10話 第一王子、ギルベルトのお願い。
ナイフとフォークを使って、お皿の上で切り離した肉をフォーフで刺して口へと運ぶ。
ここにきてはじめてご飯を食べたけれど、お肉に獣のような臭みなどはなく、ただ、普通のお肉だった。驚くほど美味しいでも、不味いもなく、ただ普通に美味しかった。
ここにきて数日が経っていたのに、...これがはじめての食事だということに内心私は驚いていた。
「ベルバラ様、お味はどうです?」
「とても美味しいです。ありがとうございます。」
煙を吐き出し、第一王子が私の顔色を伺った。
食事中、食事中にも関わらず第一王子ギルベルトは食事に手もつけず、タバコを吸っていた。そしてあろうことか、タバコの灰皿はまだ手をつけていないお皿の上、お肉の上に灰を落としていた。
この場には私、第一王子ギルベルト、第二王子レナード、貴族のロレーヌ、侍女ローザがいた。
しかし、私の視界に侍女ローザの姿はなかった。ローザはテーブルの下...第二王子レナードの足の間に立膝でいた。
ーーー女たらしの第二王子...それはこの集まりでも変わらずにご健在であった。
ベルバラは顔を引き攣りながらも、お肉を口へと運ぶ。
人として終わってる。
「食事をしてるのは私とベルバラさんだけ。問題なければ、本題に移っては如何でしょう?」
この場の空気で食事が中々進まなかった私に比べ、ロレーヌの目の前のお皿はソースだけが残されていた。
自分の前に置かれているお皿を見て、私はそっとナイフとフォークを置き、紙ナプキンで口元を拭いた。
「そうですね。」とギルベルトは手にしていたタバコを肉に突き刺すようにジリジリと置いた。
「ハインには軽く言ったんですが、もうじきお父様...現国王から私に王位が移り変わる即位式を大々的に行おうと思っていまして、ここにいる皆さんにはそれぞれ即位式に向けての準備をお願いしたいんです。」
部外者である私も?
「私が新たな国王として、ローズ国で権力を持つ貴族方との挨拶をするためのパーティーを開くにあたって、ロレーヌには招待客を集めてほしいんです。」
「構いませんよ。私たち貴族はパーティーが好きですから。それに、ここ数年関わりのある貴族は私だけでしょう?ギルの一声でみんな集まるでしょう。」
「レナは好きに過ごして大丈夫ですから。ただ、ベルバラさんが何か困っている様子なら手を貸すように。」
「は~い。」
そしてギルベルトはベルバラに真っ直ぐ視線を流した。
「ベルバラ様にはエリスのことをお願いしていますよね?」
「はい。」
「即位式より前に、エリスを国民の前で披露し、即位式の日に悪魔を祓ってほしいんですよ。」
それって、デモンストレーションかなにか?
「段取りとしては、貴族たちとのパーティーを行い、エリスが悪魔に憑かれていることを国民に披露し、ベルバラ様が国民の前で悪魔を祓い、即位式を行おうと思っています。」
ちょ、っ、ちょっと
「ちょっと待ってください。エリス様をわざわざ国民の前に出すこと、それを私が国民の前で祓うことは即位式を行う上で必須なんでしょうか?」
「えぇ、悪魔に憑かれても私たち王家に縋れば祓えるということを国民に見せておく必要があるんですよ。」
「それ、...国民より王家が上だということを見せつけるということでしょうか?」
「その通りです。それに、ベルバラさんはここに永住し、王家専属のシスターなんですから。」
そんなこと、...永住?王家専属のシスターなんて聞いたことがない。
私は、ベルバラはそんなことを条件に遠くからこの国にやってきたっていうの?私の転生...どうなってるの?




