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52 プレゼントの行方

 お昼寝からおはようございます、メイです。

 起きたらお家のベッドの上で、しかも見慣れないフェルトス様ぬいぐるみを抱っこしてました。


「むぇ?」


 つぶらなおめめに二頭身のちっちゃな体が可愛いフェルトス様ぬいぐるみ。

 蝙蝠の翼にギザギザの歯、それから特徴的な足。紫の長い髪はまさしくフェルトス様を小さくした感じです。


 再現度が高い。でもちゃんとデフォルメされてる。出来が良い、良すぎる。


「ちっちゃいフェルしゃまだぁ。むへへへへ」


 突然出現したフェルトス様ぬいぐるみ――本来の姿――をぎゅっと抱きしめる。

 結構大きくて抱きしめ甲斐がありますねこれ。


 人間の姿のぬいぐるみも出来が良かったけど、これはそれ以上です。やっぱり私はこっちのフェルトス様の方が好きだな。


「起きたか?」

「フェルしゃま! おはよーごじゃましゅ!」

「おはよう」

「あ、しょうだ! 見て見てフェルしゃま! ちっちゃいフェルしゃまがいたの!」


 ガバリと起き上がり覗き込んできたフェルトス様へぬいぐるみを見せつける。

 あまりの勢いにフェルトス様の顔前にぬいぐるみを突きつけてしまったから、多分フェルトス様には見えてない。

 でもそんなの関係ない。見て見てしちゃう。


「そうだな。気に入ったか?」

「あい!」


 ぐいっとぬいぐるみを手でどけられたけど気にしない。フェルトス様が笑ってる顔見られたからね!

 ついでに頭も撫でてもらった私は、フェルトス様ぬいぐるみを抱っこしながらフェルトス様に抱っこしてもらう。

 なんかこの構図ちょっと面白いな。


 そういえばフェルトス様ぬいぐるみ――人間の姿――はいったいどこにいったのか。

 きょろきょろとベッドの上に視線を彷徨わせるも見つからない。


「どうした?」

「フェルしゃまぬいぐるみがないんでしゅ」

「その手に持っているだろう?」

「こっちじゃないやちゅでしゅ。人間の方の」

「あぁ。それなら――」


 フェルトス様の視線がテーブルの方へ向いたので、つられて私もそちらに視線を向ける。


「あっちゃ!」


 いつもはソファの上に並べられているぬいぐるみ達が、今はテーブルの上に仲良く並べられていた。

 まるで手を繋いでるような、もしくは寄り添っているかのような、そんな風に置かれた冥界一家ぬいぐるみ。

 とってもほっこりします。

 そしてぬいぐるみの前にはトラロトル様の羽が置いてある。やっぱり綺麗な羽だな、大きいし。


 でもあれは誰がやったんだろう。

 フェルトス様がやるはずはないから……やっぱりガルラさんしかいないか。


 そういえばそのガルラさんの姿が見えない。

 どこに行ったのだろうか。


「おっ、メイ起きたのかー。おはようさん。後片付け全部終わらせておいたぞー」

「おはようでしゅガーラしゃん。それと片付けありあとごじゃましゅ!」

「いいってことよ」


 噂をすれば。

 どこかに行っていたのかばっさばっさと翼を羽ばたかせながら帰ってきたガルラさん。

 もしかして今までパーティの後片付けしてくれてたのかな。感謝感謝。


「ありゃ。随分と面白い構図になってるな。ちっさいフェルを抱っこしてるメイを抱っこしてる大きいフェルか。ははは、笑えるー」


 やっぱりこの構図ちょっと面白いですよね。

 いかつくて大きなお兄さんが可愛いもの――私は除く――持ってるとなんかほっこりします。


「しょういえば、このぬいぐるみはどうしたんでしゅか?」


 朝には無かったのに、お昼寝後に急に出現したこのぬいぐるみ。

 しかもこの出来はプロの仕業ですよ。


「セシリアのところの女が渡してきたやつだ」

「ジェーンしゃんが……あっ!」


 もしかしてあのプレゼントかな。たしかに大きかったもんね。これが入ってたなら納得の大きさだよ。

 というか、洋服だけじゃなくてまさかのぬいぐるみまで作ってくれてたとか女神か……!


 また今度プレゼントのお礼をしないとな。

 カボチャを気に入ってたみたいだから、カボチャ系でいろいろ作ってプレゼントしましょう!


「今度会ったらお礼言いましゅ!」

「んじゃ今度彼女の店に連れてってやるよ」

「お店!」

「ちゃんと許可もらえたら、だけどな」

「あい!」


 お礼のお礼のお礼の……無限ループって怖くないですか?

 でも仕方ない。お礼したいんだもん。こんなにかわいいもの貰いっぱなしは悪いでしょ!

 ジェーンさんセンスが良過ぎる。腕も良過ぎる……!


「へへへー」

「おーおー。顔が崩れちまってまぁ。そんなに気に入ったのか?」

「あい! とってもかわいいでしゅ!」

「フハッ! なんだよフェルも顔崩れてんじゃん!」

「えっ!?」

「……そうか?」


 ガルラさんの言葉に反応してすぐにフェルトス様の顔を覗き込むけど、時すでに遅し。

 そこにいたのはいつものフェルトス様でした。ガルラさん、あなた見間違えたんじゃないですか?


「最近のフェルは表情が柔らかくなったよな。いやーよかったよかった! 良い変化だし友人としては嬉しい限りだ! あっはっは!」

「…………自分ではよくわからんな」


 自分の顔を擦りながら首を傾げてるフェルトス様。

 そして一緒に首を傾げてる私。


「フェルしゃまは結構最初から表情豊かでちたよー?」

「俺らからしたら、な。他人が見たらあんま変わってねぇように見えるんだとさ」

「はぇー」

「それが今じゃ、他人から見ても一目瞭然でわかるレベルで変わるようになったってことだな。どうだ、すごい変化じゃね?」

「たしかにー」


 まじまじとフェルトス様の顔を覗き込む。

 フェルトス様ってぱっと見では表情変わってないように見えるけど、よく見るとけっこう変わってるもんね。フェルトス様の表情を読み取るのが随分と上手くなりましたよ。今もちょっと戸惑った顔してるし。


「フェルしゃまってかわいいね!」

「人形のことか?」

「うぅん! 本物にょフェルしゃまのこちょ!」

「わかる。フェルかわいいよな」

「ねー!」

「ねー!」


 ガルラさんと一緒になって相づちを打ちあう。


「かわいくは……ないと思うが?」

「ふへへー」


 困惑しているフェルトス様を無視して、私はそのままフェルトス様の首筋にぽすんと体を寄せる。

 フェルトス様はかっこいいけど、かわいいのです!


「ところでメイ」

「あい?」

「今日はこのあとどうする予定だ?」


 頭をすりすりと擦り付けていたら、フェルトス様の手が伸びてきて頭を撫でてもらうことに成功した。

 そのままにへにへと味を占めていると、フェルトス様から質問が飛んでくる。

 もちろんその間撫でる手は止まってません。


「んー。とくにはないでしゅ」

「ならばさっそく世界樹を植えに行くぞ」

「わぁ! あれでしゅか! 行きまーしゅ!」

「えー。オレ帰ってきたばっかなんだけど? ちょっとは休ませろよぉ」


 テンションが上がっている私に水を差す一言がガルラさんから発せられた。

 まったく仕方のない人ですねぇ。


 フェルトス様と二人、顔を見合わせたあとにやれやれといった感じを醸し出しつつガルラさんに答えた。


「……少しだけだぞ」

「ちょっとだけでしゅよ」

「ったくこの親子はよぉ……」

「にしししし」


 そのあと三人でソファに座ってくつろいだ後、またもそろって家を出発するのだった。



 フェルトス様に抱っこされてやってきたのは畑近くの森の一角。

 いつの間にか畑から森へと道が出来てて、その道を辿っていったらつきました。

 一本道だったけど結構歩いたから――私は歩いてないけどね――畑がある場所は遠目にしか見えない。


 道の先はぽっかりと木が無くなって広場みたいになっている。


 ここに植えるのかな?


「こんな感じでいいだろ?」

「上出来だ」

「……もしかしてこれってガーラしゃんがやったの?」

「そうだぞー。結構大変だったわ」

「しゅご……」


 自然にできた場所じゃなくて、ガルラさんの手によって作られた場所だった。

 でもそうだよね。だってこんな場所なかったもん。道もなかったし。

 さっきどこかに行ってたのは、これを作ってたんだな。

 それはたしかに疲れるだろう。


 悪いことしたな……今日の晩御飯はガルラさんの好きなものを作ってあげよう。


「道も畑と繋げておいたから、メイも迷わず来れるだろ」

「うん! ガーラしゃんありあとー!」

「どいたまっ」


 おちゃらけた様に返すガルラさん。仕事ができる男は違うね。うんうん。


「さて、では植えるか」

「どこに植えるのー?」

「――ここだ」


 すたすたと歩いて広場の中央あたりに立ったフェルトス様は、そこで私を地面に降ろした。

 そして預けておいた種を取り出すと、そのまま私の手に握らせる。


「ほら、ここの土を掘り起こしてその種を植えろ」


 隣にしゃがんだフェルトス様はコツコツと指先で地面を叩いた。


「わかっちゃ!」

「がんばれー」


 ガルラさんの声援を受けつつ、フェルトス様の指示のもと慎重に魔法を使って土を掘り起こす。

 私の腰くらいまですっぽり入れるんじゃないかってくらいの穴が掘れたところで、ようやくストップがかかりました。

 こんなに深い穴、手動じゃ何時間かかるかわかんないね。魔法使えて本当に良かった。


 その掘った穴の中に世界樹の種をポトンと落として、そのまま土をかけて埋める――と思ったら違った。

 穴に種を入れようとしていた私の手をフェルトス様が掴んで止めた。


「メイ。その前に少し作業だ」

「う?」

「種を両手で包んでゆっくりと魔力を流せ。オレが良いと言うまでやめるなよ」

「あーい」


 なんだかよくわかりませんが、やれと言われたのでやります。

 大きな種を両手で包んで、ゆっくりと魔力を流す。


 そうすると種が私の魔力を吸っていき、だんだん暖かくなってきた。

 まだ静止の声がかからないのでさらに魔力を注いでいく。すると手の中の種が少しだけ紫色に光った。


「おぉ、光っちゃ」

「よし、もういいぞ」

「あい」


 フェルトス様の言う通りそこで魔力を注ぐのをやめると、次第に種から漏れる光も収まった。


「それをそこの穴に入れて、掘った土をかぶせろ。最後に水をやったら今日は終いだ」

「あーい!」


 穴の中に種を落として、土をかぶせる。

 そのまま最後まで土をかぶせたら、ポンポンっと手で土を叩いて立ち上がる。最後のはなんとなくだ。

 何かを埋めたあとってああやって土を叩かない? 私だけかな? まぁいいや。


「最後はお水をあげればいいんでしゅよね?」

「あぁ」


 畑の水やりをするのと同じ要領で大きな水の塊を出した後、シャワーのようにサーっとかける。


「大きくなりぇよー」


 そう声掛けしつつお水をあげる。どんどん水を吸っていく地面。

 これもどれくらいあげたらいいのかわからなかったので、フェルトス様の顔色を窺いながらの水やり。


 出した水の塊が半分ほど減った頃ようやくストップの声がかかりました。


「そのくらいだな。この水やりは芽が出るまでは毎日一回だ。必ずメイの魔法で出した水をやること。いいな」

「あーい!」

「そして芽が出たのなら、毎日はやらなくていい。土の状態を確認して、乾いていたら同じ量の水をやれ。わかったか?」

「あい! 了解しまちた!」


 敬礼をしつつ元気にお返事をします。

 そのあと一度フェルトス様に水の量を確認してもらい、その量を覚えておく。


 大体私の上半身と同じ大きさくらいの水の球です。

 結構たっぷりあげなきゃいけないのね世界樹君は。


 根腐れをおこしませんように! 立派な世界樹に成長しますように!


 ぱんぱんと手を打ち鳴らしお祈りを終わらせた私は、待っていた二人のところに戻る。

 そして全部の工程を終わらせた私達は、そのまま家路についた。


 ちなみに今日の晩御飯はガルラさんからの希望を聞くと決めていたんで、リクエストを取ったら「肉系でがっつり」と言われた。


 パっと思いついたのはやっぱり唐揚げやカツだけど、これはもうお昼に食べたし却下。


 どうしようか悩んだけど、とりあえず照り焼きチキンでも作りましょうかね。

 楽しみにしててください、美味しいの作るんで!

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