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UNDEAD HUNTER  作者: Navajo
第一章 招かれた世界
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第四話 贈り物

 

 


 男は夜中の住宅街で歩き続けながら不審な人影を見かけたらすぐに避けるようにした。

 

 この非常事態に町中をフラフラ出歩いているのは変異した住民だけだった。

 鉢合わせして追いかけられたりもしたが、両手のストックのおかげで振り切ることに成功した。

 

 彼らはうまく走れないようで、追いかけている最中に足がもつれて転倒してしまうこともある。

 その隙に距離を引き離して逃げ延びることができた。

 

 まれに民家の玄関を叩く集団を目撃したり、遠くから助けを求める声がいくつも聞こえた。


 歩道でグチャグチャになった人の死体も見つけた。それらは彼らに発見されたり、捕まったりした生存者の末路なのかもしれない。

 

 映画やゲームの世界のゾンビがこんなふうに現実世界で巻き起こるなど想像すらしなかった。

 

 就職活動や結婚、将来について悩めることがどれだけ幸せなことなのだろう。

 今一番の問題は生きるか死ぬかなのだから。

 

 男は歩き続け、徐々に彼らを発見しては避けるために迂回するという場面が増えているような気がしてきた。

 

 最初こそはポツポツと見かけるという程度だったが、それが徐々にあちこちで見かけるようになっていき、次第に集団でたむろしている状態を発見するようになったのだ。

 

 男はそこでハッとした。

 高齢者や乳幼児が死亡しやすいということは、反対に元気な若者や働き盛りの中年はゾンビになりやすいのだと。

 

 そして自分が今いるのは住宅地の真ん中。警察署に向かおうとして最短ルートを通ったつもりが、最悪のルートを通っているのだ

 

 近くには高校がいくつかあり。その近辺には専門学校や大学もある。商業施設も多い。駅近にそれらがあるので住みやすくて良い町だと評判で、首都圏にも行きやすいと移り住んでくる人々も多い。

 

 それは自分のような非正規労働者のような単身者から子供を持つ家族まで。

 

 遠回りしよう。

 

 男はそう決意し、人口密度が薄く、人通りも少ないルートを確保するために住宅地から離れることにした。

 

 普段使うことのない農地などに向かう車道に沿って歩くことにし、山に沿って警察署まで向かうことに予定を変更した。

 

 仕事を求めて移り住んできた男は運転免許は所持しているが車を持っていない。車も無いのにわざわざ市街地の外の郊外へ行くことなどなかったので、見知らぬ土地を目指して歩くような感じだった。

 

 それでも頭の中の地図と月明かりに照らされる道路標識を頼りにストックを使って必死に歩き続けた。

 

 郊外に近づけば近づくほど人影は減っていった。人影が減る代わりに立ち並ぶ家々の敷地が広くなり、建てられた家の大きさも大きくなる。恐らく昔から住み続けている住民は高齢化が進んで感染しても死亡してしまうから外に出てくることは無いのだろう。

 

 人影の少なさに安心し、時折車道を横切るハクビシンやタヌキに驚きながら男は歩き続ける。

 

 見知らぬ坂道を上って歩き続けた男ではあるが、次第に疲れ、段々と腹も減って喉も渇いた。

 

 どこかで休憩したい。

 

 男は休めそうなところを探そうと周囲を見渡し始める。

 

 いくつかの民家とアパートが近くにあるので、昼間に休んだ老夫婦の家のように水道などの使える場所を探し求めた。

 

 物音を立てればゾンビのような変異体に襲撃されるリスクが出てしまう。なので音を立てないように一軒一軒回って玄関の扉が開いていないか確認して回った。

 

 しかし残念ながらどこも閉まっている。あのようなニュースが出回っているので、どこもかしこも警戒して鍵を閉めているのだろう。

 

 男が都合のいい場所を探し求めて歩き、それからしばらくするとあるものを見つけた。

 

 アパートの駐車場に停められた車だ。

 

 車の後ろの荷物を乗せる、トランクルームのバックドアが開いている。

 

 軽自動車のジムニー。それを見た瞬間に男はひらめいた。

 

 そうだ。車で行けば良いんだ。

 

 男は早速車まで駆け寄り、トランクの中を覗いた。

 

 積荷は無い。ゴミ袋やロープが置かれている程度。

 男は運転席側に回り込むと、運転席のドアに手をかけた。

 

 鍵はかかっていない。ドアの取手を引くと、ドアがすんなりと開いた。

 

 男は運転席に潜り込み、ライトを点灯させて鍵を探そうと中を物色する。

 

 鍵らしいものはどこにもない。後部座席には何かのコンテナがあるが、鍵をしまうものではないだろう。

 

 男は助手席のグローブボックスを開き、中の物を確認した。そこにはたくさんのカセットテープと、車検証などを保管するファイルが入っている。

 

 男はすぐさま車検証のファイルを引っ張り出し、中を確認した。中には車両保険と車検証などが収められており、そこにはしっかりと持ち主の氏名と住所が記載されている。

 

 名前は塚本 実(つかもと みのる)。記載された住所は恐らくこのアパートで、103号室。

 

 男は運転席から這い出ると車検証に記載された103号室に向かう。

 

 もしも変異体になっていたら逃げるしか無いため、男はいつでも逃げられる態勢で部屋まで向かった。

 

 そして難なく103号室を見つけ出すと、玄関の扉のドアノブに手をかける。

 

 慎重に、音を立てないようにゆっくりとドアノブを回そうとすると扉が開いた。鍵はかかっていない。

 

 中を覗くために静かに開けると、まずは異臭が漂ってきた。

 

 このパターンはもう知っている。後は相手の状況次第。

 

 男は異臭に眉をしかめながらさらに扉を開けて覗き込む。目に入ってきたのは玄関に倒れた男性。

 

 こいつが塚本 実だろう。

 

 男は意を決して声をかけてみた。

 

 

 「……おい。おい。……死んでるか?」

 

 

 返事はない。

 

 男は手にしたストックで塚本 実を離れた位置からつついてみた。しかしやはり反応は無い。

 

 死んでいるようだ。

 

 玄関を完全に開き、異臭を追い出すために換気をしながらポケットからスマホを取り出し、ライトを点灯させて男は玄関を照らし出す。

 

 照らされた光景に男はあまり驚かなかった。

 

 分厚い冬用ジャンパーを羽織った少し怖そうな風貌の若い男が排泄物で汚れた状態で玄関に横たわっている。

 

 よく見れば若い男が倒れいている玄関の奥には箱買いされたポカリと保存食が置かれている

 

 しかもおあつらえ向きに倒れた若い男の側にはキーホルダーが落ちていた。

 

 拾ってみると、それは間違いなく車の鍵らしきものがついている。

 

 男は拾った鍵を持って駐車場の軽自動車まで舞い戻り、足の痛みも忘れる勢いで運転席に滑り込み、鍵をさしてエンジンを点火した。


 ブルンという音とともにエンジンが始動した。ライトもつくし、エアコンもつく。ガソリンも七割くらいの位置をメーターが示している。ついでにオートマなのも便利だ。

 

 唯一気になったのはカーオーディオ。

 このご時世にラジカセ。カーナビも付いていない古い車ということ。

 

 確認が終わると男はエンジンを切った。

 

 もしかしたら、俺はついているのかもしれない。

 

 男はそう感じ始めた。何しろ欲しかったものがいっぺんに手に入ったのだから。

 

 ついでに拾った鍵を確認すると、家の鍵らしきもの以外にもいくつもの鍵がついている。

 

 何に使う鍵なのだろうか?

 

 尋ねようにも持ち主が死んでいては話はできない。なので男は死体を避けながら土足でアパートの室内に入って探索し始めた。

 

 まずは台所。一人暮らしの男の割には広くて調理器具の揃ったダイニングキッチンだった。

 

 冷蔵庫の中を覗いてみると、食べ物が多少残っていた。停電になってまだ一日。腐るには早すぎる。

 

 傷んでなさそうなカマボコやソーセージ、ここでも見つけた食パンとマヨネーズを取り出し、男は勝手に食器棚から皿も出して、食パンにカマボコとソーセージを挟んでマヨネーズをトッピングして食べてしまう。

 

 ムシャムシャと、異臭と死体も気にせずにカマボコサンドイッチを食べる男はふと考えた。

 

 武器があったほうが良いかもしれない、と。

 なにか武器があれば犯罪者やゾンビ人間に襲われても身を守れるかもしれない。

 

 男は納得するとサンドイッチを食べ尽くし、台所の棚の中をあさり始めた。

 

 目当ては包丁。

 

 出刃包丁か、大きめの文化包丁でもあれば武器になるだろうと考えたのだ。

 

 男が刃物探し始めた途端、妙なものを発見した。

 台所の流しの下の棚の中に、ロッカーのようなものがあるのだ。

 

 叩いてみると、金属製の丈夫なロッカー。開けてみようとしたが鍵が閉まっている。

 

 恐らく金庫だろう。今欲しいものは通帳や現金ではないので、男はそれを無視して別の場所を探し始める。

 

 程なくして男は別の棚のから大きな牛刀を発見した。薄くて大ぶりな牛刀はよく研がれており、丁寧に折られた新聞紙で作られた鞘の中に収められていた。サビなど一切なく、わずかなヌメリから錆止めの油が塗られているのも分かった。

 

 男は牛刀を手にすると車に向かい、助手席にそれを置いた。ついでにトイレも借りた上に玄関に置かれた保存食とポカリも頂戴することにした。

 

 ポカリの箱は2ケースもあったので1ケースだけ頂戴して車まで運んだ。

 車のルームランプをつけてからバックドアを開けて後部座席の後ろのトランクに積み込もうとすると、ジムニーなので荷台が狭くてうまく入らない。

 

 なので男は後部座席を倒して空間を確保しようとした。だが後部座席に置かれた荷物が座席を倒すのを阻んでいる。

 

 どうやら後部座席に置かれたコンテナが邪魔をしてしまっているようだ。

 男はコンテナをどけるために運転席まで移動して、後部座席からコンテナを引っ張り出すと、興味本位でコンテナの箱を開けて中を覗いてみた。

 

 出てきたのはオレンジ色の野球帽と、オレンジ色のベスト。さらに犬用のリード。山菜掘りナイフ。

 残るはノコギリなどの工具。

 

 

 「……なんじゃこりゃ」

 

 

 随分派手な帽子だ。どこかのスポーツチームを応援でもしているのだろうか?

 

 どこのチームだろうかと思い、男が帽子を見ると、“JAPAN HUNTERS”という文字と動物のエンブレムが付いていた。

 

 さらにベストも見てみると、“大日本猟友会”というタグが付いている。

 名札には塚本 実の名前も。

 

 

 「あいつ……猟師だったのか」

 

 

 男はハッとした。理解した瞬間にミノルという若者のアパートの部屋に急行した。

 

 男は土足で上がり込み、台所に直行するとスマホのライトで照らしながら、流しの下の棚を開ける。

 

 中には金属製のロッカー。若者の持っていたキーホルダーを取り出し、数多くある鍵を一つずつ試してロッカーの鍵穴に合わせる。

 

 そのうちの一つが鍵穴と合致した。

 

 男は今までにない緊張感を持ってロッカーの鍵を回して解錠し、扉をゆっくりと開けた。

 

 ロッカーには箱が入っていた。小ぶりな紙の箱がロッカーの中にビッシリと詰め込まれている。

 

 男はそれが何だかわからず、慎重に取り出して中身を確認する。

 

 弾だ。

 

 それは弾だった。

 

 散弾銃に使用するための12ゲージの実包。

 

 男は弾の入った紙の箱を丁寧に全て取り出し、いくつもの種類がある弾をそれぞれの種類ごとに積み重ねた。

 

 弾の箱は様々な種類があるが、その差が男には分からない。

 

 ただ、大きな箱と小さな箱があり、それぞれ箱に入っている弾の数が違う。

 しかも弾の詰まったそれらの箱は結構重い。

 

 さらにロッカーの中からノートも出てくる。ノートの中に弾の使用実績が細かく記入されており、徹底した管理がされていた。

 

 記載されていても弾の違いが男にはさっぱり理解できなかったが、ノートの最後の項目を見る限りでは残弾が758発あることが分かった。

 

 758発という凄まじい量に男は驚きつつも、次に探すべき物のために動き始めた。

 

 男は狭いアパートのあらゆるところを探そうとしたが、探す場所は多くはなかった。

 

 若者のアパートは1LDK。ダイニングキッチンと寝室以外は収納庫とトイレと風呂場しか無い。

 探せそうな場所はごくわずか。

 

 真っ先に向かった寝室にはウォークイン・クローゼットがあった。扉を開け、クローゼットの中を物色するとすぐに見つかった。

 

 大きな金属製のロッカー。

 

 先ほどと同じようにスマホのライトで照らしながら若者のキーホルダーから使えそうな鍵を順番に差し込み、回してみる。するとその中の一つが合致して解錠することに成功する。

 

 男は興奮を抑えながら丈夫な金属製の扉を開けた。

 

 とうとう見つけた。

 

 それも二丁。

 

 男はそれらを落とさないように両手で一丁ずつ持ち上げ、順番に取り出して若者のベッドの上に並べて置いてみる。

 

 一つは銃身が上下に二本ついた銃。

 

 もう一つは銃身が一本の銃。

 

 銃身が上下に二本付いた銃はとても重かった。まさに銃といった感じで、訓練していないと扱える気がしない。

 

 銃身が一本の銃はそれに比べると軽い。モデルガンと言われて納得しそうなくらいだ。

 

 男は上下二連と呼ばれる散弾銃を手に取り、漫画や映画の登場人物が持っている水平二連に似ていることを感じ取った。

 

 あれと同じならば根本から折れて弾を装填できるはずだ。

 

 男はそう考えて銃のあちこちを触り始めると、弾を装填できそうな部分にレバーがあることに気がついた。

 

 スマホを立て掛け、わずかな明かりを頼りに両手で銃を支えながらレバーを動かしたその途端に銃身が根本からカツンと折れた。

 

 根本から折れた銃身はそのまま銃から外れてしまい、ガツンという重々しい音を立てて床に落下した。

 

 男は上下二連散弾銃の銃床だけ手にして呆然とした。

 

 いきなり壊してしまった。

 

 男は床から銃身を拾い上げ、外れた銃床との接続部分の金具に合わせてくっつけようとした。

 

 しばらく試行錯誤をしてなんとか元に戻すと、今度は銃を撃ってみたいという気持ちになる。

 

 男は台所から弾を二発持ってくると、今度は銃身が外れて落ちないように支えながら、開閉レバーのロックを外して薬室に実包を二発装填した。

 

 男は銃身を持ち上げて薬室を閉鎖させ、弾の装填を完了させた。

 

 男は外に向かって試し撃ちをするべく、窓を開けて銃身を外へと向ける。

 

 男はゴクリと息を飲み、銃を構えて引き金を引いた。

 

 けれども何も反応が無い。

 

 男は二回、三回と引き金を強く引き絞るが、銃はウンともスンとも言わず、発砲することはできなかった。

 

 

 「……なんだよ。これ壊れてるじゃん」

 

 

 よく見れば手を添える先台があるはずの場所に部品もない。男は銃をそのまま若者ベッドに放り投げてしまった。

 

 今度は銃身が一本の銃を手に取る。

 

 男が知っている散弾銃は映画で警察官が使っているスライドアクション式の散弾銃だが、ここにある銃はどれも違った。

 

 こっちの銃にはボルトアクションのライフルのようなレバーが付いている。

 

 男は子供の頃に遊んだエアガンを思い出しながらレバーをガシャリと引いてみる。すると薬室が開いた。

 

 遊底の操作を理解した男は、もう一度台所まで戻ると弾を箱ごと持ってくる。

 

 そして開いた薬室に一発装填し、更にもう一発装填しようとした。

 

 しかし入らない。逆に弾を詰まらせてしまい、二発目の弾が遊底に引っかかってしまった。

 

 男は若者の部屋の中からマイナスドライバーを探し出すと、引っかかってしまった弾をなんとか取り出した。

 

 男は薬室には弾が一発しか装填できないことを学んだ。

 

 薬室の機関部は開放されたまま。このままでは弾を送り込めず、銃は撃てない。

 今度は薬室に入れた弾を装填させたい。

 

 男は遊底のコッキングレバーのピンを摘み、レバーを前に押し出そうと力強く押す。

 

 だがびくともしない。

 

 映画の中ではライフルマンが弾を一発撃つごとに遊底(ボルト)を引いて弾を薬室に入れ、遊底(ボルト)を元に戻して装填していた。

 

 同じようにやっているのにまるでうまくいかない。

 

 

 「これも壊れてんじゃん」

 

 

 男はまたも薬室に弾を入れたままベッドに銃を放り投げてしまった。

 

 ところが自動銃がベッドに着地したその途端、ガシャン! という機械が作動する音が部屋に響いた。

 

 男は驚き、暴発に備えて身構えた。だが弾は発射されない。

 

 男はもう一度自動銃を手に取り、銃把を握って用心鉄の中に指を入れ、引き金に指をかけないようにしながら自動散弾銃を持ち上げた。

 

 そして左手で先台を握って持ち上げると、右手を離してコッキングレバーを操作して遊底を力強く引いてみる。

 

 するとどうだろう。薬室に装填された弾が排出された。

 

 銃を斜め傾けてやると、弾が薬室からコロリとこぼれ落ち、男はそれを手にして弾をマジマジと見つめる。

 

 なぜ装填できたのだろうか。

 

 男は弾を入れるのを中断し、開放した機関部を閉める方法を手探りで探し始めた。

 

 色々と触っていくと、突然遊底がガチャンと勢いよく閉まることを発見した。

 

 機関部の底に触れると、金具がカチャカチャと動くのだ。

 それは銃の機関部の底にある、キャリアーのラッチボタンだった。

 

 男は練習のつもりでコッキングレバーを引いては薬室を開放し、ラッチボタンを押しては薬室を閉鎖させる動作を繰り返した。

 

 そして満を持して弾を一発装填し、ベランダの窓を開けて窓の外に向かって撃つことにした。

 

 大きく足を開き、左肩を前に出し、右肩を後ろに引くようにして斜めに構え、そのまま右肩に銃床を押し付けながら夜空の星を片目をつむりながらしっかりと狙う。

 


_ッダァァン!!



 撃った直後に空薬莢が遊底からはじき出され、宙を舞って床に落下した。

 

 予想以上の轟音と衝撃。

 

 男は目を白黒させて耳を抑える。屋内で撃ったせいで音は特にうるさく響いたのだ。

 

 だけども男は強力な武器を入手したことに興奮した。

 

 これでなんとかなる。俺は最高にツいている、と言葉では言い表せない高揚感を感じた。

 

 全てを終えた男は自動銃を一丁と、残った弾の全てを持って車へと向かった。

 

 弾は予想以上の重量で、若者の部屋の中にあったバックパックもかっぱらい、一度に200発ずつぐらい車に運んだ。

 

 荷物も含めて何往復もした男はヘトヘトだったが気持ちのいい疲労感だった。手に入ったのは食料に水分、移動手段に武器。

 

 俺はヒーローになれる。そう直感したのだ。何しろ強力な武器が自身の手の中にある。チンピラだろうがゾンビだろうが襲われたって怖くはない。

 

 問題があるとすれば銃を持って警察署に行くことはできないこと。

 

 このまま隠し持っていればバレずに所持し続けられる可能性も十分にある。

 

 男は事態が収束するまで町の中に身を隠すことにした。

 

 

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