情報を活用しよう
順調に勝ち進んだ今女トップチームDestinationは、準決勝で強敵と思われていた西風高校と対戦した。しかし、実際に戦ってみると、力の差は歴然であった。強いといっても、あくまで出場校の中では、という注釈付きであり、それは高校レベルをはみ出しつつあるDestinationにとって大した脅威にはなりえなかった。
というわけで、華湖達はとくに苦戦をすることもなく、決勝まで駒を進めた。
決勝の相手は予想されたとおり、やはりP高校となった。
P高校も全試合で相手を圧倒し、勝ち上がってきている。今までで最強の相手となることが予想された。
決勝ロビーに集合し待機中のメンバー達も、緊張と興奮が入り混じる。笑空はいつもどおりだったが。
ROLU:《さぁ、いよいよ決勝だ!勝つよ!》
KANKO:《おー!》
KAKO:《はい!》
UsagiPaisen:《勝つぴょん!》
メンバーは円陣を組み、気合を入れた。
すると栞子が勢いよく手を挙げる。
KANKO:《ハイハイハーイ!!》
ROLU:《お?なんだカンちゃん。情報か?》
KANKO:《いえ!部長!作戦がありやす!!》
ROLU:《いや。作戦はいいわ》
KANKO:《ええええええ!!!》
栞子は両手を上に挙げうつ伏せになり頭から地面を滑る。
これは実際の動きではなく、あらかじめ設定されている『エモート』という機能を使っている。
実際には難しいバク転やダンスなどのモーションデータがあり、それを自分のアバターに適用することでワンボタンで簡単に複雑な動きができるという機能だ。ちなみに栞子が使ったのは『ズッコケ』のエモートである。
こうしたエモートは無料の簡単なものから有償のものまで多数あり、それを制作、販売している企業もある。有名人では、自分のダンスをエモートにするアーティストもいたし、お笑い芸人の一発ギャグのエモートなどもあった。
ROLU:《アンタの作戦ってさぁ、今までハマったことないじゃん》
UsagiPaisen:《前やった作戦で負けかけたぴょん!》
KANKO:《アレは、理論上では上手くいくはずだったんだってぇ》
ROLU:《とにかく作戦はいいから。なんか情報はないの?》
KANKO:《んー、情報らしい情報は無いんだけど…》
緊張は良いが、しすぎるのは良くない。
栞子はそんな空気を和らげるためにやったのかもしれない。
いつの間にかチームのムードメーカーになっていた栞子を、楼瑠は頼もしく思うようになっていた。
もちろん、情報屋としての信頼もあった。ただ、残念ながら軍師としての才能はイマイチだったようだ。
KANKO:《てなこって、まぁ、注意すべきはやっぱりプレイヤーネーム『TK』こと部長の高木くんかね》
ROLU:《うん。だけどまぁ大丈夫だろ。笑空と同じセンターだし。なぁ笑空?》
笑空は無言でうなずく。
見た目はいつもどおりで緊張感を感じない。余裕があるようにも見えるし、全く興味がないようでもある。
《それでは決勝戦、下今女学院『Destination』対、P高等学校eスポーツ部、いよいよ始まります!》
開始のアナウンスがされ、メンバーたちはゲームへと移動する。
決勝の模様は配信にのるため、他の部員達も応援していた。里美と玲流は玲流の部屋で一緒に見ていた。
「いよいよ決勝かぁ!」
「勝てるかなー?」
「緊張してきた」ベッドに座っていた里美は、クッションをギュッと抱きしめる。
「あははー。なんでー里美ちゃんがー緊張するのー?」
「そりゃするよ!」
「ここまではー圧勝できてるみたいよー」
「それは当然。でもP高は強いと思うよ」
「えー!そうなのー!?」
「うん。他のゲームでも強くて有名だよ」
「あー、はじまるよー」
試合開始、まずはBAN & PICKのフェーズ。
ここで少しだけ予定が狂った。
サリーがBANされたのだ。
ROLU:《ふっふー、やっぱそうきたか》
KANKO:《サリーをBANとは思い切ったねぇ。ま、ここまで華湖が暴れに暴れてたからしゃーねぇか》
UsagiPaisen:《流石に対策してきたぴょん!》
KANKO:《んじゃあ、アレ、やっちゃいますかぁ?》
UsagiPaisen:《練習の成果、見せるぴょん!》
KAKO:《任せてください!》
ここまで超不人気カリスマであったサリーはBANの対象から外れていたのだが、ここまでの試合で華湖が活躍してきたので対策をされたようだった。このくらいのレベルになってくると、相手校の情報を集めることも重要になってくる。実際に対戦するのは初めてだったが、少なくとも、それだけのことをしてくる相手である、ということがこういったことからも伝わってきた。
だが、メンバーたちは、等の華湖すら含め、全く動じていない様子だった。想定内、といったところだろう。
Azam:《…面白く…なってきた…》
ここまで無言であった笑空が呟いた。
メンバーは皆、内心で(喋った!?)と驚いていたが、なぜかそれを口にしてはいけないという気がして、無関心を装っていた。
そして、いよいよゲームが始まる。




