源太 ~焼肉丼~
信大北門を経由して松本駅に向かうバスは、大学病院前を南下し、教育学部附属小中学校のある旭町の丁字路を右折したあと、その先の萩町の交差点を左折して再び南下するというクランクを描くように進む。
その萩町の交差点を曲がらずに、ほんの少し直進したところに“源太”という食堂があった。
“源太”は、財布にちょっと余裕があるときに行くお店だった。仕送りが来たとか、バイト代が入ったとか、パチンコで勝ったとか…
お目当ては「焼肉丼」。
大きな丼にご飯がドーン! その上にキャベツの千切りと甘辛いタレをからめた焼肉がドドドーン!!
肉を肉として味わえる学生向けメニューは少ない。
焼肉や生姜焼き、とんかつ。ハンバーグも肉系に含めていいだろう。唐揚げや照り焼きチキンなどの鶏肉系は肉に準ずる位置づけか。“ピカドン”のモツ煮も「準」肉系だろう。
男子学生が求める、安くて大盛りな食事は、炭水化物率が高くなるのは時空を超えた真理であり、量をこなす薄利多売の学生向け大衆食堂で揚げ物率が高くなるのも仕方のないことだ。いわゆる、チャーハンやカレーライスなどのご飯もの、コロッケやハムカツ、ちくわの磯部揚げなどだ。
肉が肉として主張する焼肉丼の誘惑は、食べ盛りの男子にとっては苛烈だったが、1回の食事価格の相場が300円~400円の中、一食で550円という対価は少しばかりの壁となり、頻繁に通い詰めることはできなかった。
“源太”の焼肉丼は並盛でも十分なボリュームがあるのに、さらにご飯を大盛りにすると、脳内はセロトニン全開で満腹感と満足感が満たされた。
女子では並盛でも食べきれないことを見越し、女子と一緒に“源太”に行ったときは、あえてご飯の大盛りを注文せずに女子の食べきれないおこぼれをもらうという戦略をとる輩もいた。
残念ながら“源太”はここ1年くらいの間に閉店されたようだ。
近年は山賊焼きが信州のご当地グルメとして松本を中心に推されているようで、“源太”でも山賊焼きが目玉メニューになっていたようだ。当時と同じ焼肉丼が最後まであったかどうかはわからない。
2年ほど前に松本を訪れたときに、まだ頑張って営業されていることを知ったのだが、店に足を運べなかった、あのとき行っておけばよかった。“源太”で食事ができたかもしれない最後の機会を逸していた。
“ピカドン”や“柳屋”、“上田屋”など大学北門付近のお店と並んで、学生の食を支えてくれていたお店の一つが“源太”だった。
40年もの年月、変わらずに営業を続けていらっしゃるお店は随分少なくなり、懐かしい味を再び感じることができなくなっている。
和という食堂もあった。
定食の名前も和だったような…




