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1980年松本スケッチ ~元・信大生の追懐録~  作者: こまくさ
第1章 1980年松本スケッチ
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バイク(1) ~自動車学校に通うことにした~

中型二輪への道~その1~

 都市部とは異なり、地方都市の公共交通は不便だ。


 松本市の鉄道は当時の国鉄と松本電鉄のみ。しかも、普段の生活に活用できる路線ではなかった。

 国鉄は、中央西線、中央東線、篠ノ井線、大糸線。松電は上高地方面のみ。市内を走る路線がないので、日常生活では鉄道を利用する場面はまったくない。

 市内の交通は松電バス。毎回のバス代を考えるとそうそう利用できない。市内は150円くらいの均一料金だったような…。


 通学は、入学当初は徒歩だったが、早々に自転車を手に入れた。自転車があれば大学周辺なら問題なく移動できた。


 ところが、サークルに入って、活動に慣れてくると状況が一変する。

 タコ足大学である信州大学は、長野、上田、伊那の各地の学部に先輩がいて、なにかと長距離移動をすることがある。この学部間移動を公共交通機関でしようものなら、たいへん煩わしい。


 県内を大胆に移動するにはエンジン付きの乗り物が欠かせない。

 頭の中はモータリゼーションへと思考加速する。



 運転免許は、高校卒業直前に原付免許だけは取得していた。


 普通免許を取得するには20万円近い教習費が必要になる。

 お年玉貯金の通帳には10万円ほどが貯まっていたが、免許費用には足りない。親に泣きついて免許費用を出してもらったところでマイカーはとても維持できない。

 実際、自動車を持っている学生はほとんどいなかった。


 現実的には原付を手に入れる流れだった。



 原付を…と思っていたが、各学部の先輩のうち何人かは中型バイクで松本にやってくるのが心を揺るがせていた。

 ≪HONDA≫ CB400T_HAWKⅡ、XL250S ≪KAWASAKI≫ Z400LTD、FT250 ≪YAMAHA≫ SR400 ≪SUZUKI≫ GT380 ほかにも数台あった。

 原付とは比べ物にならない重厚さ。太いエンジン音。イグニッションをオフにして、さっそうとヘルメットをとる先輩たちの姿は恰好よかった。

 当時は原付の運転にはヘルメットをかぶらなくてもよかったから、ヘルメットは排気量の大きいバイク乗りの証のようなものだった。

 原付はあくまでも原動機付()()()だった。



 中型バイクに憧れてはみたものの、阻害要因は2つ。

 免許取得と費用捻出。費用の内訳は教習費とバイクの購入費。

 250ccや400ccの中型バイクは新車だと30万円ほどで、その他ヘルメットや手袋などの用品も必要になる。免許教習費も含めて圧倒的な資金不足だった。

 自分の現状を上書きして無理を通すため、中型バイクが必要な理由をあれこれと探して自分を納得させることに腐心した。


 松本から上田、伊那までは約50km、1時間ほどの道のりだ。

 伊那に向かう善知鳥(うとう)峠は大したことのない峠だが、上田に向かうには三才山(みさやま)トンネルを抜けるか、青木峠を越えるか、いずれも急坂があり原付ではパワーが心配だ。

 長野までは約90km。犀川沿いの国道19号なので平坦なルートではあるものの、ヘタすると2時間近くかかる長旅になる。


 排気量の大きいバイクが必要だという理由を確立させたら、もう原付には見向きはしない。

 まずは免許だ。中型二輪免許取得に突っ走った。



 元町にある自動車学校は「教習所」ではなく「自動車学校」なのだそうだ。違いはよく分からなかったが、免許の本試験を自前でできるかどうかみたいな違いだったと思う。

 6月中旬、お年玉貯金から4万円ほどを支出して早々に申し込み、先輩のお古のヘルメットを携えて、自転車で通った。

 夏休みまでには免許を取得するという目標も立て、計画は着々と進行していった。

 

続きます

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