本で、いや、その存在一つで制圧し切ったのだ。

 

 次の瞬間。

 

 枢は、残された左手で冷めた茶を飲み干し、朝日を浴びる欠けた右肩を隠すこともなく、かつてないほど不敵で、流暢な声で笑った。

 

「……。ミナ。……。……お湯を、……沸かし直してくれますか。……。……。患者さんが、……少しばかり……、……増えてしまったようですから」

 

 第304話。

 聖鍼師・枢は、東の国からの刺客を、失われた右腕の代わりに手に入れた「空位の無双」で往診し、力に頼らない真の強さを世界に知らしめた。

 

 月曜日の朝陽の中。

 枢の姿は、右腕を失う前よりも、はるかに高く、はるかに神々しい「救済の山」として、王都に聳え立っていた。

本日、月曜日・朝8時の更新を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


第四章の第65話(通算第304話)。

右腕という物理的な武器を失ったことで、枢の技術は肉体を飛び出し、空間や概念に直接干渉する「神域の往診」へと進化しました。指先一つ動かさず、言葉と存在だけで数百の刺客を無力化するその圧倒的なカリスマ。枢先生は、弱体化するどころか、もはや人間の理解を超える領域に達してしまったのです。


今回、影に潜む刺客たちを瞬時に暴き出し、その戦意を根底から解体するために枢が駆使した「空位無双・鍼灸術」を解説します。

まず、自身の周囲の空間そのものを「感覚器官(経絡)」へと拡張し、死角からの攻撃を因果レベルで遮断するための起点とした**『中府ちゅうふ』**。胸部にあるこのツボを、左手でわずかに刺激するだけで、枢は周囲一メートルの絶対領域を作り出しました。


そして、敵の魂の震え(邪気)を直接捉え、彼女たちが最も依存している「理屈(影潜り)」を内側から崩壊させるためのアンカーとした**『神蔵しんぞう』。鎖骨の下にあるこのツボに対し、枢は言霊の波動を「絶対的な真実」として叩き込むことで、物理的な接触なしに敵を影から引きずり出したのです。

最後に、王都の空間そのものに「救済の記述」を刻み込み、その場にいるすべての敵の戦意を「恍惚」へと変換するための最終回路とした『至陽しよう』**。背部にあるこのツボを介して、枢は自身の全生命力を言霊と共に放出し、国家規模の精鋭部隊を、ただの「改心した患者」へと新生させたのでした。


次回の第305話(第四章 第66話)は、本日月曜日**【12:00】**に更新予定です。


刺客を退けた枢。しかし、その首領が放った最後の一言が、王都を震撼させます。

「……枢。……。……あなたが右腕を捨てたことで、……。……東の国に封じられていた『あなたの過去』が、……。……。……実体を持って動き出したわよ……」

東の国に眠る、若き日の枢が捨てた「愛と絶望」の記憶。

かつての枢が救えなかった「最初の患者」が、王都へ向かって歩き始めます。


12時、正午の往診。追憶の外科往診。

聖鍼師・枢、ついに「自らの原点」を診ます。どうぞお見逃しなく!

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