33 冥界にもお風呂発見
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「こいつは冥界の番犬、ケルベロスだ。あの畑に行くときは必ず供につけるように」
「わぁぁ……」
畑から冥界に帰ってくるなり、フェルトス様に紹介されたのは巨大な三つ首のわんちゃんだ。
フェルトス様と比べてもまだ大きいので、ほぼ真上を見上げてもまだ足りない。
「わわっ!」
「おっと。気を付けろよーメイ」
「あい、ごめんちゃい。ありあと」
見上げすぎたのか頭の重さで後ろに転げるところだったけど、すかさずガルラさんが助けてくれてことなきを得ました。
元の位置に戻った私は、改めてわんちゃんを見上げる。
番犬の名に恥じない怖かっこいいわんちゃんだ。
三つの頭もそれぞれ性格が違うのか顔付きが違う――気がする。よく見えないからわかんないや。
それにしても良いのかなぁ。冥界の番犬なのに私と一緒に外に出ちゃっても。
でもフェルトス様が言ってるんだから良いんだよね。うん、そうだそうだ。きっとそうだ。
「けりゅべろしゅしゃん……かっこいいでしゅね! わたしはメイでしゅ、仲良くちてくだしゃいね!」
「ばぅ!」
「わっ、わぁっ!」
ケルベロスさんに挨拶をすると、こちらこそよろしくとでも言っているかのように顔を擦り寄らせてきた。
しかも頭が三つあるのでそれぞれが順番に擦り寄ってくる。突然のことに耐えきれず後ろに転げちゃった私に、さらにすりすりぺろぺろとくるケルベロスさん。
う、嬉しいけど体格差を考えてもらっても?
今度はガルラさんにも助けてもらえなくてあっぷあっぷしています。
きっと今の私を第三者が見ると、ケルベロスに食べられてるみたいに見えそう。
「……ケルベロス」
「!?」
フェルトス様がケルベロスさんの名前を呼ぶと、ケルベロスさんは一瞬ビクッと反応してすんなりと離れていってくれた。
ようやく解放されて嬉しい限りですが、全身涎でベトベトです。お風呂入りたい。
「みぃ……」
「ハハハ、気に入られたみたいで良かったなメイ」
ガルラさん、笑ってないでタオルくれます?
ムッとした顔でガルラさんを見返すと、謝ってくれましたが顔がまだ笑ってますよ。むぅ。
ベトベトになっちゃったから、さっぱりするためにもお風呂に入りたいのにここにはお風呂がない。
魔法でお湯を出してもいいけど、そのお湯を溜めておく場所も容器もないしどうしようかな。
土魔法で浴槽みたいなの作れるかな? でもなんとか加工しないとただの泥水になる? うーん、考えててもわかんないし、あとでガルラさんに聞いてみよ。
そんなことを考えてたら、ガルラさんがパチンって指を鳴らす音が聞こえた。
その瞬間私の体が光ったかと思うと、涎塗れだった私の全身が一瞬で綺麗になりましたよ。
「おぉ!」
「詫びに綺麗にしといたから許してくれるか?」
「ガーラしゃんこれ何したの? 魔法?」
「そうだぞ。浄化の魔法だ。その内メイにも教えてやるよ」
「ふぉお! やった! ありあとガーラしゃん許しゅ!」
「ありがたき幸せ」
本当にすごいな。あのベタベタが綺麗さっぱり無くなっちゃった。匂いもないし。
もしかしてずっとお風呂に入ってなかったのに、気になる程汚れてないし匂わなかったのもフェルトス様がこれ使ってくれてたのかな? ありがたいね。
でもそれはそれとしてお風呂には入りたい。これは気分の問題ですよ!
「くぅーん」
「あ、ごめんちゃいケロちゃんズ。怒ってないから元気だしてね」
「わふっ!」
おぉ、尻尾がブンブンしてます。よく見ると犬の尻尾じゃないな。なんだろうあれ。蛇かな?
大きいけど、ただのわんちゃんみたいでとっても可愛いね。
「ケロちゃんズ?」
「あい。けりゅべろしゅのケとロでケロちゃん。それで、三匹いるからズ」
「あはは、そーなの? 随分と可愛い名前をもらえて良かったなぁ。ケロちゃんズ!」
私の答えを聞いたガルラさんが、めっちゃ笑いながらケルベロスさんの体をバッシバシ叩いてる。
そんなに面白いこと言った覚えはないんですが……ていうか痛そうだからやめてあげてください!
「…………ケロちゃんズ?」
「ふぁ!」
私がガルラさんの暴挙を止めていたら、フェルトス様が小さな声でケルベロスさんの名前を呼んでいた。
なんというかフェルトス様の口からそんな可愛い言葉が出てくるとは思わなかったので衝撃がすごいです!
「あっはははははは! やっべ、なんか、フェルの口からその名前出ると、笑える! だはははははは!」
何かがツボに入ったのか、ガルラさんが咽せながら笑ってる。笑いすぎじゃない?
「フェルしゃまー。さっきのもっかい言ってくだしゃい!」
「ん? ケロちゃんズか?」
「ぎゃっはははははは! メイ、おまっ、やめろって!」
「…………そんなにおかしいか?」
「しょんなことないでしゅ! 可愛いでしゅよ!」
「……そうか?」
「そうでしゅ!」
「……そうか」
それから数分くらい笑い続けてたガルラさん。
笑われたからか、ちょっとしょんぼりしてるフェルトス様。
そんなフェルトス様を可愛いから大丈夫と全力肯定する私。
状況についていけずオロオロするケルベロスさん。
というカオスな空間がしばらく広がっていたのは内緒。
状況が収拾した後に、ガルラさんに土魔法で浴槽が作れるか相談をしたら、出来ることは出来るけど、私には技術的にまだちょっと早いだって。
仕方ないから諦めようとしたらガルラさんの家にお風呂があるから使っていいとのお達しが。
あなたが神か!? いいえ、私は神の眷属です。
なんてくだらないやりとりをしたあとに、フェルトス様に許可をもらってさっそくガルラさんと一緒にお家に向かう。
その前に着替えなんかを取りに行くのも忘れない。
ガルラさんの家はフェルトス様の家から少し離れた場所にあったけど、静かでいいところだった。
家自体は一戸建てみたいだけど、すごくこじんまりしててかわいい。
中に入るとかなりモノが少なくてビックリした。フェルトス様といい勝負だ。
寝るだけの家って言ってたし、お仕事忙しいのか……?
この人ふざけてるけど仕事できる人みたいだし、フェルトス様からも信頼されてるしで実はすごい人? お野菜できたら全力で労おう……。
そして本命、ガルラさん家のお風呂はセシリア様のお家のお風呂とは違って、一般家庭のお風呂って感じだった。これはすごく落ち着くな!
何故かガルラさんと一緒に入ることになってしまったが、今の私は子供だから気にしなーい!
嘘。気にするよ! 私中身は中途半端に大人なんです! ガルラさんはそれでも良いんですか!?
そう訴えてみてもガルラさんは笑いながら「オレは気にしないから大丈夫」とか宣いやがりました。
しかも私一人でお風呂に入れて溺れないか心配なんて言われちゃ拒否もできない! くそう、自分でもありえそうとか思っちゃった。悔しい!
あぁ、もういいや! 子供だもんね! ガルラさんが気にしないなら私も気にしないもん!
さぁ、一緒に入りましょう!
……なんだかんだ髪とか体とか洗ってもらって全部お世話されちゃいました。ふっ……もういいのさ。
お風呂はすっごく気持ち良かったです!
そしてガルラさんが髪を乾かしてくれたんだけど、そのときに早速覚えた温風魔法を披露したらとっても褒めてもらえちゃったよ。えへへ。
綺麗になって、服も着替えて、オニューメイちゃんの完成でっす!
いやー、さっぱりした!
今回で10万文字突破してるはず?
読んでくれている方、長いお話にお付き合いくださりありがとうございます!
もうしばらくお付き合いいただけたら嬉しいです。




