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クロノワールド -再創-(Re:Creation)  作者: ゼロザム=ルーゴ
第壱章 戦士ノ活動録篇
2/23

第弐話「青ノ閃光」

この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

時刻は昼。

メビウスは街中を歩いていた。

車が交差し、すれ違うように走り、その両側には人々が行き交っていた。

その中でメビウスは近くにあったお店で花束とお菓子を購入した。

会計を済ませたメビウスは再び目的地の方へと歩き出した。


そうしてしばらくして目的地にたどり着いた。

そこは辺りが草原に包まれている霊園であった。

メビウスは一つの墓に寄り、先程買った花束とお菓子を置くためにしゃがんだ後、黙祷をした。

その墓に刻まれていたのはヒカリノという文字、メビウスの苗字であった。

そして、この墓の中に眠るのはメビウスの家族であった。


かつてメビウスには父親のムゲンに母親のカスミ、姉のミノカに兄のエメラがおり、そしてメビウス自身を含めて五人で構成されていた。

何気ない幸せな暮らしを送る

だが…

ムゲン「なっ!?」

カスミ「っ!」

メビウスが物心が着く前に両親は運転中にトラックと衝突して死んだ。

その時、メビウスもいたが、奇跡的に生きていた。

何故生きているのか、それはメビウス自身にもわからなかった。

それからはエメラは学生を辞めて、戦士として活動。

ミノカが家事や育児を行っていた。

勿論、姉は当時学生だったので行かなければならなかった。なので、メビウスは一日の大体は一人でいる事が多かった。

小学四年生の頃、メビウスの事をよく面倒見てくれたミノカも亡くなった。

原因は突如、一つの市街地区に発生したパンデミックによるものであった。

当時のミノカは修学旅行としてそこに訪れていた。

ミノカが感染した病は新種のものであり、原因不明で解析するのに困難であった。

ミノカ「…あぁ……ごめんね、メビウス…寂しいよ……」

そして、治す事も出来ず、感染しない為として透明シェルターで隔離され、人肌に触れる事も出来ぬままミノカは息を引き取った。

メビウス「うわああああああ!!姉さん!!」

勿論、メビウスは大泣きし、エメラも静かに涙を流した。

最後はエメラまでも失った。

小学五年生の頃で、犯罪組織 ヘリオス社との闘いの中で戦死したとの事だった。

エメラ『メビウス、すまない。生きろよ…』

メビウス「兄…さん?」

その最期の言葉は電話越しであった事をメビウスは今でも覚えている。

結果的にメビウスは天涯孤独となり、家を出る事になった。

居場所の無いメビウスはただ独り、彷徨うだけであった。


メビウスは時にそう思い出す事があるが、なんとかそれを払拭していた。

メビウス自身、あまり良い記憶では無いからである。

そうしてメビウスは立ち上がり、備えていたお菓子を回収した。

メビウス「んじゃ、行ってくるね」

メビウスは墓に言葉をかけ、この場を去っていった。


次にメビウスが向かったのは路地裏であった。

お供えものであったお菓子を食べながらメビウスは懐から一枚の紙を取り出し、そこに記された依頼の内容を黙読した。


事の経緯は剣が隊長室に訪れた後の数十分後から話が始まった。

その時のメビウスは隊長室におり、机に接して椅子に座る未来隊長と向き合うように話し合っていた。

メビウス「F市街地区で多くの選手の選手生命を絶たれるか死んでいる?」

メビウスは未来隊長から伝えられた用件を聞いた事をオウム返ししながら鳩が豆鉄砲を食らったような顔で驚いていた。

未来「そう。それが今回、急遽君に頼む事になった依頼だよ。」

未来隊長から告げられ、メビウスに与えられた依頼に記されたその内容は事件の原因究明とその解決である。

依頼主はその中の一人の選手と関わりがあった奥さんであり、曰く、その選手はボクサーとの事。

メビウス「他の選手に関する情報ってある?」

未来「あるよ」

未来隊長は他に被害を受けた選手について記された紙の資料をメビウスに渡した。

メビウスはそれに目を通す。

ボクサーの他に柔道家やプロレスラーなど種目は別々で、統一されていなかった。

メビウス「…わかった、やってみる。」

未来「ありがとう、頼んだよ」

メビウスの返答に未来は感謝をした。


そして時は戻り、現在。

メビウスは路地裏である人物と待ち合わせをしていた。

メビウス「あ、いたいた。おーい!」

メビウスはその人物を見つけると、手を振りながらその人に歩み寄った。

「おぉ!常連若造じゃねぇか!!」

コートに身を包んだ中性的な容姿をした人がメビウスの存在に気が付き、彼を示すであろうあだ名を呼びながら手を振り返した。

メビウス「クヴェレ・アラクネさん、少し聞きたい事があるんだけど、良いかな?」

メビウスはコートの人物 クヴェレ・アラクネに協力を持ちかけた。

クヴェレ「良いも何も、いつもの事だろぉ?手伝ってやるぜ!!」

クヴェレはメビウスに見せるようにサムズアップをしながら、それを良しとし、積極的な姿勢をとった。

クヴェレは裏社会に関する情報を所持している。所謂、情報屋というものだ。

クヴェレはメビウスの頼みで彼に情報を提示したり、時に話し合ったりする事があった。

クヴェレ「んで、今回はどういった要件だ?」

クヴェレは本題に入ろうと、メビウスに内容を訊いた。

メビウス「これ」

そう言いながらメビウスは選手について記されている紙の資料をクヴェレに渡した。

クヴェレはそれらに目を通す。

メビウス「種目問わずで、F市街地区にて行われているんだよね。何か知っている?」

メビウスは事件の特徴を出し、クヴェレに質問した。

クヴェレ「うーん…もしかして、あれかな。裏闘技場ってヤツ」

メビウス「裏闘技場?」

クヴェレ曰く裏闘技場とはF市街地区のとある建物の地下にて開催されているものらしい。

そこを取り締まり、チャンピオンとして君臨しているのがモハメド・タイソンという人である。

モハメドは大勢の部下を使い、選手を誘拐し、半ば強制的に試合をやらされている。

被害を受けた選手は選手生命を絶たれるか、最悪の場合は死ぬ事もある。

メビウス「成程ねー、てか、よくここまで大事になってないな。なんでだ?」

メビウスはふとここで疑問に思った事をクヴェレに訊いた。

これだけの多くの選手が選手生命を絶たれていて、死者が発生している。それ以前に誘拐されている時点で対処しているはずだ。だが、実際にはそうはなっていない。

クヴェレ「どうやら主催がかなりの権力者だ。それ故に情報を揉み消したり、撹乱したりと色々手回ししている。」

クヴェレがその理由を話す。

メビウス「その場所が何処なのかわかる?」

クヴェレ「わかるよ」

メビウスの問いに答えるようにクヴェレはポスターが表示されているスマホの液晶画面を見せた。

メビウス「どうも、クヴェレさん」

メビウスはクヴェレに笑みを見せ、この場を去り始めた。

クヴェレ「あ、少し待て!」

メビウス「ん?」

そんなメビウスをクヴェレが呼び止める。

クヴェレはスマホを操作していた。

すると、メビウスの腕時計から何かが受信した。

メビウスはそれを確認すると、笑みを浮かべた。

メビウス「あんがと!クヴェレさん!」

メビウスは再び歩き出しながらクヴェレにそう告げた。

クヴェレ「機会がありゃ、共に飲み交わそうぜー!」

メビウス「飲み交わすでもジュースで大丈夫ー?」

クヴェレ「大丈夫だー!」

二人は離れながらも大声でやり取りをした。

それを終え、微笑みながらメビウスを見届けるクヴェレ。

メビウスはこの場から姿を消した。


メビウスは裏闘技場が開かれているボウリング場にたどり着いていた。

ボウリング場に目を向けながらメビウスは腕時計を通して未来隊長に連絡をしていた。

メビウス「隊長、依頼の件について秘密裏に行われていた裏闘技場が原因だということが判明したからその証拠をそっちに送ったよ」

メビウスはクヴェレが提供してくれた証拠を未来隊長に送った。

その内容は裏闘技場について、そしてその試合内容であった。クヴェレは情報収集として密かに活動していたのだ。

そう、先程クヴェレがスマホでメビウスに送った情報の正体はこれであった。

未来「報せは確認した、問題ない。」

メビウス「んじゃ、次の段階に進むよ」

未来「了解、気を付けてね。モハメド・タイソンはかなりの強者だよ。」

未来隊長の確認を聞くと、メビウスはそう伝えた。

未来隊長はそれを承諾すると同時に警告もした。

メビウス「大丈夫、ありがとう」

メビウスは未来隊長に感謝を伝えながら、裏闘技場が行われているボウリング場の中へと入っていった。

真っ暗な建物の中に入ると何処からか観客の声が聞こえてくる。

メビウス「地下からか…」

歓声を頼りにメビウスは移動する。

すると、地上を照らす地下へと通ずる階段を見つけた。

メビウス「ここか…」

メビウスはすぐさま、その中へと入っていった。


地下は先程までいた地上とは異なり、光が照らし、大勢の観客がいた。

観客は全員直立していて、地下の中央にて行われている試合を観ながら盛り上がっていた。

メビウスは試合の様子を凝視する。


そこでは一人の柔道の選手と黒のリーゼントに褐色肌に赤眼、筋骨隆々で巨躯な肉体を持ち、黒ズボンに赤シャツを着て、その上に暗い緑色のロングコートを羽織っていた男が試合を行っていた。

だが、試合というにはあまりにも酷く、恐ろしいものであった。

というのも、選手が一方的にやられ、時に周りの観客に捕らえられ、その隙を男が徹底的になぶっていた。

メビウス(酷いな、こいつは…)

男の一方的な蹂躙に盛り上がる観客とは対称的にメビウスは嫌悪感を抱いた。

選手「…」

男「おいおい?どうしたァ?こんな程度かよ?」

死の淵に立たされている選手、その命の灯火は微かに消えかかっていた。

だが、それでも男を睨んでいた。

男「あ?悔しいか?悔しいだろうなァ…」

男は下卑た笑いを浮かべながら選手の顔を見た。

選手「お前、愚かだな…」

男「あぁん?」

すると、選手は突然そんな事を口にした。

男は突然何を言い出したのかとわからずにいた。

そして、選手は男にこう言った。

選手「モハメド・タイソン、お前はこんな卑怯なやり方でしか、弱いヤツだけにしか勝てない未熟者だ!」

選手は最後まで言い切ると、何処か満足したような表情を浮かべた。

それを聞いた男 モハメド・タイソンは怒り出し、選手の首を掴んだ。

モハメド「うぜぇ…さっさと死ね」

モハメドは首を掴んだ方とは反対の手を引き、その選手に向けて拳を突き出した。

それが選手の顔面に直撃するかと思った次の瞬間、モハメドの顔面に蹴りが直撃、それにより後ずさった。

選手は突然の事に驚愕する。

メビウス「アンタのその勇気、中々かっこいいじゃねぇか」

すると、選手の前にメビウスが現れた。

どうやってここに来たのか、どうやってこの大勢の観客が囲い、埋め尽くされているリングの上へと着地したのか、選手には理解が出来なかった。

モハメド「クッソ…誰だァ!?テメェ!!」

モハメドは辺りを見渡し、メビウスを見つけると、睨みながら、怒鳴るような大声で訊いた。

メビウス「うっせぇなぁ…」

メビウスは手で耳を塞ぎながら、不愉快と言わんばかりの嫌な表情を浮かべた。

メビウス「あ、選手交代な」

メビウスは選手に顔を向けながらそう言い出した。

選手「…わかった。誰だが知らないが、助かった」

選手はメビウスの言葉通りにした。

モハメド「無視すんじゃねぇ!!ゴラァ!!」

突然、モハメドが怒りの形相を浮かべながら剛拳をメビウス達に向けて突き出した。

メビウスは選手を掴むと同時、瞬時に姿を消した。

モハメド「なんだァ!?」

モハメドは突然の事に驚く。

突き出した拳は空を切った。

モハメドが怒り心頭に必死にメビウスを探す。

すると、先程までモハメドがいたところにメビウスはいた。

選手「何がどうなっているんだ!?」

突然の出来事に選手は困惑していた。

メビウス「安心しろ、アンタは生かす。そんであのクソゴリラはぶちのめす。」

モハメド「ゴラァ!避けんなァ!!」

モハメドは再びメビウスに向かって走り出し、拳を振るった。

次の瞬間、選手を担いだメビウスは超高速でモハメドの拳を回避し、彼の背中に回る。

そしてそのまま走り出し、彼の背中を蹴って跳んだ。

それは一気に地上へと通ずる階段へと着地し、メビウスは登り始めた。

モハメド「テメェら!あのクソガキを追いかけろ!!なんとしてでもだ!!」

モハメドはメビウスがいないとわかると、自身部下に命令を下した。

観客である部下達はその命令に反応するかのように声を上げ、メビウスが登った階段を使って、追いかけ始めた。

モハメド「おい!あのガキ逃がさねぇように建物全てを封鎖しろ!!」

近くにいた主催はモハメドの指示にすぐに応じ、何かひとつのボタンを押した。


場面は変わり、建物の出入口の外。

メビウスは選手をその場で下ろしていた。

メビウス「CSFの連中は呼んだ。彼らを頼っていきな」

選手にそう指示すると、メビウスは再びその建物の中へと入っていった。

選手「待て!アイツは俺達でさえも勝てなかったヤツだ!」

選手はメビウスを止めようとした。

メビウス「さっきのアンタ、モハメドに対して弱者だけにしか勝てない未熟者とか言ってたじゃん。何言ってんだ?」

さっきと言っているが矛盾しているとメビウスはツッコむ。

選手「確かにそうは言った。だが、アイツは中々に強い。若いお前が行ったら死ぬぞ!」

選手のその言葉をメビウスは静かに聞いていた。

しばらく、辺りは静寂となっていた。

すると、メビウスが微笑み始めた。

メビウス「…なーに、心配すんなよ。こっちだって相当鍛えてんだ。死なねぇよ」

その静寂を切ったのはメビウスであり、選手に向けてそう語りかけた。

そして、足を踏み入れ、建物の中へと入っていった。

選手が止めようと思うのも束の間、建物の出入口がシェルターで封鎖されてしまった。


暗い闇に包まれたボウリング場。その中でメビウスは肩を回したり、首の骨を鳴らしたりという仕草をしながら歩いていた。

多くの足音がボウリング場の中を響かせている。

どうやら何人か自身の周りを囲っているとメビウスは把握した。

その中でひとつ辺りを振動させるような足音が鳴り響いた。

モハメド「おいおい、わざわざ死にに来たのか?」

大きな足音の持ち主であったモハメドがメビウスに向けて、楽しそうな声色でそう言った。

それと同時だった。その足音が静まり、止まったとわかった。

モハメド「遠慮すんなよ、嫌でも味わせてやる」

楽しそうな声色であったが、それは何処か怒りが宿っていた気がしたとメビウスは思った。

そう思いつつも、メビウスはため息を吐く。

そして、冷たく鋭い眼がモハメドを見つめた。

メビウス「御託はいいから来いよ!虫けらが!」

メビウスの言葉にモハメドは頭に血管を浮かばせた。

モハメド「テメェらァ!!コイツを殺せェ!!!」

怒るモハメドの言葉に反応するように周りにいた部下達がメビウスに向かって迫り来る。

一人の男がメビウスに向かってナイフで刺しかかる。

メビウスはそれをすぐに回避し、迅速に右拳を振るった。

それが直撃し、その男は倒れる。

また別の方向からもう一人の男がメリケンサックを使って、殴り掛かる。

しかし、そうする前にメビウスが男の顔面に蹴りを入れ、男の顔は地面に叩きつけられた。

蹴り終え、あるものを視認した。

それは五人くらいの部下が拳銃をこちらに向けていたものであった。

撃つだろうとメビウスは確信した。

すると、メビウスは双方の指先から前腕にかけて、両脚が青く変化する。

そこから放たれるオーラが炎の如く燃え盛る。

メビウスは瞬時に五人の方へと移動した。

その速さは今までのとは比にならないものであった。

高速否、それは音速であった。

五人はメビウスの行動に危機感を覚えると、焦りの表情を浮かべながらその引き金を引いた。

放たれた五つの弾丸はメビウスを捉えていた。

しかし、メビウスは落ち着いた様子で弾丸を押し退けたり、回避したりしてなんとか対処した。

五人の部下の横を通り過ぎるメビウス。

次の瞬間、五人の男は目にも追えない見えざる攻撃を受け、すぐに気絶した。

モハメド「何してんだ!テメェら!!大勢でかかって殺せ!!」

モハメドの発言に部下は応じ、大勢で一気に攻めてきた。

次の瞬間、メビウスが超加速する。

周りは微かにゆっくりと動いているが、それは最早、動いていないに等しかった。

メビウスは彼らに対して、連続パンチを繰り出した。

ひとつひとつの拳が部下に直撃し、それは確実に相手を仕留めるものであった。

メビウスはそれを一方通行にではなく、全体的に食らわせた。

自身を回転させながら、確実に拳を当てていった。

そうして、モハメドの部下は一掃。全滅した。

超加速してから今に至るまでの時間はおよそ0.2秒であった。

モハメド「何が…起きた?」

モハメドは突然の出来事に驚愕していた。

さっきまで大勢いたはずの部下が地を這うように倒れていた。しかも、全員気を失っている。

メビウス「…次はアンタだ、モハメド・タイソン」

メビウスは冷たく鋭い眼でモハメドを睨みつけ、人差し指を向けた。

この状況に主催は焦りを見せていた。

だが、それとは対称的にモハメドは深呼吸して落ち着かせていた。

そして、メビウスを睨み返した。

モハメド「餓鬼がァァ!次は俺が相手だァァァ!!」

モハメドは雄叫びをあげるようにメビウスにそう宣告した。

メビウス「成程ね…そう来たか」

メビウスはそう言葉を吐いた。

本当なら闘うという面倒事はメビウス自身、避けたかったのだが、今それとは真逆な事が起き、やむを得ないと彼は思った。

モハメドはメビウスに近付いてくる。

双方の拳を打ち付けるとそこからは想像もつかない音が聞こえた。

メビウス(ん?金属音?異質な感じ…って事は、能力者か)

メビウスは再び構え始め、モハメドの事を最後まで目を離さずにいた。

そして、再び闘いの火蓋は切られた。

まず先手を打ったのはモハメドであり、硬化した剛拳をメビウスに向けて振るった。

メビウス「そう簡単に当たってたまるかよ」

メビウスはすかさず高速でそれを回避をする。

その剛拳が地面に直撃したその時だった。

なんと、そこにクレーターが発生した。

叩きつけた箇所を中心に割れ目が入り、瓦礫が宙に舞った。

メビウス「おいおい!クソゴリラとは言ったが、パワーあり過ぎんだろ!」

メビウスはモハメドの破壊力に度肝を抜かれた。

あれに当たれば、間違いなく死ぬとメビウスは直感的にすぐさま理解した。

そう決断したその直後、メビウスはモハメドの顔面に横蹴りを食らわせる。

モハメド「そう易々と!二度も!喰らうかよ!!」

直撃はするが、モハメドが能力で顔面を硬質化し、ダメージを防いだ。

逆にメビウスの足に反動が生じる。

メビウス「クッソ!痛ってェ!!」

それによりメビウスの顔に苦悶の表情を浮かべる。

その隙をモハメドは逃さず、片手で蹴り出した脚を捕らえる。

モハメド「効かねぇよ!二度もなァァァ!!!」

メビウス「うおっ!!」

モハメドがもう片方の手でも掴むと、ハンマー投げの選手のようにメビウスを振り回した。

メビウス「うわああああああああ!!!」

そのままメビウスは身体ごと持っていかれ、旋回するようにやられる。

モハメド「さっきはァ!良くもやりやがったなァッ!!今度はこっちの番だ!!」

メビウスを振り回すその手をモハメドは離した。

そのままメビウスは吹き飛ばされ、壁に激突する。

メビウス「あ…が……」

メビウスはなんとか立ち上がろうとするも、上手くいかず、片手で頭を抱えながら四つん這いとなる。

壁の激突により、メビウスは少し脳震盪を起こす。

メビウス(アイツ…硬質化か……)

その状況下でメビウスはモハメドが持つ能力について理解をした。

硬質化の能力、自身の肉体を鋼鉄の如く硬くなる能力。その強度はかなりのものである。

故に建物の地面を破壊していたのだ。

メビウス(見た目には何の変化も無いのもそういう事か…)

メビウスはそう推察した。

そうして、少し回復したメビウスはふらつきながらも、なんとか立ち上がる。

モハメド「よく耐えたなァ…普通なら立つこともままならないぜ?」

モハメドは下卑た笑みを浮かべながらそう言った。

メビウス「普通じゃねぇのかもな…俺はよ」

メビウスは歯を見せるように笑みを浮かべた。

すると、モハメドは突然笑い出した。

モハメド「ガッハッハッ!認めんのかよォ!!」

恐らく馬鹿にしているのだろうとメビウスは認識する。

メビウス「モハメド、アンタに言っとくぜ?」

メビウスは笑みを浮かべながらモハメドを見た。

メビウス「俺はよ、普通じゃない事が何よりも嬉しいんだ。俺らしさがあるからよ…つーかよ、それって人によって違うんじゃねぇのか?」

モハメド「あ?何言ってんだ?テメェ」

モハメドはメビウスの言葉に理解が出来なかった。

それを他所にメビウスは話を続ける。

メビウス「異常なものは周りから、世間から、世論から何かしら言われるだろう。もしかしたら、叩いてくる野次馬もいる。」

すると、メビウスの全身に青いオーラが放たれ、それはメビウス自身を身に纏った。

その直後だった。オーラが一点に集結し、人型の何かを形成していった。

モハメド「あぁん?なんだァ…そいつは?」

メビウス「どう言おうが勝手だし、そう思うならそうでいい。なんであろうと、誰がなんて言おうと、俺は俺だ。俺は正義組織 クロノス社 戦士 No,2の青の閃光…」

一点に集結した人型のそれはメビウスの能力。

スピードに特化した青い化身 ソニックスターであった。

そして、その能力者の名は…

メビウス「ヒカリノ メビウスだ。覚えておきな!クソゴリラ!!」

モハメドはクソゴリラという言葉を聞き、また再度怒りが湧き上がる。

モハメド「おもしれェ!やってみろよ!クソガキィ!!」

だが、それだけではなく、どんなものかと興味ありげに思いつつ、何処か楽しみにしていた。

メビウス「もうやったよ」

すると、メビウスがこんな事を言い出した。

モハメドが何を言っているんだと思わんばかりの表情を浮かべる。

そして次の瞬間、モハメドに謎の衝撃が襲った。

目にも止まらぬ超高速の打撃がモハメドの全身を走るかのように迫る。

その打撃は一度ならず、二度三度とまるで終わりが無いと悟ってしまうように止むことが無かった。

硬質化しようと思うも、最早そうする事も遅かったと無駄に感じてしまった。

モハメドにとっては長く、しかし、実際は周りから見るとそれは尋常ではない程短かった。

そうして、最後の一撃が胸元に直撃すると同時、弾丸の雨のように降ってくる打撃は止んだ。

そうして、モハメドは気絶したまま前のめりとなって倒れた。

メビウス「俺の代わりにこの化身が、そしてそれはアンタが認識する前に、やり終えたよ」

メビウスは化身を解除した後、そのまま能力も解除し、モハメドにそう言葉をかけた。

だが、モハメドは何も答えてくれなかった。

メビウス「ま、言っても、もう遅かったけどさ」

メビウスはそのままこの場を去っていった。

翌日、モハメドといった裏闘技場の関係者達は全員逮捕された。

権力者であった主催もメビウスが提示した証拠により、事実をもみ消す事が出来なかった。

それどころか世間から大バッシングを受けていて、モハメドと同様、ヘルズケージに収容された。


クヴェレ「って感じか…」

路地裏にて、クヴェレは裏闘技場について記された新聞を読んでいた。

メビウス「あ、クヴェレさん!」

クヴェレ「おぉ!メビウスか!良くやったじゃねぇか!」

メビウスはお菓子といったものが入ったビニール袋を片手にクヴェレに接近する。

クヴェレはメビウスに手を振り、彼が近づくと同時に肩を組んだ。

メビウス「いや、なんも依頼に答えただけだよ」

メビウスは謙虚な様子で返した。

クヴェレ「んだよ、もっと素直になんな!」

クヴェレは人差し指でメビウスの額を突いた。

メビウス「そりゃどうもです。」

メビウスは少し微笑んだ。

メビウス「けど、正直な話、モハメドを倒せたのは志狼(シロウ)さんのおかげだから」

メビウスはクヴェレに理由を話すかのように呟いた。

メビウスの脳裏には一人の男の後ろ姿が映し出されていた。

メビウス「…ん?」

だが、それを一旦遮るかのようにメビウスはクヴェレの肉体に大きな違和感を感じた。

メビウス「…あれ?クヴェレさん、そんなに肉体柔らかかったでしたっけ?後、なんか温かい…」

クヴェレ「あ?何言ってんだ?」

メビスはクヴェレにそう訊くが、クヴェレは首を傾げた。

メビウス「…あれ、クヴェレさんって男…なんだっけ?」

メビウスはクヴェレに性別について訊いた。

クヴェレ「あれ?言ってなかったけ?俺、女だよ?」

クヴェレは自身を女性だと答えた。

そう、その中性的な容姿と話し方のせいでわかりづらかったが、クヴェレは正真正銘の女性であった。

メビウスはクヴェレをずっと男性と認識していた。

メビウス「え…あ……マジィ?」

クヴェレの事実を聞いたメビウスは動揺しながら顔が赤くなり、鼻血を出した。

そして、そのままメビウスは倒れた。

そう、メビウスは女性に耐性がないのである。

話す程度なら大丈夫であるが、条件付きでスキンシップを受けた場合、顔が赤くなり、鼻血を出してしまうのであった。

クヴェレ「あれ!?もしかして女に弱い!?おーい!!大丈夫か!!!」

クヴェレはメビウスの女性に耐性がない事を知り、メビウスに駆け寄り、安否の為に声をかけた。

次回

第参話 「黒ノ狩人と悪魔ノ子」

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