思い知らせよう
《さあ、1回戦、全試合が終了した模様です。トーナメント表を更新しましたのでご確認ください》
配信に映し出されたトーナメント表を確認すると、1年、2年ともに無事、初戦を突破したようだ。
「先輩たち勝ってるー。あっー!1年も勝ってる勝ってるー」
「ホントだ。よしよし」
「問題は次だねー」
「うん…。あのチーム、強いよ」
「マナーは良くなかったけどねー」
1年代表、2回戦の相手はZooms。先程、実力で劣る相手をあざ笑うかのような勝利を収めたチームだ。実力は確かなものだったが、人格は伴っていないといったところか。
「ああいうのは子供が多いんだよ」
「へーそうなのー?」
「子供はそういうこと平気でやっちゃうから」
「子供は残酷だねぇー」
「あたりまえだけど未熟、なんだよね」
「里美ちゃんに教えようかー、配信見てないだろうしー」
「なんて言うの?マナー悪いから気をつけてって?」
「んー、そだねー」
「でも、それ言ってもしょうがないと思う。止められるわけじゃないから」
「そうかー」
「それに、現場に先生もいるんだし、大丈夫でしょ」
昨日の話によれば、彼女たちは部室から参加しているはずだ。そして、監督役として顧問の犬飼もいるらしい。
《さあ、2回戦の配信試合をルーレットで決めたいと思います。…でました!今女1年代表対Zoomsだ!》
「おおお!配信に乗るよ!」
「やったねー」
2人は手を合わせてはしゃいだ。
いよいよ、試合がはじまる。2人とも画面を食い入るように見つめる。
「は?」
「んー?どうしたのー?華湖ちゃん」
「これ…ちょっとおかしいかも…」
華湖は、相手の不穏な動きに異変を感じた。それは代表チームも同じだった。
Saton:《なに!?なんなのコイツら!!》
Ai:《うん、なめてるね》
Saton:《ちょっと強いからって調子に乗ってんじゃないよ!》
RURU:《まぁ落ち着きなよ》
Ai:《そうだね。勝てばいい。勝って恥をかかせよう》
RURU:《別に良いじゃん。こっちにとっては有利なんだし》
Ai:《そうそう。挑発に乗らないで》
Saton:《わかってるわよ!!》
だが、初心者である玲流は、いまだ異変には気が付かず、キョトンとしていた。
「何がおかしいのー?」
「相手チームがBANしたの、全部サポートなんだよ」
「それってダメなのー?」
「ダメというか、普通しないよね。普通はもっと色々な種類の、使われるカリスマをBANするでしょ。こんなことしたら不利になるだけだよ」
「あららー、じゃあミスしたのかなぁー?」
「違う、なめてるんだよ。こっちが女だからって」
「え、そういうことなのー?」
「女はサポートしか使えないだろ、って意味なのかも」
「女の子はサポートが多いのー?」
「それは実際あるかも。もちろん、私達はそんなことないよ」
「そだねー」
「手加減してやるってことでしょ」
「あらーやっぱバッドマナーだねー」
「ホント!嫌な奴ら」華湖は興奮して、いつになく声を荒げた。
「華湖ちゃん、こわいこわいー」
「ああ、ごめんねぇ」
実際のゲームが始まる前に行われるのが『BAN & PICK』というフェイズだ。
BANとは禁止のことで、指定したカリスマを使用禁止にすることができる。PICKは逆に選ぶことであり、自分が使用するカリスマを宣言する。先にBANやPICKされたカリスマはもう使えなくなるわけだ。BANフェーズ1でお互いに3体のカリスマをBAN、ついでPICKフェーズ1で3体選ぶ。BANフェーズ2でさらに2体BAN、最後にPICKフェーズ2で2体PICKしてお互いの構成が決まる、というルールだ。
人によってはここで勝敗が5割決まる、と言われるほど重要なものである。
ZoomsがBANしたのは全てサポートのカリスマだった。かつ、メタでもない、ほとんど使われないような不人気なカリスマばかりだった。これは事実上、BANの権利を放棄したようなものである。
これくらいのハンデをくれてやるから、ちょっとは楽しませろ、とでも言うかのように。
《ZoomsはサポートばかりBANしましたが、どういう作戦なのでしょうか?いよいよゲーム開始です!》
「いよいよだねー」
「うん、里美ちゃん、キレてなきゃいいけど」
「あーそれありそうー」
「里美ちゃん、ちょっとキレやすいからね…」
「そこが弱点だねー」
そして残念ながら、その2人の予想は的中してしまっていた。
Ai:《里美つっこみすぎだよ!》
Saton:《わかってる!!》
Ai:《わかってないじゃん!》
RURU:《だめだ、里美が完全にキレてるわ》
Ai:《クッ、琉瑠音のほうは?》
RURU:《だめ。押されっぱなし》
Ai:《センターもダメ!ちょ、里美、下がって!》
試合内容は散々だった。2つのルートのうち、センターとダウナーはそもそも自力で負けていたし、頼みの綱のアッパーも肝心の里美が平静さを失ってしまっていた。
相手の術中にはまった、というよりは自滅したというほうが正しいかもしれない。
《おーーっと!Zoomsのエース、KANI選手!またしてもオールキルだぁ!》
終わってみれば今女1年代表は愛が意地の1キルを取ったのみ。相手には12キルを取られ圧倒的な敗北を喫してしまった。




