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1980年松本スケッチ ~元・信大生の追懐録~  作者: こまくさ
第1章 1980年松本スケッチ
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サークル棟(BOX) ~木造平屋建て~

 大学北門からキャンパスに入ってまっすぐ直進すると、人文学部や理学部の横を通り過ぎて教養部に突き当たる。

 この北門から教養部までの道のりは、今では建物で埋まってしまったが、かつては全体が中庭のように開けていて、開放感のある大学キャンパスだった。

 教養部に突き当たって、右に折れると、渡り廊下をくぐって医学部方面へ。左に折れて坂を上るとサークル棟があった。



 サークル棟といえば聞こえがいいが、当時は木造平屋建ての長屋仕立てで「サークルBOX」=「BOX」と呼ばれていた。

 サークルごとに1部屋が割り当てられていて、ずらりと軒を連ねている。1部屋の広さは3帖ほどで、テーブルをはさんで6人も入れば窮屈だった。

 室内は薄暗く、照明は裸電球。でも、BOX前にはベンチを置いたり、犬が飼われていたり、日中は日当りもよく、生協にも近く、非常に居心地のよい場所であり、空間だった。


 朝、昼、夕、夜。時間を問わず、いつでもいられた。深夜に見回りの警備員さんに「早く帰れ」と叱られたこともあった。

 大勢が集まるとワイワイ楽しく、誰もいないときは静かな空間だった。

 誰もいないのに誰かを感じる不思議な空間。下宿で一人でいるのとは違う感覚。誰かを意識しながら、自分を見つめる時間。

 あの時代、あの頃だったからこそ味わうことができた、失われた次元の狭間。



 我々のBOXには「BOXノート」と称するスケッチブックが置いてあり、部員が思い思いにメッセージや愚痴やネタを書き込んでいた。

 単なるモノローグだったり、近況だったり、覚書だったり、プチ情報だったり、イラストだったり、或いは誰かの問いかけをきっかけに紙面でディベートが勃発したり。

 自由な2次元世界だった。

 多感な時期でもあり、心の声を吐露するような書き込みに触れることで、さまざまな養分をもらった気がする。


 携帯電話どころか、それぞれの下宿には電話もない時代。

 今から思えばどうやってふだんの連絡を取り合っていたのか、甚だ不思議だ。

 まさに一期一会。鮮やかに移ろう状況。その瞬間の出会い。必然のない偶然。

 だからこそ楽しく、かけがえのない時間だった。


 BOXノートは伝言板としても機能していた。

 『今から▲▲の下宿で飲む by●●』とか、『次は金曜の午後に現れます by■■』とか、『来週土曜“まつば”でコンパ 17:00』とか、人の参集に関する書き込みで予定が埋まっていく。



 リアルタイムではなかったもののBOXノートは当時のSNSだった。


障問研が柴犬っぽい犬を飼っていました。

メス犬で名前は“チャイ”でした。

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