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指示をだせ

確認すると、すでにアッパーの最初のフォートレスは攻撃を受けている最中だった。アッパーのポジションであった味方はすでにキルされ、復活待ちである。このままでは間もなく破壊されるだろう。


KAKO:《このまま最短ルートでいきます!》

Azam:《…了解…》


できれば敵の背後を取りたいところだった。そうして逃げ道を(ふさ)いでしまえば確実にキルを取れる。だが、華湖はまずフォートレスを守ることを優先した。

あと数撃加えれば破壊、というところでなんとか間に合った二人はさっそく攻撃を仕掛ける。


Azam:《…突っ込む…》


まず、笑空がジャンプのスキルを使い飛び込む。すでに強化されている笑空のカリスマからの苛烈(かれつ)な一撃をお見舞いされた相手は、すかさず逃げだす。だが、ここで華湖からのスロー効果のついたスキル攻撃が飛んできた。見事に命中し、ダメージ加えて移動速度を低下させることに成功。ここに二人がかりで襲いかかれば相手もひとたまりもなかった。


KAKO:《よし!ナイスです!》

Azam:《…次は…》


ここで華湖にはいくつかの選択()が思い浮かぶ。

このままアッパーを進む。本来のポジションに戻る。同じようにダウナーも助けに行く。主にこの三つだ。


KAKO:《このまま上がります!》

Azam:《…了解…》


センターはすでに有利な状態、まだ(あわ)てて戻る必要はない。ダウナーに行く手もあるが、移動の時間がある。であればアッパーをこのまま手助けし、フォートレスの破壊までいけば二本のルートで優勢になる。全てのルートを押さえる必要はないという判断だった。


Azam:《…次は…》

KAKO:《ドラゴンを狩ります!》

Azam:《…了解…》


ここでセオリー通り、竜狩りでさらなる差をつけに行く。他の味方へも協力を要請(ようせい)し、一斉攻撃するで時間をかけないようにする。敵からの抵抗はなかった。ここまで大きな問題は発生していない。


Azam:《…次は…》


笑空は常に華湖へ指示を(あお)いだ。


Azam:《…次は…》


笑空は何を指示しても反論を一切(はさ)まず、すべて言う通りに動いてくれていた。

(いやー、強い…毎度、味方がこんなんだったら楽なんだけど…)

ゲームは華湖の指示により有利に進んでいった。自分の手柄(てがら)と思いたいところではあったが、ハッキリ言って、これは笑空の力が大きかった。プレイヤーの力量が、いつものランクでたまたまチームを組むことになる一般プレイヤーたちとは明らかに違うのだ。それを分かっているので、ついつい強気な指示が多くなっていたが、困難と思えることでもあっさり成功させてしまうのだから、頼ってしまうのも無理はなかった。

終盤。

特にピンチもなく、敵の本陣に襲撃をかけると、そのまま一気にキャッスルを落としにいく。


『VICTORY』


勝利を意味する文字がディスプレイに表示される。結局、ゲームは圧勝で終わった。


Azam:《…gg…》

KAKO:《ggでした!おつかれさまです!》


その瞬間、緊張がとけたのか、華湖は全身から汗がふき出すのを感じた。思わずフーっと大きく息を吐き、手で(あご)をつたってきた汗を(ぬぐ)う。


KAKO:《どうでし…た?》


勝ったのは良いが、それより気になるのが笑空からの評価だ。問題は?助言は?

一体何を言われるのかとドキドキして待つ。


Azam:《…それじゃ…またね…》

KAKO:《はい?》


笑空はその一言を残し、さっさとログアウトしてしまった。


KAKO:《え?あの、先輩?》


(え?…ええええ??)

あまりのことに、一瞬何が起こったのか理解できなかった。とりあえず、ゴーグルを外し、汗だくの顔を洗うために洗面所へ向かった。

(なんだったんだろう…?)

一体なぜ突然、誘ってきたのだろう?

なんで普段やっていないスカウトをやらされたのだろう?

なんで全部の指示に従ってくれたんだろう?

何も言わないということは合格と思って良いんだろうか?

それとも失望して何も言えなかったということなんだろうか?

顔に水をバシャバシャとかけ、高まった熱を冷ましながら考えてみる。


「ま、いっか!」


結局、考えても答えの出ないことで悩むのはやめることした。

笑空はああいう人だし、思考を理解しようとしても無駄だろう。とりあえず、今のゲームで大きな失敗をしなかったことで良しとする。

(それより、笑空先輩から誘われるって…ヤッバー!)

冷静になると今更ながら信じがたい出来事に興奮してきた。あの笑空と、今や日本を代表するプレイヤーの一人となった笑空から誘われるだなんて、夢のようだった。

(最後、またねって言ったよね?てことは、また誘われるかも?ってこと?)

そんな想像をするとまた興奮で顔が熱くなってきた。そのため再び顔に水をかけることになった。


落ち着いた華湖は顔を拭き、また二階の自室に戻るとゲームの世界に没頭(ぼっとう)するのだった。

(次こそは…()められるんだ!)

そのため、さらなる上達を目指す。いつかは笑空から認められるように。


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