第24話:王女の加勢と、黄金の「排毒」
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宰相バルカの陰謀を打ち砕き、ついに呪いの核へと迫る枢。
暗い海底で道を照らすのは、必死に追いかけてきた王女の光でした。
ついに黄金の鍼が、姫の喉に眠る「黒い棘」を捉えます。
深海に響き渡る、奇跡の歌声をお聴き逃しなく!
枢は振り返りもせず、空いた左手でバッグの底から三本の銀鍼を抜き放った。
それはバルカの放った影の触手を空中で縫い止め、そのまま正確無比に宰相の体の急所――『肩髃』と『曲池』を貫いた。
「な、何っ……!? 体が、動かん……!? 指先一つ、魔力一つ練れぬだと……っ!?」
「『運動神経』と『魔力回路』を一時的に遮断しました。……そのまま、自分の犯した罪の重さを噛み締めていなさい」
枢は氷のような声で言い放つと、再びミーナ姫の喉へと意識を戻した。
「王女様、助かります! あなたの持っているその潜水艇のライト……魔力の純度が高い。最大出力で、私の打った鍼の『影』を照らしてください! 鍼の進む道を、光で固定します!」
「は、はいっ! 王家の誇りに賭けて、一ミクロンも動かしませんわ!」
セレスティアラが必死に魔法具を操作し、清浄な光をミーナの喉元に収束させる。
光の導き。深海の闇と水圧に阻まれていた枢の感覚が、その光によって研ぎ澄まされた。
金鍼が、ついに「黒い棘」の核――呪いの根源をガッチリと捉える。
「……捉えた。逃がしませんよ」
枢は、鍼をゆっくりと、だが力強く回転させた。
『雀啄』――まるで小鳥が餌をついばむように、微細な振動を呪いの核に送り込む。
ミーナの喉から、不気味な悲鳴のような音が漏れる。黒い棘が、最後の抵抗として彼女の喉を裂こうと暴れるが、王女の光がそれを封じ込めた。
「……これで、おしまいです。……抜けええぇっ!!」
枢の咆哮と共に、金鍼が一気に引き抜かれた。
ミーナの喉から、噴水のように黒い霧が噴き出し、その中心から、禍々しく折れ曲がった「古の深海魚の骨」が飛び出した。それは宰相が姫を呪い殺すために仕込んだ、毒の触媒だった。
刹那。
静まり返った海底の宮殿に、一筋の、あまりに透き通った「音」が満ちた。
「……ああ……あ、ああああ……あぁぁぁ……♪」
それは、失われていた人魚姫の歌声。
呪縛から解き放たれた彼女の声は、癒やしの波動となって宮殿を駆け巡り、バルカの放った淀みを浄化し、王女の疲れを癒やし、そして枢の頬を優しく撫でた。
「……お見事です、姫様」
枢は、意識を取り戻し、涙を流しながら自分を見つめるミーナの頭をそっと撫でた。
「……素晴らしい、喉鳴り(ひびき)でした。……さあ、助手。帰りましょう。地上のお茶が、恋しくなりました」
王女は、枢の腕に抱きつきながら、これ以上ないほどの笑顔で頷いた。
深海の底。最強の鍼灸師と、向こう見ずな王女。二人の絆が、また一つ、歴史を塗り替えた瞬間だった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
『深海編』、完結です。
ミーナ姫の歌声が海底に響き渡るシーン、執筆しながら私自身も胸が熱くなりました。
どんなに重い水圧があっても、正しいツボを突き、正しい光を当てれば、必ず「声」は届く。
そんな想いを込めて、枢とセレスティアラの共闘を描きました。
「歌声が戻って本当に良かった!」
「枢と王女様のコンビ、最高にエモい!」
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さて、次からは新章。
王都へ戻った二人を待っていたのは、何やら穏やかではない空気。
聖鍼師の物語は、さらなる波乱へと突入します……!
次回、第25話は本日**【12:00】**に更新予定です。お楽しみに!




