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番外編 マフラー

2024/7/21追記

誤字報告ありがとうございます!凡ミスが多くてお恥ずかしい…。感謝します!

 私、斎藤冥ことメイが地球から別世界の冥界に落ちてきて早いもので半年以上があっという間に経ちました。


 冥界の中やフェルトス様が神域化した冥界周辺の地上では、気温の変化というのは関係ありません。

 冥界はいつも涼しい感じだし、冥界周辺の地上は太陽のおかげかぽかぽか陽気だし、どっちも常に過ごしやすい環境になっています。


 しかし、この神域から一歩でも外に出たら話は変わってくる。

 今の地上の季節は冬。すっかり寒くなった外の世界では寒さ対策は必須。

 しかもなんだか人間だった頃より寒さに弱くなってるのか、余計に着こまないとお外に出るのはちょっと難しいんですよね。冬眠しそう。

 ジェーンさんのお店で冬服を作ってもらったので、なんとか冬眠せずにすんでますが。


 というわけで町へ行くのも一苦労。しゃぶいしゃぶいと言いながら毎度箒に乗っております。

 そんなもこもこ星人な私を見かねたのかノランさんがいいものをくれました。


 なんと、あったかい石でございます。

 これはカイロ石っていう熱を持つ不思議な石らしくて、冬の必需品らしい。まんまカイロじゃん。

 とても良いものを頂いてしまったので、お返しでブランデーをこっそり渡しておきました。


 カイロ石をそのまま持つと熱すぎるので、布で包んで使います。それをポッケに入れておくとそこからじんわり熱が広がってとってもあったかいんです。

 最近は寒くてついてきてくれるステラやモリアさんも辛そうだったので、箒にあるステラ達用の座席の籠にも布で包んだカイロ石を入れたらそこから出て来なくなりました。


 籠の中で丸くなってるステラとお餅になってるモリアさんはすごく可愛いので、移動中も箒は出しっぱなしで隣に浮かせている。

 ちょっとばかしお邪魔になってるかもだけどご容赦願いたい。


「わぁ!」


 カイロ石のおかげで寒さがかなりマシになり、ウィンドウショッピングを楽しむ余裕が戻ってまいりました。

 そんな中見つけたのは、紫色がとっても綺麗なマフラー。


「きれぇー」

「ふふっ。お気に召していただけましたか?」

「ぴゃ!」

「よろしければ中でゆっくりご覧ください」


 思わずガラスにぴったりくっついて眺めていたら、お店の中から店員さんが出てきて声をかけてくれた。

 ちょっと恥ずかしかったけど、お言葉に甘えて中に入れてもらう。店内は暖房がきいてるのかとても暖かい。

 くつろぎモードだったステラとモリアさんも籠から出てきたので箒は一旦しまって、私も上着を脱いだ。


 店内に設置してあったソファに案内された私はそこに腰掛ける。

 するとすぐに店員さんがさっき見ていたマフラーを持ってきてくれた。

 ちなみにステラとモリアさんは私の隣で良い子にしています。


「わぁ。肌触りがしゅごくいいでしゅね」

「はい。当店のものはお客様に長く愛用していただきたいと思い品質にもこだわっておりますので。それは薄手ではありますが保温性も高く、寒い日でも問題なくご使用できます」

「たしかにちょっとうしゅいでしゅね」

「お試しになりますか?」

「いいんでしゅか?」

「もちろんでございます」


 そういって店員さんは私の首にそっとマフラーを巻いてくれた。

 大人用だけど薄手だからあんまりかさばらない。でもすごく暖かくて肌触りも良くて気持ちいい。


「いかがですか?」

「しゅっごくあったかいでしゅ」

「ありがとうございます」


 うーん。どうしようこれすっごく気に入っちゃった。


「お姉しゃま。これっておいくらくやいでしゅか?」

「はい。三万五千ガルグでございます」

「しゃんまんごしぇん……」


 ブランドものマフラーだったらそれくらいするのかな。ちょっと値段にびっくりした。

 でもこのマフラーはかなり良いものだってわかるし、そのくらいの値段は妥当なのかも?


 うーん、どうしようかな。やめとこうかな? でもこれ気に入っちゃったしな。うーん。


 お金ならあるから悩む必要はないんだろうけど、金銭感覚はまだ庶民なのでちょっとビビります。

 買うと決めたら勢いで買っちゃうんだけどね。


「うーん……しょうだ。お姉しゃま、ちょっとお店の中見て回ってもいいでしゅか?」

「もちろんです!」


 にっこり笑ってくれた店員さんにマフラーを返して、私は店内の商品を眺め始めた。

 マフラーに手袋、靴下や帽子や耳当て、防寒着など、いろんな商品が売られている。ちょっとおしゃれな腹巻なんてのもあった。


 大体の値段帯は安くて一万前後、高くて五万程かな。

 じゃあさっきのマフラーは普通くらいのお値段ですね。なるほど。


 ついてきている店員さんに許可を取ってお高めのマフラーを触らせてもらったけど、さっきのよりすごく良かった。いろんな意味で。

 でも値段的にちょっとお高いので今回はパス。


 一通り見て回った私はいくつかの商品を買うことに決めた。

 さっきの紫色のマフラーはもちろん。それと同じような赤色のマフラーも。

 あとは子供用の青いマフラーと黄色のマフラーそれと黄緑色のマフラーの計五つ。

 全部初めに見ていたマフラーと同じ素材だったので、合計でかなりお値段がしました。それでも子供用は大人用より安かったけど。


 突発的な散財だったので予備のお財布を影から取り出してそこから払う。

 いつもの猫財布には多くて三万ガルグ程しか入れていないのです。

 こういう突発的な大きな買い物をたまにしちゃうので、予備財布は必需品。それもすっからかんになっちゃったけど……。

 でも良い買い物だったので良しとします。満足度が高い。むふん。


 お店から出る前にさっそく青いマフラーをステラの首に巻こうとした私ですが、ぶきっちょなので上手くいかず結局店員さんにやってもらっちゃった。


 リボン結びですっごくかわいいよステラ!

 私も黄色のマフラーをリボン結びで結んでもらってご満悦です。

 黄緑色はモリアさん用に買ったのですが、首が無いので全身を包む感じでくるくると。なんか赤ちゃんのおくるみみたいになっちゃったけど、本人的にはあったかくていいみたい。

 ただ動けなくなっちゃうから、さっさと箒の籠の中に入れてあげましたよ。


 あとの二つはもちろんフェルトス様とガルラさんの分です。

 紫がフェルトス様。赤がガルラさんの分。

 フェルトス様はいらないかもしれないけど、一人だけ仲間外れは寂しいもんね。


 そんなこんなで帰宅した私は、フェルトス様達が帰ってくるまで晩御飯の準備をしつつお留守番。

 そして満を持して帰ってきたフェルトス様達にマフラーを手に突撃する。

 包みはすでに解いちゃった。すぐに巻きたかったから仕方ないね。


 いきなり突っ込んできた私に驚きもせず受け止めてくれたフェルトス様はさすがと言うほかない。


 抱っこしてもらったのをいいことに、私はそのままフェルトス様の首にマフラーをかける。


「えへへー。フェルしゃましゅてきー!」


 うまく巻けなくてくるんって一回巻き付けただけの形になっちゃったけど、私的には満足です。


「なんだこれは?」

「マフラーでしゅ! こっちはガーラしゃんの分だよ。あい、どーじょ!」

「え、オレには巻いてくれないの?」

「もぉー。ちかたないなぁ」


 ご注文通りフェルトス様同様巻いてあげる。こっちも一回交差させただけの形になっちゃったけどガルラさんは満足そうだしいっか。


「……人間どもの防寒用の布か?」

「あい! ここではいやないけど、おしょとは寒いから買っちゃいまちた!」

「……そうか」

「あい!」

「おぉ、あったけぇな。これならオレも外に出ても大丈夫そうだ」

「でしょー」


 そうやってわいわいと盛り上がりつつ、晩御飯をすませる。

 マフラーは邪魔になるので外しておりますよ。


 晩御飯も終わり、いつものまったりタイム。

 ふと思いついたことがある私は、ソファから降りて置いておいた紫のマフラーを手に取りいそいそと戻る。

 そしてフェルトス様のお膝の上に座りガルラさんにマフラーを渡した。


「ガーラしゃんガーラしゃん! しょのマフラーぐるぐるってして!」

「ん? あぁなるほど。二人ともちょっとじっとしてろよ」

「あい」

「む?」


 私はジェスチャーでガルラさんへ指示を出す。

 その指示を的確に理解してくれたガルラさんの手によって、私がしたかったことを叶えてくれた。


「ははは。かわいいかわいい」

「えへへー。なかよち!」

「……まぁメイが楽しいのなら良いが、なんだこれは?」


 フェルトス様にちょっとばかり屈んでもらって位置調整して完成した二人マフラー。

 正式な名前ってあるのかな、わかんないや。

 一つのマフラーを一緒に使ってくっつくのはいつもと違ってなんかいいですね。仲良し感がぐっと増します。


 しかもフェルトス様が良いって言ってくれたので、今日は私が満足するまでそのまま二人マフラーをして過ごしました。


 めでたしめでたし。てへっ。

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