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大会を楽しもう

いよいよ新入生にとっては初となる大会の日。2人は、観戦を華湖の部屋ですることにした。GATEのルームではない。本当の部屋だ。華湖が友達を招き入れたのは、実にこれが最初のことであった。


「里美ちゃんたちー、勝てるかなぁー?」

「うん。先輩たちのチームもいるし、優勝はさすがに無理だと思うけど、いいところまで行くと思うよ」

「華湖ちゃんがそう言うならー、期待できるねー」


コンコン


ノックの音が響く。

華湖は「はーい!」と返事をし、ドアを開けると、そこには叔母が立っていた。手には飲み物や菓子の入った器が乗ったお盆があった。


「おやつを持ってきたから、2人で食べなさい」

「ああー、すみませんー。どうかお気遣いなくー」

「あらら、玲瑠ちゃんはしっかりしてるわねぇ。ご家庭の教育が良いのね」

「いえー、そんなことはー…」


玲流は恥ずかしそうにうつむく。

華湖はそれを聞いて大きくうなずきながら言う。


「玲瑠ちゃんは確かに、育ちの良さを感じるよね」

「ちょ、華湖ちゃんまでなに言ってるのー」

「うふふ。じゃ、これは置いておくからね。玲流ちゃん、ごゆっくり」

「はいー!ありがとうございますー」


玲瑠は、なぜ華湖が実の親でなく、叔父叔母と暮らしているのか、それが気にならないわけではなかった。だが、そういった立ち入ったことをあれこれ聞かないという思慮深さがあった。華湖は、玲瑠のそういうところも好きだった。


「やさしい叔母さんだねー」

「うん。そうなんだ」

「里美ちゃんに応援メッセージ送ってみようかー?」

「んー試合前でピリピリしてるかもしれないし、やめとこうよ」

「そっかー。そだねー。ところで1年代表は初戦どことやるのー?」

「見たけど、わからないんだよね。知らないチーム」

「強そうー?」

「わかんない。知ってるプレイヤーがいないから。でも、ここは大丈夫だよ。問題は2回戦かな」

「強いのー?」

「勝てるとは言い切れない相手だね。メンバーのほとんどがグラチャンみたいだし」

「えー!強いよー」

「うん。厳しいだろうね」

「チームワーク次第でどれだけ対抗できるかってとこだけど、こっちも結成1ヶ月のチームだしね」

「そっかー、そだねー」


この大会は、ファンの有志によって開催されてている小さなコミュニティ大会だった。

そのため賞金や商品などというものは用意されていなかったが、初心者でも参加できるオープンな大会であり、また、主催、運営は長らくコミュニティを支えてきた功労者達だったため、ファンから愛されていた。3年前から始まった大会だが、今では視聴者も1000を超えるほど人気があった。だが、プロは当然としても、アマチュアのトップチームでもこのクラスの大会へ参加することはほぼなかったので、結成したてのチームが腕を試すにはちょうどお手頃な大会となっていた。


《さぁはじまりました。『第3回ろるろカップ』!私、主催且つ本日の実況をつとめさせていただきます、『ろるろ』でございます。よろしくおねがいします!》


「はじまったー」

「うん、ドキドキしてきたね」


華湖はゲーミングチェアに、玲流はベッドに座ってディスプレイを見守った。


「初戦はどっちも配信ないねー」

「んー残念」


大会はトーナメント形式で行われる。参加チーム数は32。一度負けたら敗戦となる、シングルエリミネーションといわれる形式だった。つまり、5回勝てば優勝である。

参加チームがざっと紹介されると、すでに組まれているトーナメント表が表示され、そのなかから配信される試合がルーレットで決められた。各試合は同時に行われるため、配信されるのは1つだけだったのだ。残念ながら、今女2チームはどちらも外れた。ここで負けてしまえば配信されることもなく、終了となってしまう。


《いやー、これはちょっと一方的な展開になりましたねぇ!Zooms、Kani選手オールキルだぁ!》


第一回戦、配信試合は実力差の大きい試合となってしまった。

オープンな大会の初戦では、このようなことはよくあることだった。大人と子供、というほどの実力差が両チームにはあった。


「やっぱこのチーム、強いねー」

「うん…」

「んー?華湖ちゃん、どうしたのー?」

「ん、ううん!なんでもないよ!」

「そうー?」


(あのチーム、Zoomsだっけ…。強いのは確かだけど…なんですぐに勝負決めないの?)

Zoomsは追撃するチャンスをあえて見逃していた。すでに逆転はほぼ不可能と言ってもいい状況。にもかかわらず、キャッスルを破壊しにいかない。必要ない設備まで全て破壊しにいく。なんとか抵抗しようとする相手をなぶるようにキルする。

それは公開処刑とでも言うべき内容だった。


「完全勝利でも狙ってるのかなー?」

「う、うん。そうかもね」

「もう勝ちは決まってるのにねー」


もはや、初心者の玲流ですら、疑問を感じる内容であった。

(酷い…大会でこんなことするなんて…相手チームの人たち、大丈夫かな?)

彼らは、ひょっとしたらこのままゲームを辞めてしまうかもしれない。華湖はそんな不安を抱いた。


そして、トーナメント表によれば、初戦で今女1年代表が勝利した場合、2回戦の相手はこのZoomsだった。

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